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セキュアドローン協議会 農業の課題解決策としてドローンはどこまで有効か 北海道・鷹栖町で実証研究の成果を発表

2017/02/23 09:00

週刊BCN 2017年02月20日vol.1666掲載

 セキュアドローン協議会(春原久徳会長)は2月8日、北海道・鷹栖町において地域の農家や農業関係者を対象に、2016年に実施した「ドローン活用による精密農業の実証研究」の報告会を開催した。同実証研究は、水田(稲作圃場)の大規模化が進む旭川市と鷹栖町、東川町で実施。稲作が盛んな地域としては、国内最北に位置する。また、実証研究の報告後には、地域の関係者によるパネルディスカッションを実施。それぞれの立場から、ドローンに対する期待や活用における課題を語った。(取材・文/畔上文昭)

大規模水田の課題解消へ

セキュアドローン協議会
春原久徳
会長

 開会にあたってセキュアドローン協議会の春原会長が登壇。2016年に実施した実証研究の結果を発表することによって、「ドローンを少しでも身近に感じていただき、役に立ちそうだと思っていただきたい。今日のゴールは、『もしかしたら農業でドローンが使えるかも』という感想をもって帰っていただくこと」と語った。
 実証研究の成果については、セキュアドローン協議会の田上利博・事務局長が、実証研究で使用したドローンを横に報告した。「農薬散布では、ラジコンの無人ヘリコプターが使われている。平成26年(2014年)で約2700台。その代替として、費用が安いドローンの活用が注目されている」とドローンの有効性について説明した。
 

セキュアドローン協議会
田上利博
事務局長
写真左側は、実証研究に使用したドローン

 
 実証研究を実施した旭川市と鷹栖町、東川町は、農業従事者の減少により、水田が統合され、大規模化が進んでいるという。数ヘクタールの水田となれば、稲の成長を目視で確認するのは難しい。そこで、ドローンというわけだ。

 実証研究では、ドローンを活用し、週に2回のペースで水田の様子を撮影。成長具合や病気・害虫の様子、葉の色や成分を分析して可視化。どこにどのような肥料が必要かなどの分析にも活用し、農作業の効率化におけるドローンの有効性を検証した。「7月には、ドローンの映像が病気の早期発見につながった」という。

 最後に田上事務局長は、実証研究の結果から、ドローンの有用性と課題を総括。有用性としては、低コストでデータが取得できる、生育予測や品質予測で使えそう、目視ではできない生育判断が可能、病気・害虫の早期発見などを挙げた。一方、課題については、雨と風に弱い、バッテリの時間が短いことにあるという。「現状では、2ヘクタールまでの撮影が可能だが、実証研究を実施した地域ではもっと大きな面積の水田も多い。その点は、ドローンの進化に期待したい」と、田上事務局長は今後への期待を語った。

ドローンと農業は相性がいい

たいせつ農業協同組合
池田 修
営農販売課課長

 パネルディスカッションでは、春原会長がモデレーターを務め、パネラーに、たいせつ農業協同組合の池田修・営農販売課課長、上川農業改良普及センターの山黒良寛・所長、旭川ICT協議会の古川正志・顧問、サイバートラストの眞柄泰利・代表取締役社長を迎え、農業が抱える課題やドローンの有効性などを議論した。

農業が抱える課題について、池田課長は「農家は年々減っている。ただ、全体の作付面積は変わっていない。つまり、1戸当たりの作付面積が増えている」と大規模化が進んでいると紹介。また、高齢化問題については、「若い人も入ってきていて、とても頼もしいと思うことはあるが、就農者の中心は50代から60代。高齢化を避けて通れない状況にある」という。そのため、農作業の省力化や効率化が必要とされている。また、国内消費の減少から輸出にも注力していて、「ドローンを活用して地域を発信していきたい」と期待を込めた。
 上川農業改良普及センターの山黒所長は、「ドローンに限らず、もっと農業にICTを活用するべき。安定した収穫の実現にセンサなどが有効活用できる」と語った。また、後継者や新規参入者の経営を早期に安定させるためにも、ICTの活用が不可欠であると説明した。人工知能とロボットの専門家でもある旭川ICT協議会の古川顧問は、「ドローンの研究はまだ少ない。学会は遅れている。ここにいる皆さんのほうが進んでいる」とし、ICTの観点では農業の知識や経験をデータ化する手段としてドローンに期待したいと語った。また、ドローンから得られるデータと農業の知識を組み合わせて相関関係を求めるなど、今後の展開に期待していると説明した。サイバートラストの眞柄社長は、財産としてのデータを扱うことの重要性や、農業を伝承していくにあたって、暗黙知を形式知に変えることが重要だと述べた。

上川農業改良普及センター
山黒良寛
所長
旭川ICT協議会
古川正志
顧問
サイバートラスト
眞柄泰利
代表取締役社長

 最後に春原会長は、「海外ではドローンの活用が進んでいる。日本が後れを取るわけにはいかない。コストをみると、ドローンの導入が難しいと感じるかもしれないが、いずれは下がっていく。短期的な視野ではなく、中長期でドローンの導入を検討していただきたい」と語り、パネルディスカッションを終えた。

 セキュアドローン協議会は、今年も同地域においてドローンの実証研究を継続する。ドローンから得た情報と、センサから得られる気温や水温といった情報の相関関係を研究するなど、昨年以上の成果を上げるべく、実証研究の設計を進めていく考えだ。
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外部リンク

セキュアドローン協議会=https://www.secure-drone.org/