AIを切り口に新規ユーザーの開拓につなげる

 ワークスアプリケーションズ(牧野正幸CEO)は、主力製品の人工知能(AI)活用型ERP「HUE(ヒュー)」関連の売り上げ規模が100億円に達したことを明らかにした。2016年初頭から日本や北米、中国・アジアで順次販売を始めてから1年半余りで、大台に乗せたことになる。HUEの受注社数は国内外50社で、うち新規ユーザーが約3分の2を占めるなど、新しい顧客層の開拓にも成功。AIを駆使することで業務の効率化、一部自動化を実現した点がユーザー企業から評価され、受注増につながっている。(安藤章司)

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牧野正幸
CEO

  HUEは、ユーザーが次に入力すべき情報をAIで予測し、業務の効率化を実現する。新規ユーザーの獲得が順調に進んでいることから、ここ1年余りで投資会社などから新たにおよそ100億円を調達。AI関連の技術開発に意欲的に取り組み、実績も出はじめていることが投資対象としての高評価につながったようだ。

 利益面では、この独自のAIエンジンを開発するため、ここ数年はトントンで推移してきた。また、依然として克服しなければならない技術的な課題も残っていることから、今年2月に自然言語処理(NLP)の研究に特化した人工知能研究所「ワークス徳島人工知能NLP研究所」を開所。徳島大学などとの産学連携を進めるのと並行して、中国など海外での優秀なAI人材の獲得にも力を入れている。

 技術的課題としては、AIを駆動させるのにITリソースが予想以上に必要である点が挙げられる。クラウド型で提供しているHUEは、サーバーをはじめとするITリソースが増えれば、ワークスアプリケーションズ側のコストが増える。牧野CEOは、「サーバー部分だけをみれば、ユーザーからいただいているサーバー料金の倍くらいのコストがかかってしまっている」と話す。AIは膨大なデータをもとに演算するため、サーバーリソースを大量に消費する。しかし、演算のアルゴリズムの改良次第で「サーバーリソースを半減できる特性も併せもつ」と、技術開発によって克服できるとみている。

 HUEは、人事給与と財務会計、サプライチェーン管理(SCM、販売管理を含む)にEC(ネット通販やオムニチャネルなど)機能を加えた構成。国内では“働き方改革”が追い風となり、これまで遅れがちだったバックエンド業務の効率化、自動化を目的にHUEの給与/会計を採用するユーザーが目立つ。同時に、営業現場や建設現場、製造現場などの“現場業務”の改革の一環として、HUEのSCMを求めるユーザーニーズも高まっている。

 同社は従来型ERPの「COMPANY」時代から一貫して、カスタマイズなしで顧客に使ってもらうことを想定してきた。しかし、SCMは顧客ごとの業務的な差異が大きく、ノンカスタマイズで対応するのが難しい領域とされる。同社では顧客の要件をできる限りパッケージに吸収する手法で対応しているが、これが開発費用を押し上げ、「給与と会計の2製品を足し合わせたのと同じくらいの開発費」(同)となっている。開発費用を抑えるために、建設や製造(組み立てとプロセスの両方)、商社など5つの業態向けの開発を優先しているとはいえ、当面はSCMにも先行投資の状態が続くとみられている。

 同社の昨年度(2017年6月期)の連結売上高は、前年度比22%増の500億円余り。今年度もHUEの拡販で同様の伸びを見込むとともに、利益率の改善を進めることで再度の株式上場を視野に入れている。