IDaaS(クラウドID管理)大手の米オクタ(Okta)が日本法人「Okta Japan(オクタ・ジャパン)」を設立し、国内ビジネスの本格展開に乗り出す。代表取締役社長には、アピリオ日本法人前社長の渡邉崇氏が就任。クラウド利用の拡大や、「ゼロトラストセキュリティ」へのシフトを背景に、国内顧客への製品導入拡大やサポート提供に注力する。(前田幸慧)
米オクタ トッド・マッキンノン CEO
2009年に設立、米サンフランシスコに本社を置くオクタは、クラウドでのID認証管理やシングルサインオン、多要素認証、アクセス制御、ライフサイクル管理などを提供するIDaaSベンダー。全世界で8950社以上の導入実績がある。17年4月に米ナスダック市場に上場以来、時価総額は今年8月時点で9倍以上に拡大するなど急成長を遂げており、新型コロナウイルス禍においても利用が急増しているという。
背景にあるのが、クラウドサービスやモバイル利用の普及、およびそれに伴う「ゼロトラスト」モデルのセキュリティ需要の高まりだ。特に近年では企業の内部を「安全」とみなして外部との境界を守る「境界防御」型セキュリティの限界が顕在化。それに代わるセキュリティモデルとして、「何も信用しない」ことを前提に、社内外を問わず全てのアクセスを監視・制御するゼロトラストが注目を集めている。その中核となるのが認証で、米オクタのトッド・マッキンノンCEOは、「アクセス権を付与する必要があるかどうか随時判断する方法が、企業のセキュリティを確保するベストな方法となってきている」と説明。オクタが提供するソリューションは、あらゆるシステムへのアクセスを常に検証し、認証・認可やアクセス制御を行うため、ゼロトラストを実現する有力なソリューションとして評価を高めている。
日本法人の設立も、こうしたクラウド移行の加速やゼロトラスト需要の増加が背景にある。立ち上げに際しては、営業やSEだけでなく、ポストセールスについても日本語で提供可能なスタッフをそろえ、導入後の顧客フォローを入念に行える体制を整備。Webサイトや顧客事例のローカライズも進めるなど、国内顧客に受け入れられやすい環境づくりに力を入れていく。
オクタ・ジャパン 渡邉 崇 社長
国内ではこれまで、日立ソリューションズ、NTTデータ、マクニカネットワークスの3社を一次販売代理店として展開してきた。オクタ・ジャパンの渡邉社長は「その下に十数社の販売代理店がある。そこもどんどん拡大している」と話す。また、ビジネスチャットの「Slack」、クラウドストレージの「Box」、Web会議ツールの「Zoom」などと連携した「ベスト・オブ・ブリード」でのソリューション提供を推進していくとしている。
オクタのIDaaSソリューションは6500種類以上のオンプレミス/クラウドアプリケーションとプリインテグレーションされており、シングルサインオン環境の構築などを容易に行えるようにしている。国内企業ではサイボウズと協業し、すでに同社のアプリ開発基盤「kintone」やグループウェア製品との連携に対応。「日本進出を機に、日本のパートナーとの連携もどんどん増やしていきたい」(渡邉社長)としている。