「5年前、北海道生まれ、北海道育ちのオヤジが死ぬとき、『やっぱり暖かいほうがいい』といった。そのとき、自分は引退したら、暖かい宮古島でのんびり暮らそう」と決意した。約30年前、フランスに渡り自分の会社をつくった。「カネの亡者」だったと当時を振り返る。「社長ともなれば、借金してでも社員に給料を払うし、人の嫌がることでも率先してやらなければならない」。心底疲れて帰国し、「サラリーマンでもしてのんびり暮らそう」と考えた。
ところが、帰国後しばらくすると経営者としての腕前を見込まれて、ソフト開発会社の社長を任された。再び社長になってからあることに気付いた。「協同組合にすれば、社長が給料を払わなくてもいい。組合員が稼いだカネは、すべて組合員のものだ」
協同組合方式は順調に拡大し、組合員約1000人に増え、今年度(2004年8月期)の売り上げは、前年度比約3割増の60億円に達する勢いとなった。周囲からの評価も高まり、中小企業近代化審議会や産業構造審議会などの委員に役所から指名されることも増えた。しかし、「いつまでも若くない」と、05年10月に引退することを表明。後継者も決めた。「宮古島でボランティアをしながらのんびり暮らす」と本人は言うものの、関係者は、「抜群の経営手腕を誰も放っておかない」という。宮古島でのよりいっそうの活躍に期待が集まる。
プロフィール
横尾 良明
(よこお よしあき)1950年、北海道小樽市生まれ。71年、東京公衆衛生技術学校卒業。美容師免許取得。72年、フランスへ渡る。パリ縫製取引委員会技術専門学校でオートクチュールのデザインを学ぶ。76年、パリに貿易代行業のソシエテ・ヨコオ設立。82年、帰国。84年、ソフト開発のシグマバンテアン設立。代表取締役就任。89年、首都圏コンピュータ技術者協同組合設立。理事長就任。91年、首都圏ソフトウェア協同組合設立。理事長就任。著書「事業協同組合のつくり方と運営一切」(日本実業出版社)。