休日はもっぱら子どもの世話や家事に追われている──。淡々とした口調で話す宮本和明は、HDEを舵取りする3人の経営者のうちの一人であり、SIを手がける技術部門の要だ。
ITを志したのは学生時代。東京大学には理系の学部に入学したが、途中で文学部に転部した。「大学に入学する直前に、人に対して何かを表現する面白さに気づいた」からだった。幼いころからコンピュータに馴れ親しんできたこともあって、「伝える」と「技術」を融合すれば、面白いことができるのではないかと考えた。
同社の社長を務めるのは小椋一宏。彼が東大のコンピュータルームに無断で貼っていた「PCの家庭教師募集」のポスターが、宮本を引き合わせた。当時、小椋は吉祥寺のアパートの一室をスタッフルームに使っていた。宮本はいつの間にか深夜まで入り浸り、「次のビジネスについて話していた」という。97年、「インターネットにつなげる、ただの箱」として安価なLinuxサーバーを売り出したのを皮切りに、次々と新製品を送り出した。
2000年からは、「インターネットはウェブ、メールがキーワード」と考えて、企業向けEメール配信パッケージの開発に携わるなど、メールソリューションに重点を置くようになった。「社長ともう一人の副社長が製品寄りの考えとするならば、自分はSIを手がけてきたことから、顧客の視点でアイデアを出すことができる」と話す。そんな導入の視点から、宮本副社長が中心となり開発したのが、パッケージとSIを融合できるメール統合プラットフォーム「HDE Mail Application Server」だ。この基盤を使い、新しいビジネスを切り拓こうとしている。
いまだに立ち上げ当初の「Linuxの会社」というイメージが強い。だが、今後はもっと「『メールといえばHDE』を浸透させる」ことを目標としている。(文中敬称略)
プロフィール
宮本 和明
(みやもと かずあき)1973年、愛媛県生まれ。98年、東京大学文学部卒業。大学在学中にホライズン・デジタル・エンタープライズ(現HDE)の設立に参画し、代表取締役副社長に就任。2000年より、企業向けEメール配信パッケージの企画開発に携わる。2005年ソリューション本部を立ち上げ、SI部門の長として、都銀や官庁などのメールインテグレーションプロジェクトを指揮。