社会人としての第一歩は国内企業。米国の大学で就職活動をしていたとき、「日本の企業が求人している。入社したい」。それがメルコ(現・バッファロー)だった。
佐野守計が進もうとしていた道はIT業界ではなかったが、入社した95年当時は国内パソコン業界が伸び盛りだったこともあり、「ユーザーニーズを的確に捉え、3か 月に一度の割で新製品を発売するほどスピード感のある業界に驚いた。ますますやる気が出てきた」。しかも、その頃は組立パソコンを中心にDIY需要が急激に高まっていたこともあって、周辺機器メーカーのあるべき姿を常に考えた。その姿勢が認められ、新規のコンポーネント事業を担当することになる。また、海外経験が買われ、米国での新会社の立ち上げにも従事。チャネル開拓を手がけた。
ハードウェアでの経験を生かし、今年3月にソフトウェアメーカーへの転身を図った。それも、外資系企業への入社だ。「当初は、カルチャーショックを受けた」と振り返る。仕事の勝手が違う。「いちばんあせったのは、ライセンス販売というものが、なかなか理解できなかったことだった」という。これまで“モノ”を売る、卸すという考えが根付いていたのだから、無理もない。しかし、「同僚に『ライセンスは使用権を売ること』と教えてもらって、腑に落ちた」。ハードであってもソフトであっても、ユーザーに利便性を提供することに変わりはない。「ノウハウを生かしてニーズを捉える」ことに専念している。
これまでとは180度異なる世界に飛び込んだ。「だからこそ、新鮮な視点を生かすことができる」。外資系企業のソフトウェアビジネスは、日本の流通モデルと若干の相違点がある。ハードウェアの流通モデルも生かし、販社支援策の強化を模索している。加えて、「米国本社に日本法人を理解させる」ことによって、販売代理店にとって売りやすい環境を築いていくことを胸に刻んでいる。(文中敬称略)
プロフィール
佐野 守計
(さの もりかず) 1970年、静岡県生まれ。95年、メルコ(現・バッファロー)入社。同年11月、新規事業のコンポーネント事業部に従事。98年から海外で事業に携わる。05年に帰国後、海外事業部次長に就任。06年には、アジアパシフィック営業部次長としてアジア営業統括を担当。09年3月にアドビシステムズに入社、チャネルセールス本部長に就任。