中国に“第二のNRI”をつくる──。これが野村総合研究所(NRI)のアジア戦略の柱だ。アジア事業開発部長の堀田耕治は、SIやコンサルティングなど、NRIの主要な組織を中国へ移植。ビジネスの推進役を担う。中国のIT市場は、ここ数年、年2割の勢いで増え、投資意欲は旺盛だ。この需要を獲得するには、NRIの中国事業を中国人の手によって大きくしていかねばならない。
堀田は、これまで米ニューヨークで新規顧客の開拓を経験。帰国後の新商材の企画開発などを通じて、海外の商習慣や事業の立ち上げを学んできた。NRIの主力商材であるマーケットプレイスシステム「BizMart」や、オンライン証券取引「TRADESTAR」の企画開発に携わり、「これらの商品の名付け親の一人」でもあるという。
中国でのビジネスに直接関わり始めたのは、2007年、オフショアソフト開発を担当したとき。NRIをリードするニューヨーク勤務や主力商材の開発を経験した堀田にとって、中国オフショアへの配属は「最前線で活躍するエースから、後方支援のお弁当の配送係になったよう」で、自身の不遇を嘆いたこともあった。
しかし、現地の有望SIerとの交流を通じて、中国の技術力の高さや仕事に対する意識の高さに触れ、ビジネスの可能性の大きさを実感する。もともと堀田は、何もない「0」から「1」を創り出すのが得意。「1から10にするには、皆で力を合わせて成し遂げる。それで皆が達成感を味わえればいい。このために、ぼくは0からたくさんの1をつくる」。今の中国市場は、NRIにとって、まさに0から1になりかけなのだ。「気づいたら、NRIのビジネスの最前線に立っていた」。日中のスタッフやビジネスパートナーとともに、「中国での事業を大きく伸ばす」と、意気盛んだ。(文中敬称略)
プロフィール
堀田 耕治
(ほりた こうじ)1960年、福岡県生まれ。84年、早稲田大学商学部を卒業し、野村コンピュータシステム(現野村総合研究所)入社。大手証券会社のシステム構築に従事。91年、NRIアメリカ(ニューヨーク)赴任。96年帰国し、新規商材を企画開発を担当する。07年、中国オフショアソフト開発担当を経て、09年からアジア事業の開発を受けもつ。