首都圏コンピュータ技術者の櫻井多佳子は、営業畑で20年余りのキャリアを積んできた。首都圏コンピュータ技術者では、前身である協同組合時代から営業職を務め、2010年11月、取締役にまでのぼり詰めた。モットーは「ソフトウェアは人でできている」。ユーザーや顧客、そして技術者が納得して、「みんなが高いモチベーションを保てるように、仕事を組み立ててきた」と、振り返る。
同社は、およそ2000人のコンピュータエンジニアからなる技術者集団だが、実は主なエンジニアはすべて個人事業主。独立して腕一本で仕事を取ってくる猛者ばかりで、櫻井の仕事はこうしたエンジニアをSIerやユーザー企業に送り込むことだ。
プロジェクトのなかには、納期に間に合わず、完成のめどすら立たない“デスマーチ(死の行軍)状態”に陥るものもある。個人事業主は社員ではなく、あくまでも対等なパートナーだ。他のエンジニアに支援を頼みたくても、強制はできない。それでも「あなたにしかできない」と説得してプロジェクトを完遂させてきた。大切なのは、お互いが納得いくまで話し合うこと。人材をすり減らすようなやり方は、「私の職業観が許さない」との信念を貫く。
今はエンジニア同士でチームをつくったり、有能なエンジニアをリーダー的役割を担うキーパーソンに抜擢したりと、組織づくりにも力を入れる。「まとまったスキル集団を形成すれば、顧客の課題を解決するソリューション型の営業の幅が広がる」。さらにエンジニアとのツーマンセルで仕事をこなすユニークなビジネスモデルは、「何も国内だけのものではない」と、将来的な海外展開も視野に入れるなど、経営者としての野心も覗かせる。(文中敬称略)
プロフィール
櫻井 多佳子
(さくらい たかこ) 鶴見大学附属女子高等学校(現鶴見大学附属高等学校)卒業。造船関連企業に就職して、図面制作に従事。のちに人材派遣会社に転職し、営業を担当。1992年、首都圏コンピュータ技術者協同組合(現首都圏コンピュータ技術者)勤務。2010年11月、同社パートナー事業部取締役に就任。