ソフトウェアダウンロードサイトを運営するソフトニック(スペイン)の日本法人代表、内田隆は、北海道大学で原子核理論物理学を専攻した。だが、彼は学究の道を選ばなかった。担当教授がIAEA(国際原子力機関)に関わっていたことに影響されて、広い世界を見たくなったからだ。外交官試験を受験したが、最終面接で脱落。9か月間、無職を経験したこともある。当時、NEC通信システムが中途採用を募集していたのを機に、入社した。
内田は、「うまくいかなくても、その経験を次にどう生かすかを考え、とにかく動くのみ」と常に考えている。事業戦略や技術経営に興味をもった彼は、NEC本社の役員に直談判し、子会社からNEC本社への転籍を決めた。モバイルネットワーク事業戦略の立案でその手腕を発揮した。実績を買われ、マイクロソフト(当時)に転職した後は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、ナイキ社との共同プロジェクトである「世界900万人の難民の子供たちを支援するプログラム ninemillion」を手がけ、成功に導いた。
一方で、会社を辞めて知人と立ち上げようとした会社は、資金が集まらずに不発に終わるという苦い経験も。ちょうどそのとき、当時の仲間から「グーグルよりもすばらしい会社がある」と紹介された。それがソフトニックだった。
ソフトニックはPCやモバイル向けのソフトダウンロードサイトだが、将来、テレビやクルマ、多様なデバイスがネットワークにつながれば、アマゾンやグーグルのようなプラットフォームとして大きな役割を果たす可能性を秘めている。「ここに賭けたい」。まだ開設したばかりの小さなオフィスで内なる闘志を燃やしている。(文中敬称略)
プロフィール
内田 隆
(うちだ たかし)1998年にNEC通信システムに入社。2000年、日本電気に入社し、経営企画部、マーケティング企画本部、モバイル企画本部などでグループ戦略、海外戦略、モバイル戦略を中心に社長・役員の参謀として戦略立案と実行に携わる。06年、マイクロソフト日本法人でオンライン事業の日本戦略責任者を務める。09年、ソフトニック(日本法人)の設立とともに代表取締役社長兼CEOに就任。