コンピュータシステムエンジニアリング(CSE)の張琳琳は、電子メールアーカイブ・フィルタリング「WISE Audit(ワイズオーディット)」の海外展開を担っている。この製品は、大規模システムにも対応可能なCSEオリジナルの主力商材で、これまでの納入社数は270社余り、ユーザー数は約71万人と国内有数の実績を誇る。だが、海外への販売はまだ緒についたばかり。張がそのけん引役となり、まずは情報サービス市場でアジア最大規模を誇る中国市場へ乗り込む。
張は大学卒業後、日本の情報サービス業界で6年余りのキャリアを積んできた。組み込みソフト開発案件の営業や、金融業向け情報サービスの企画などに従事したが、海外との関わりは薄かった。それでも「情報システムは現代社会を支える基礎。ここでキャリアを伸ばしたい」と、SIビジネスのイロハを一つずつ学んだ。潮目が変わったのは、リーマン・ショックと中国の高度経済成長だ。日本のSIerが相次いで中国市場への進出に力を入れるようになり、CSEもその流れに乗る。中国市場とより積極的に関われる仕事を求めて、2010年、CSEへの転職を決めた。
勢いを増す中国のビジネスマンたちは、昼間の商談から夜のお酒の席に至るまで、まるで休むことを忘れたかのように大きな案件を次々に即決していく。商慣習が違うとはいえ、「中国式経営のスピード感に圧倒される」と、おとなしい日本のSI業界で働く若い人たちが尻込みするのもうなずける。ただ、張からすれば、「日本で売れている商品は、文化的に近い中国で売れないケースはむしろまれ」と思える。「怖がることはない。いっしょに海外市場へ踏み出そう」と、自らを奮い立たせる。(文中敬称略)
プロフィール
(ZHANG LINLIN)1978年、中国・ハルビン市生まれ。05年、法政大学経済学部卒業。国内有力ITベンダーやSIerで組み込みソフト開発や金融向けシステム企画などを担当。10年、有力SIerのコンピュータシステムエンジニアリング(CSE)に入社。メールアーカイブ・フィルタリングの「WISE Audit」の中国展開を担当。