映像や画像を美しく映し出すのに欠かせない「グラフィックLSI」という電子部品。アクセルは、このグラフィックLSIのファブレスメーカーで、ある機器に特化したLSIで圧倒的なシェアNo.1を誇る。その特定分野とはパチンコ台である。地味だが、実に70%のシェアをもつ。まさに“ニッチの独占”だ。社員数は70人ほどだが、売上高は81億9900万円、営業利益率は19.1%(2011年3月期)で、昨年には東京証券取引所第1部に上場した。
岸本貴臣は、同じ業態のLSIメーカーからアクセルに移った。安定した経営基盤と、独自技術に魅せられ、移籍を決断。肩書きは営業グループマネージャーだが、今の仕事は営業だけでなく、新製品の企画や海外市場に進出するための調査など、多岐にわたる。
岸本は、大学で工学部を選び、技術を学んだ。「第二次ベビーブーム世代で、ものすごい倍率をかいくぐって入学した。でも、卒業を迎えたときはバブル崩壊直後の就職氷河期(苦笑)。文系出身者が多そうな企業に、理数系が志望すれば採用してもらえるかなと、商社を選んだ」。電子部品の輸入販売を手がけ、LSIメーカーを経て、現在に至る。
アクセルを選んだ理由に「安定した経営基盤」がある。かといって、“寄らば大樹”的な意味ではない。「新たなチャレンジをできるだけの事業基盤がある」ことを重視したのだ。「当社は従業員が100人にも満たない中小企業。それでも、数億円の事業を企画し、それをやらせてもらえる」。岸本は今、小回りのきく中小企業の長所と、資金力をもつ大企業ならではのビッグビジネスの醍醐味を感じながら、もう一つのニッチの独占をつくろうと構想を練っている。(文中敬称略)
プロフィール
岸本 貴臣
(きしもと たかおみ)1973年、兵庫県生まれ。大学卒業後、商社に入社。電子部品と情報システム関連製品の輸入販売事業に従事する。99年、LSI(高集積回路)のメーカーに移籍。06年、LSIメーカーのアクセルに移り、営業業務をこなしながら、新製品開発や新規事業の創出に携わる。