園田崇が率いるウフルは、クラウド専業のITベンチャーだ。「Salesforce.com」を中心に、これまで約1500件のクラウド導入実績を積み上げてきた。設立以来、売上高は2ケタ成長を続けている。
ITの世界の最先端でビジネスを展開するウフルだが、実は園田はIT畑の出身ではない。電通でキャリアをスタートし、広告関連の営業・マーケティングに従事。その後は、渡米して経営管理学修士(MBA)を取得し、会計や財務を学ぶために金融業界に身を投じた。ITとの出会いは、ライブドアに転職してからだ。「自分のキャリアをたとえるなら、“螺旋”。同じ仕事をずっと続けるのでなく、新しい分野に挑戦して、これまで培った経験を応用しながらキャリアアップを図ってきた」。すべては、学生時代から志していた起業のため。園田は、会社設立を頂点とする螺旋階段を、多様なキャリアを通じてノウハウを蓄えながら駈け上がってきた。
緻密な性格で、論理的に説く。経営戦略を練る際には、マイケル・ポーターが提唱する競争戦略手法「ファイブフォース分析」を常用する。ウフルを立ち上げて、クラウド事業を開始する際にも、この理論に当てはめて将来性を見極めた。
そんな園田が、現在、目を向けているのは「マーケティングクラウド」だ。ただ単にクラウドを提供するだけでなく、顧客の先にいるユーザーまでを見据えて、企業のマーケティング活動を包括的に支援するというもの。「“螺旋”をひと回りして、電通時代に手がけてきたマーケティングを、今度はITでやろうとしている。この分野での競合は、まだ少ない。これまで培ってきたマーケティング力を存分に発揮できるはずだ」。起業という一つの山を越えた今、園田は次のステージの螺旋階段を上ろうとしている。(文中敬称略)
プロフィール
園田 崇
園田 崇(そのだ たかし)
早稲田大学政治経済学部を卒業後、電通に就職。およそ4年半の勤務を経て、南カリフォルニア大学(USC)大学院に進学し、経営管理学修士(MBA)を取得。その後は、モルガン・スタンレー証券、日興シティグループ証券を経て、ライブドアに転職し、執行役員副社長兼メディア事業戦略室長に就任。06年2月に独立し、ウフルを設立した。