小泉利治が伊藤忠テクノサイエンス(現伊藤忠テクノソリューションズ=CTC)に入社した2000年は、サン・マイクロシステムズ(現オラクル)のサーバーが売れに売れていた時期だった。インターネット上の新しいサービスが続々と登場し、UNIX系サーバーの需要が急増していたからだ。サーバー製品担当のSEであった小泉は、「数え切れないほどの顧客から新製品の説明を求められ、引っ張りだこ」の状態だった。だが、ハードウェアのコモディティ化が進むにつれて、顧客のハードウェアに対する関心は急速に薄れてきた。
新しい機能を紹介する機会も減って、「サーバー担当として寂しい思い」をするなかで、小泉はFacebookが提唱して始まったOpen Compute Project(OCP)に準拠した製品に活路を見出した。CTCは日本のベンダーでは初めてOCP認定ソリューションプロバイダになり、今年4月にOCP準拠製品の販売を開始した。国内ではデータセンター事業者を中心に強い関心が寄せられ、「ハードウェアについて、顧客が目を輝かせながら自分の話を聞いてくれる時代が再び来た」と喜びながら、説明に奔走している。
Facebookのようなネットサービスベンダーが愛用するスケールアウト型のアーキテクチャを、そのまま日本国内の業務システムに適用できるかといえば、必ずしもそうではない。既存メーカー製のハードウェアの高い信頼性とサポートが求められるケースも多い。しかし、「OCPが役立つ場面はこれから一段と増える」と考えて、時代の変化を敏感に感じ取るアンテナを張り巡らす。コンピューティングの変遷を先取りすれば、「チャンスは向こうからやってくる」と信じて仕事に取り組んでいる。(文中敬称略)
プロフィール
小泉 利治
小泉 利治(こいずみ としはる)
1974年、横浜市生まれ。97年、理系の大学を卒業。ソフト開発会社などを経て、2000年に伊藤忠テクノサイエンス(現伊藤忠テクノソリューションズ)入社。