米澤麻子は、両親の仕事の関係で、幼少期をオーストラリアで過ごし、大学時代は再びオーストラリアへ留学。社会人になってからもフランスでアートマネジメントを学ぶなど、向学心が旺盛だ。そんな彼女が転職先に選んだのは、「海外へ進出したい」と強く望む中堅ソフト会社の網屋だった。
網屋の主力製品はログ管理ソフトの「ALog(エーログ)」シリーズで、国内サーバーアクセスログ市場で約6割のシェアを誇るヒット商品。とはいうものの、海外展開は緒に就いたばかりで、米澤は「ALog」の拡販を任されるが、まもなく外国語版の公式ホームページ(HP)でボスと対立。米澤は、自らの経験に照らして「海外では日本語版の直訳、焼き直しでは通用しない」と進言し、デザインを根本から手直ししてみせた。最初はずいぶんとまどったというボスこと伊藤整一代表取締役も最後は折れて、英語版HPを米澤に任せることにした。
結果、できあがったHPは厳選した製品を前面に出し、発信するニュースも日本語版とは異なる。米澤は「ホームページは会社の顔なので、どうしてもこだわりたかった。これからは世界主要都市を巡ってどぶ板営業です」と、ネットとリアルのバランスを重視している。
各地を営業して歩き、既存の台湾や中国の販路だけでなく、欧米市場にも販路開拓の足がかりができた。すでに英国と米国での販売代理店との協業がスタートしており、夏をめどに初めての英国での販売パートナー向けセミナーも開く予定だ。「『ALog』のすぐれた点をパートナーやユーザーにわかってもらうには、私たちがまず現地のことを理解しなければならない」という信念の下、世界中を飛び回る。(文中敬称略)
プロフィール
米澤 麻子
米澤 麻子(よねざわ あさこ)
神奈川県生まれ。オーストラリアのキャンベラ大学メディアコースを卒業。その後、日本大学芸術学部大学院卒業。美術関連の研究員を経た後、00年、トレンドマイクロに入社。06年、フランスに留学してアートマネジメントを学ぶ。帰国後、美術関連企業や、フランス大使館に勤務。12年、網屋に入社。