死を覚悟する瞬間だった。スーパー銭湯で汗を流し、ビールを飲みながら休んでいたときに、急に胸が苦しくなった。横になって休んでみたが、意識が遠のいていく。救急隊が駆けつけたときには、呼吸が困難になっていた。とにかく苦しい。湯船につかりすぎたのか、風呂上がりの冷えたビールがいけなかったのか。応急処置で少し楽になるものの、片側の肺が破れていると告げられる。手術が必要で入院も避けられない状態だった。それを知ったときのつらさは、今も脳裏を離れない──岩本健太郎の体験談である。
マスコミ志望だった岩本が、新卒向けの合同説明会で、たまたま立ち寄ったのが今の会社のブース。説明担当の人たちが、とにかく情熱的で引き込まれていく。マスコミ志望は、有益な情報を発信したいという思いから。でも、考えが変わった。情報発信ならIT業界のほうが、将来、有望ではないか。この会社が新卒採用を始める年で、新卒第1期生として入社できるのも魅力的だった。
入社後は、大阪本社で公共部門の営業を担当した。実績を残したことで、東日本の公共部門を担当する営業部隊の立ち上げを任される。実績のない地域なので、手探りの連続だったが、徐々に手応えを感じるようになる。そして、大事なお客様に納品というときに、片側の肺が破れて入院してしまう。病室で「大丈夫、行ける」と主張するも外出は止められた。ただ、怪我の功名か、「そのお客様には、今でも懇意にしていただいている」という。
東京に来て4年。部門長となり、3人の部下ができた。「東京支店が本社になるくらい大きくしたい」。今でもスーパー銭湯と聞くと腰が引けるというが、仕事への思いは熱湯風呂以上に熱い。(文中敬称略)
プロフィール
岩本 健太郎
岩本 健太郎(いわもと けんたろう)
1985年7月1日奈良県生まれ。京都工芸繊維大学を卒業後、ICTを用いて地域課題の解決を目指す株式会社スマートバリューと出会い、新卒1期生として入社。入社3年目には、公共システム部門の東京事業所を立ち上げることになり、スターティングメンバーとして異動。2名体制から開始し、4年目の現在、係長職として事業所を牽引している。オープンデータ、スマートフォンアプリなどの新サービスを打ちたて、東日本圏内のシェアを伸ばしている。