「成功するかどうかわからないからこそ楽しい」。アマゾンデータサービスジャパンのエバンジェリストとしてAWS(Amazon Web Services)を日本中に広めた人物、玉川憲の率直な気持ちだ。今は、ソラコムを創業して新しいIoTプラットフォームを創造しようとしている。
「学生時代から起業を夢見ていた」という。その第一歩が日本IBM基礎研究所だ。ウェアラブルコンピュータの研究開発プロジェクトに参画、「先進的な技術で世の中を変えることができると確信していた」。これを機に起業することも考えていたが、プロジェクト自体がなくなってしまう。その時代には早すぎるテクノロジーだった。その後は、コンサルティングやエバンジェリストなど、マーケットを見据える業務に従事する。日本IBMに在籍中に経験した米国留学の際には、AWSと出会って衝撃を受ける。「世の中を変えると思った」そうだ。それが強く印象に残り、AWS日本法人の立ち上げに携わることになった。このような経験があったからこそ、起業する意識を再び盛り上げることになったのだろう。「日本でAWSの知名度が高まったという一つのステージをクリアしたことも、『世の中にないものをつくり出して普及させたい』という気持ちが強くなった理由」としている。
今は、AWSなどプラットフォームをベースにして、さまざまなことが実現できる時代になりつつある。「IoTに関してはこれから。だから開発する」。市場が新しいプラットフォームを受け入れるかどうかはわからない。「だからこそ、誰もが使いたいと感じるものを開発する。それが楽しい」。今年秋にサービスインの予定だ。(文中敬称略)
プロフィール
玉川 憲
玉川 憲(たまがわ けん)
1976年、大阪府生まれ。日本IBM基礎研究所でウェアラブルコンピュータの研究開発に従事。その後、ソフトウェア事業部で技術営業やエバンジェリストなどマネージメントを歴任。2010年にアマゾンデータサービスジャパンに入社、日本のAWSクラウド事業立ち上げチームとして活動する。AWS技術統括を2015年春に卒業(退職)。ソラコムを起業し、IoTプラットフォーム開発に従事している。東京大学工学系大学院機械情報工学科修了。米国カーネギーメロン大学MBA(経営学修士)、MSE(ソフトウェア工学修士)修了。