最初に入社した企業は1年も経たずに倒産した。添田の苦難人生の始まりだ。2社目は事業整理により所属部署が消滅し、3、4社目は起業に立ち会うものの、軌道に乗らず消滅。どこも1年も続かなかった。そして、たどり着いたのがロジクールだ。外資系企業だと知らずに入社したため、2年目にして「英語」という壁にぶつかる。大きなプロジェクトの場合、最終的には本社に裁決をゆだねるが、その際、英語でのコミュニケーションが必須になる。企業を転々としてきた頃は、「なんとかなる」と楽観視していたが、初めて「このままでは何ともならないかも」と感じた。振り返れば、入社2年目を迎えられた企業はロジクールが初めて。自分を磨く重要性に気がついた。
その後は独学で勉強を始めるも行き詰まり、Vital Japanが運営する英語コミュニティで英語のスキルを磨く。1年でTOEICのスコアが760点まで上がった。その手ごたえはビジネスにも生きた。ロジクール初の法人営業本部のメンバーに抜擢され、さらに1億円の大型案件を担当し、成功させた。成功に導いたのは、本社との連携をスムーズにさせた英語力だった。
学生時代、自転車部に所属していた添田。得意は峠攻めだ。添田はあえて重い車体で峠に挑んでいた。「軽い車体にまたがるほかの選手を抜くとき、自分の力で勝った、という達成感があった」という。これは語学学習もビジネスも同じだ。「きついとき、足をつくのは簡単だ。でも足をつかず、上りきったとき、一つ壁を越えられる。上りきって地面と空の間に自分がいる感覚は、本当に気持ちがいい」という。
添田の次の目標はTOEICで900点以上のスコアを取ることと、3年以内にアカウントマネージャーの一つ上のセールスマネージャーになることだ。まだまだ上り坂の途中だ。添田は重いペダルを漕ぐ。(敬称略)
プロフィール
添田絢也
(そえだ じゅんや)
1986年、東京都世田谷区生まれ。2009年に成城大学社会イノベーション学部心理社会学科を卒業後、家電・IT業界などを渡り歩き14年にロジクール入社。リテール営業を経験後、16年に法人営業本部立ち上げメンバーに抜擢される。17年7月から現職。