新卒で入社した富士通では、社内のプライベートクラウドシステム構築に従事。プロジェクトチームのリーダーも経験し、表彰も受けるなど活躍していた。ただ、社内プロジェクトのため、外部の顧客と直接かかわる機会がほぼゼロ。伸び伸びやれたが、「世の中のエンジニアに、自分がどれだけ太刀打ちできるのか」と危惧し、転職を決意。吉積情報への入社を決めた。
だが、退職の1週間前、教師をしていた父親が急死。葬儀には、故郷の都城市で渋滞が発生するほど、大勢の人が駆けつけた。まったく予想しなかった父親の死に直面し、精神的に大きなショックを受けた一方で、これほどの人望を集めていた父親に対し、誇らしい気持ちも抱く。「親父の背中を越えたい。やるんだったら走り抜けよう」と、気持ちを新たにした。
吉積情報で2年ほど勤めた後、フリーのITコンサルタントに転身する。そのなかで気づいたのは、「技術的にすぐれていることはお客様にとっては関係がなく、人としてのつき合いやビジネスなど、総合的な意味でのお客様にとっての気持ちよさがあって、価値が形成されていく」ということだ。
17年1月、クラウドエースに入社し、吉積情報以来、再びGoogle Cloud Platform(GCP)に携わることになる。「クラウドで技術的に最もすぐれているのはグーグルだと自信をもっているが、今一番売れているのはAWS。それは、サービスの見せ方もそうだし、かゆいところに手が届くとか、ユーザーが気持ちよくなれる売り方をしているからだと思う」と、今は考えている。GCPは、昨年11月にデータセンターを東京に開設したことで、かつてとは風向きが大きく変わった。追い風として、しっかり生かせるかどうか。「この一年が勝負」と意気込む。カギを握るのは「気持ちよさ」だ。
(敬称略)
プロフィール
高野 遼
(たかの りょう)
1988年、宮崎県生まれ。2009年、国立都城工業高等専門学校を卒業後、富士通に入社。14年に吉積情報に転職し、グーグルのパブリッククラウド「Google Cloud Platform(GCP)」を用いた開発に従事。16年から1年間、フリーランスのITコンサルタントとして活動した後、吉積情報から分社して設立されたクラウドエースに入社した。