中嶋悟氏率いるレーシングチーム「ナカジマレーシング」のスポンサーにタタコンサルタンシーサービシズ(TCS)がなったことがきっかけで、1年間、自動車レースに同行した。
ピットクルーを経験しながら、ナカジマレーシングのファンを増やす「ファンエンゲージメント」を担当。レース結果はもちろん、選手をよく知ってもらうための情報を発信したり、ファンに実際にレース場にきてもらうためにソーシャルメディアを通じて告知するなど、精力的に活動した。
トーレは、「中嶋悟氏のリーダーシップに大きな感銘を受けた」と話す。選手やエンジニアが悩んでいたり、手こずっているようなら、それとなく声をかける。「スタッフが今何をやっているか、すべてわかっているようだった」。チームの代表だから尊敬しなさいというそぶりは微塵もみせない。しかし、その穏やかさもレースが始まると霧散する。厳しい眼差しにチーム全体の緊張感が一気に高まる。そして、レースが終われば、もとの穏やかな中嶋氏に戻る。
中嶋氏は、言葉や文化の壁を乗り越え、若くして世界の自動車レースで頭角を現してきた。その経験が、「外国人が多いチームメンバーのさまざまなワークスタイルを把握する目配り、気配りへとつながっている」とトーレは分析する。
会社に戻ったトーレの目標は、「中嶋さんのような、すばらしいリーダーになること」。トーレも日本という異文化のなかで仕事をする身。「私だってなれるはず」。TCSがスポンサーシップを通じて得たものは、リーダーを志すことになった若き社員の情熱であった。(敬称略)
プロフィール
トーレ・ムルガクシ
(Mrugakshi Tole)
1990年、インド生まれ。プネーで育つ。2011年、プネー大学を卒業。12年、来日。日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(日本TCS)入社。17年、中嶋悟氏が率いる「ナカジマレーシング」のスタッフメンバーとして全日本スーパーフォーミュラ選手権に参加。