
「家に遊びに来ないか」。伏見慎剛のFacebook宛に、学生時代からの友人である康井義貴から突然連絡が入った。久しぶりの再会に思いを巡らせ足を運ぶと、部屋には知らない外国人が数人、熱心にPCで作業していた。異様な光景を目にして、何をしているのかと聞けば、「会社を設立した」と康井。スマートフォン決済サービス「Origami Pay」の立ち上げに向けた準備だった。
当時、伏見はリクルートで新規事業開発に携わっていた。職業柄、立ち上げと聞けば興味は抑えられない。今後の具体的な手順について尋ねると、「それを決められる人を探している」という。これが、参画するきっかけとなった。
リクルートでは、数十の新サービス開発に携わった。社長に直訴してまでやりたかった営業職からの異動だったから、仕事には満足していた。しかし、恵まれた環境の大手企業とOrigamiとでは大きな違いを感じた。「リクルートには予算を含め十分なリソースがある。しかし、Origamiの事業は、資金調達も含めて、誰が、どうやっていくのか。そこが、純粋に面白いと思った」。
以来、伏見は幅広い役割をこなしてきた。カード会社や小売店との折衝はもちろん、事業の運営、システムの運用、営業、経理など、いわば“何でも屋”としてふるまう。ITを駆使したスタートアップ企業だが、加盟店が重要な役割を果たす決済領域だけに、「泥臭さもある」。前職の下積み時代には、静岡で1日100件以上の電話営業をこなし、大分では毎日自転車に乗って飲食店の挨拶回りに汗を流した。この経験が今も生きている。
Origami Payは今年末までに10万店の加盟店を得ることが一つの通過点だ。「使える場所が増えると、利用者も増える。早くOrigamiで決済する人の姿をたくさん見られるようにしたい」。将来を見る伏見の眼差しは熱い。(敬称略)
プロフィール
伏見慎剛
(ふしみ しんご)
1986年生まれ、岐阜県出身。早稲田大学スポーツ科学部を卒業後、リクルートに入社。地方都市で営業職を経験した後、新規事業開発部門に異動し、主にO2O決済分野のサービス立ち上げや事業運営に携わる。2012年、初期メンバーの一人として、スマートフォン決済サービスを手がけるOrigami(康井義貴社長)に参画。現在に至る。