販売系SIerの動向
大塚商会
総合提案で販売促進 販売系SIerの大塚商会では、ハードウェアの単価下落やユーザー企業によるIT投資の抑制などにより、サーバーの売上高が減少傾向をたどっている。その影響で、SI事業が厳しい状況に置かれている。09年度第3四半期のサーバー販売(単体)は、236億7300万円(前年同期比6.9%減)と大幅に減少。今後もSI事業が伸び悩む可能性が高い。
そこで大塚商会では、サーバー販売を含めたSI事業で「総合提案」を合言葉にITシステムやソリューションなどの売り上げ拡大を図ろうとしている。
同社は幅広いIT商材を扱っており、顧客ユーザーがそれぞれ必要とするシステムやソリューションを個別に構築できるのが強み。その商品群を活用しながら「さまざまな角度から提案することを強化」(大塚裕司社長)しながら、企業にアプローチし、サーバーをはじめSIビジネス全体の拡大につなげようという考えだ。
「サーバーの統合化や仮想化などは、まだまだ需要を掘り起こせる可能性がある。このように、サーバー販売では落とし所を考えてユーザー企業に提案していくことが重要」と、大塚社長は強調する。
一方で、サーバー販売の落ち込みを補う施策にも取り組む。それがサプライ品の販売サイト「たのめーる」を中心としたMRO(間接材)の販売や保守などS&S(サービス&サポート)事業だ。「たのめーる」は09年度第3四半期で678億4900万円と、前年同月比で2.4%の増加。「当社の業績を支えた事業はサポート」(同)と評価している。
実は、S&S事業も「総合提案」という販売戦略の一翼を担っている。SIとMRO販売やサポートは接点がないようにみえるが、大塚商会にはこうしたビジネスを営業の突破口として、既存顧客や新規顧客からのサーバーなどのITシステム受注につなげようという狙いがあるからだ。
「今後は、ソリューションベースの提案だけでなく、MROを手始めに案件を獲得するなどといった、これまでとは異なった受注の仕方も視野に入れなければならない」と大塚社長は話している。
メーカーの新しい動き
IBM
「クラウド」で新市場を開拓  |
IBM 星野裕 システム製品事業理事 |
サーバーの販売を伸ばそうとする新たな取り組みも始まっている。
日本IBMでは「スマーター・プラネット(Smarter Planet=賢い地球)」をスローガンに掲げ、サーバーを核にしたITシステムを幅広い分野に提供していくことでチャンスを見出そうとしている。
キーワードは「クラウド」。クラウドで安価で大量処理が可能なシステムを提供することが需要につながるとみている。
IBMがクラウドで想定しているメニューは、金融機関などの利用を想定したトランザクション処理とデータベース、ERPなどの企業向けのビジネスアプリケーション、高度な分析機能を提供するハイ・パフォーマンス・コンピューティング、ウェブアプリケーションの4種類。こうした業務に特化したシステムの提供で、ビジネスの拡大を図る考え。企業を始め、送配電網や交通システムなどの社会インフラといったITシステムの導入が遅れている分野にまで広げた利用を見込む。
クラウドが普及すれば、例えば企業でのプライベートクラウドでのシステム更新需要の拡大、IBMのシステムを利用してパブリッククラウドを企業などに提供するSIerの案件増加、社会インフラでは新規システムの導入が期待できる。それに伴い、クラウドのシステムを構成するサーバーの販売も伸びるという計算だ。
「新たな市場を自分たちでつくっていかなければ、ハードとしてのサーバー販売では今後のビジネスとしては厳しい」と、星野裕・システム製品事業理事は強調する。
ただ、とくに企業では、既存システムからクラウドへの移行について、アプリケーションやデータの保存などの点から慎重な姿勢を示すユーザーが多い。そこでIBMでは、データ移行を突破口にクラウドサービスの利用を促す試みを始めた。
データ移行を支援するセンターを設置。ハードからアプリケーションまでをIBMがサポートして不安を取り除くことで、クラウドへの懸念を払拭し利用につなげる狙い。
また、プライベートクラウドなどですぐにシステムを利用したい企業に向けては、ウェブアプリケーションに特化したアプライアンス「Cloud Burst(クラウドバースト)」も用意した。
一方で、クラウドのシステム構築や導入では、仮想化が進みサーバーの台数が減る可能性もある。そのため、IBMではハードだけではなく、クラウドで提供するミドルウェアも手がけることで、「サーバーが減った分をソフトで補う」(星野理事)というように、サーバー以外での収益を確保するビジネススキームを打ち出している。