IT資産管理ツールに商機
メーカーは共通してSAM機能をPR
「個人情報保護法」以来の特需の予感 ソフトウェア資産を的確に把握するために、ツールの活用は不可欠。ハードやソフト資産を管理するソフトウェア資産管理(IT資産管理)ツールを求めるユーザー企業・団体は増えてくる。「セキュリティ業界が特需に沸いた『個人情報保護法』の成立・施行以来の需要が期待できる」と口にするITベンダーもいる。需要が鈍化傾向にあったIT資産管理ツールが、活況に沸く可能性が出てきた。
調査会社は有望株と分析
2013年までの年平均成長率は10% 正規に購入したライセンスの総数を把握し、パソコンにインストールされているソフト総数を確認。そのうえで、インストールされているソフト数が購入ライセンス数を超えていないかを見定める――。簡単にいえば、これがソフトライセンスを的確に把握・管理するための術だ。膨大なPCに大量のソフトが導入されている現実を考えれば、ITツールなしでは実現は難しい。ソフトライセンス管理機能をもつIT資産管理ツールの出番だ。
IT調査会社のテクノ・システム・リサーチは09年8月、国内PC(IT)資産管理ソフト市場(ライセンス、関連サービス)を調査している。その調査結果から、2007年から2013年の年間平均成長率を9.2%と試算。2013年の市場規模は、321億円に達するとみた。メジャーなソフトカテゴリに比べて、市場規模は小さいものの、2013年までのIT産業全体の年間平均成長率はマイナス(IDC Japanによる分析)だけに、有望分野であることは間違いない。
テクノ・システム・リサーチの藤崎武志アナリストは、「ソフトの不正コピー問題は現時点ではPC資産管理ソフト市場を活性化させてはいない」としながらも、「今後についてはソフト資産管理機能が求められる可能性は十分にある。メーカーもPRとしてSAMを謳っているケースが多く、起爆剤となりそうな気配を感じる」と説明している。
ベンダーの動きも慌ただしい。テクノ・システム・リサーチが調べたメーカー別出荷本数実績のトップ3は、エムオーテックス(MOTEX)、クオリティ、ハンモック(09年8月時点)。この3社は矢継ぎ早に手を打っている。ソフト資産管理機能をPRして、拡販につなげようとしている。
IT資産管理の三強
共通して新製品を投入 トップシェアのMOTEXは、1月下旬に発売したネットワークセキュリティツール「LanScope Cat 6」の新版で23個の新機能を実装したが、そのなかでも「アプリケーションライセンス管理機能」の追加をPRポイントに置いた。登録したアプリケーションのライセンス数とインストール状況を照合し、ライセンスの過不足をひと目で把握できるようにした。そうすれば、ソフトの不正利用を防止できるほか、余剰ライセンスを見つけ出し、コスト削減につなげることもできる。「コンプライアンス+コスト削減」というメリットを訴え、拡販につなげる計画だ。
約80万ライセンスの差で2位のクオリティは、他社と協業することでソフト資産管理機能を増強する戦略をとった。クオリティのIT資産管理ツール「QAW/QND Plus」と日立情報システムズの「License Guard」を組み合わせることで、ライセンスの割当状況や遊休ライセンス情報、コストを管理できるようにしたのだ。ライセンスのアップグレードやダウングレードによるバージョン間の相殺など、複雑なライセンス形態を踏まえたライセンスの過不足集計を可能にし、差異化を図った。
クオリティの大槻茂・営業本部SIパートナー営業部部長は、「最近の不正コピー摘発事件で、企業・団体はソフト資産管理に本気で眼を向け始めた。投資意欲はかなり強い。『個人情報保護法』の成立・施行時よりも根強い需要があると感じており、しかも短期ではなく、中長期の成長が見込める」として、大きなビジネスチャンスの到来を肌で感じている。
一方、ハンモックはMOTEXと同様にライセンス機能を強化した新タイトル「AssetView PLATINUM」を09年12月に投入。同じくソフト資産管理機能をPRポイントに置く戦略だ。
各ツールメーカーの鼻息の荒さに後押しされて、SIerも拡販に本腰を入れる。「今の時代、コスト削減は必須の提案材料。加えて、最近の不正コピー問題の顕在化で、いつ調査対象になるか分からないと警鐘を鳴らす効果は大きい。IT資産管理ツール市場を再び盛り上げるための材料になる」と強調している。
2003年の個人情報特需に沸いたIT資産管理ツール市場が、社会問題の顕在化で再び息を吹き返しそうな機運が高まっている。
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