Special Feature
リーマン・ショック後の中堅ERP 活力を取り戻したか
2010/06/03 21:33
週刊BCN 2010年05月31日vol.1335掲載
ターゲット軸を再設定、品揃え刷新
メーカーの場合
SaaS/クラウドになびく
得意分野持ち寄り型も
応研では、中堅規模のユーザー企業が増えてきている。リプレース需要を受け、原田明治社長は、「1社あたり200~300といった、導入クライアント数が多い案件が目立ち始めた」と実状を語る。製品別でみると、「人事大臣NX」が非常に好調だという。
同社は、SaaSの事業化に取り組んでいる。それには二つの方向性がある。一つは、販売・財務・給与など業種特化しないSaaS提供で、「パートナーと詰めている段階」(原田社長)。もう一つは、業種特化のSaaS。社会福祉法人向けソフトは、2011年にローンチする考えだ。
リーマン・ショック以降、同社は既存ユーザーに対するアプローチを積極的に進めてきた。「大蔵大臣」の個別原価計算版や「人事大臣NX」など新機軸の製品を開発・製品化。2010年もマーケットを守る施策として、ユーザーへのアプローチを継続する方針を掲げている。こうした囲い込み施策が奏功し、「利益も前年並み、比較的安定している。今年は、『手形』と『申告』で手堅く売っていく」(原田社長)。地域別では、関東圏で売り上げが伸びた。2010年度(12月期)は、5%の伸びを期待する。
OSKでは、「SMILE」とグループウェア製品「eValueNS」のシステム連携に力を入れている。会計とワークフローに注目が集まり、「結構導入されている。大塚商会の営業の食いつきもよい」(田中専務)と胸を張る。2009年9月に投入したカスタマイズの支援ツール「SMILE Custom AP Builder(SMILE CAB)」も評判が高いという。ウィザード形式の画面から必要項目を設定し、アプリケーションを構築できる。ユーザー企業の情報システム部門もパラメータを用いた開発ツールを利用して工数を削減、生産性向上を可能にした。同社は、保守サポートや「eValue NS」を中心とした製品ブランディングの強化を図る方針だ。
NTTデータは、準大手・中堅向けERP製品の拡充を進めている。2009年に設立されたNTTデータビズインテグラルは、パッケージベンダーと連携してSaaS/クラウド対応のERP製品を開発。「6月初旬の発表以来、大きな反響があり、引き合いも多い」(NTTデータビズインテグラルの中山義人社長)としており、パートナーとの販売体制の整備を急ぐ。ISVからのOEM提供を進め、製品ラインアップの強化を図るほか、パートナーを増やしていく方針だ。
事業に参画しているNTTデータシステムズは、「Biz∫ SCAW」を開発・販売している。同社の荒田社長は、2010年を「自社開発とパートナーとの自社開発で品揃えの年度になる」とみている。同社のほか、人事管理はアイテックス、生産管理は東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)、ビジネスインテリジェンス(BI)はウイングアークテクノロジーズの6社がそれぞれ開発を担当。各社ともに新会社に出資しており、自社の得意分野を持ち寄ることで強みを発揮する狙いだ。
荒田社長は、「単発のソリューションに頼っているベンダーは淘汰される。課題解決のソリューションをすべて備えるほうが強い。『Biz∫ SCAW』は商品軸から顧客軸になった」と話す。
メインターゲットは、年商500~2000億円規模の企業。クラウド環境で提供する場合は、年商300億円規模をイメージしている。「クラウドはいつでも提供できる。本格的には今期からだ」(荒田社長)。パートナーとともに、「3年後には1000億円のビジネスにもっていきたい」(荒田社長)と目標を掲げている。
販社の場合
単品販売からソリューションへ
パッケージ提案を強化
みずほ情報総研が取り扱うSMB向けERPは、「多すぎる」(井上・上席課長)状況という。独自の会計パッケージ「Account Cubeビジネステンプレート」は.NETを採用し、「ゆくゆくはSaaSモデルで提供することも考えられる」(同)。ただ、同社は「GRANDIT」を取り扱っている。今後の製品ラインアップは、「商材がもつ価値がポイント。コンペで強い商材を軸に販売していく」考えだ。 日本オラクルの「Oracle E-Business Suite」を販売するB-EN-Gは、「オラクル製品をフルラインで提供できるように商材を揃えてきた」(山岸弘行・ソリューション事業本部第3事業部営業部営業部長)。
SAP事業に比べて取り扱い歴が浅いオラクル事業については、「とにかく新規のユーザー開拓に注力してきた。そのため、導入後の提案がおろそかになっていた。ユーザーが望まなければ、提案もしてこなかった。」(山岸・営業部長)と反省を口にする。ユーザー企業のシステム連携のニーズに応えるため、プラニングから業務改革、コンサルティングまで手がけていく構えだ。ロードマップの共有も重視し、システムの運用課題を拾っていく。保守サポートを強化するために5人からなるチームを編成した。
「オラクルの製品プロモーションに歩調を合わせてやってきた面があった。これからは、オラクルの商材をどんなソリューションとして提供できるか、だ」。山岸・営業部長が挙げる施策は三つ。業種別のソリューションとしてパッケージングし、ERPをコアにした周辺機能を強化するほか、グローバル対応とクイックスタートのテンプレートの充実を図っていく。
日本ビジネスコンピューターは、製造業向けに「R-PiCS」を主軸に、流通卸業向けに「SMILE BS/es」と「Enterprise Vision」を取り扱っている。「SMILEはそこそこ導入案件が出た。もう少し規模を大きくしていきたい」(市川国昭・取締役上級執行役員ERP事業部長JBCCホールディングスERPビジネス推進担当)。従来は年商20億円未満のユーザー企業が多かったが、50億~300億円の企業を対象に提案していく考えだ。BI製品「WebReport」などのパッケージを組み合わせて提案する。「Enterprise Vision」は、機能強化を継続し事例のテンプレート化により業種適合度を向上。「First Start Program」による低コスト・早期導入モデルやプライベートクラウド環境での提供などもあわせ、ビジネスを拡大していく。
強化ビジネスの一つとして、ビジネスインテリジェンス(BI)製品を位置づける。JBグループは、JBアドバンスト・テクノロジー(JBAT)の独自BI製品「WebReport」を主軸に、「IBM Cognos」をあわせて販売していく。
リーマン・ショック後、国内IT市場は大幅に冷え込んだ。ユーザー企業はIT投資を控え、ベンダーの業績にもはっきりとその影響が現れた。IDC Japanの調査によると、2010年の中堅・中小企業企業(SMB)市場のIT投資額は、全地域でマイナス成長となる見込み。一部地域を除き、改善傾向にあるとしたものの、本格的な回復基調に入るのは2011年以降となる見込みだ。もっとも、経済不況の真っ只中にあって、好調を維持したERP(統合基幹業務システム)ベンダーも少なくない。“仕込み”次第で状況は好転することの証といえるだろう。ERPベンダーは、流通・販売戦略を見直す時期を迎えている。
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