独自性を磨く
事業ドメインを再設定
SAPジャパンは今年度に入り、海外事業を展開するパートナー企業を支援するプログラムを打ち出した。パートナーからは、なぜもっと早く始めなかったのか、という意見が寄せられたようだ。主要SIerは、生き残りをかけて海外事業とグローバル対応に積極的な姿勢をみせており、こうした声が上がったのだろう。ERPの適用範囲は拡大しており、SIerが提供するソリューションの幅も従来の比ではない。事業ドメインの再設定が必要となっている。
海外ベンダーとの提携がカギに アイ・ティ・フロンティアは、三菱商事グループが展開する国内外の拠点向けに、各国の法制度などに個別対応したSAPテンプレートを適用してきた。最近は、大手製造業をはじめとする国内企業の海外子会社へのロールアウト案件を抱え、日本マイクロソフトのERP「Microsoft Dynamics AX」の販売が好調だ。竹田邦雄・執行役員ビジネス開発本部ソリューションマーケティングユニット長は、「『Dynamics AX』の機能面で完成度はまだまだといえるが、にわかに注目されてきているし、価格もそこそこ安い。面白い存在になる」と期待する。
日本マイクロソフトは今年度に入って、「Dynamics AX」事業へのてこ入れを行っている。数十人で構成するコンサルティングサービス部門での専任チームを新設し、200~300人の海外部隊と連携しながらバージョンアップの見積もりやハードウェアのサイジングなどでパートナー企業を支援する体制を整備した。競合ERPベンダーからは、「コンペでよくぶつかる」という声をよく聞く。パートナー企業であるアイ・ティ・フロンティアにとって、追い風になる動きだ。
海外でのシステム開発・運用・保守には、いくつかの選択肢があるという。三菱商事グループのシステム構築は、そのつど現地に行ったり現地のパートナー企業を介したりして対応している。竹田執行役員は、今後、アジア系のグローバルITベンダーと提携しながら事業を進めることになるだろう」と明かす。
日本ユニシスも、グローバル化の波に対応すべく手を打ってきたSIerの一社だ。キーとなる戦略の一つが稼働基盤のクラウド化で、「U-Cloud IaaS」を揃えている。
同社は、「U-Cloud IaaS」に対応してグローバルレベルでの保守サポート体制をもつ。2008年2月、営業活動やソリューションサービスの提供でインドのインフォシスと戦略アライアンス協定に調印。今年8月には、総合精密切削工具メーカーであるオーエスジーが導入したERPに、「クラウド型アプリケーション保守サービス」の提供を開始した。
具体的には、オラクルのサーバー仮想化ソフトウェア「Oracle VM」を利用し、「Oracle E-Business Suite R12」を日本ユニシスの「U-Cloud IaaS」上で提供。インフォシスがインドのグローバルサポートセンターからIaaS上の「Oracle EBS」環境を保守サポートするサービスとなっている。
さらに、戦略的に取り組んでいるのが、グローバルパッケージ向けのローカル対応ソリューションの提供である。法制度や税制などのローカルな対応要件に対応したソリューション「Oracle EBS向け固定資産管理ソリューション FaSet FA」をグローバルERPパッケージと同じ稼働基盤で提供している。
重要性が高まるMDMを推進 「昨年以降、グローバル案件が非常に増えている」。みずほ情報総研の高部課長はこう話す。3月11日以降、日本経済に大きな影響を与え続けている東日本大震災や円高傾向を受けて、とくに製造業からの引き合いが増えているという。
同社は、エス・エス・ジェイの「SuperStream-COREシリーズ」を主力として、ERPを取り扱ってきた。今は、最新の「SuperStream-NXシリーズ」にシフトしつつある。ただし、「『NX』は多言語・多通貨対応が未整備。国産パッケージを新たに扱うことを検討している」という。
高部課長は、グループ経営やグローバル化の進展に応じて、マスターデータ管理(MDM)の重要性がより高まってくるとみる。国内企業の多くは次のような課題を抱えている。(1)会社の統廃合時にマスタ運用を整理せず、同じマスタデータを複数か所で何重にも分散管理、(2)システムごとにマスタを登録し、個別に運用、(3)情報活用の高度化に対応してマスタ要件を柔軟に変更できない──などである。高部課長は、「MDMをきちんと提供するのが当社の使命」と断言する。
新しいことに挑戦する SAPジャパンの注力分野の一つにインメモリがある。SAPの有力パートナーであるアビームコンサルティングの中野執行役員は、「スクラッチ開発に携わっていた人材を『HANA』にスキルエクスチェンジしている」と話す。市場全体でスクラッチ開発は、下降傾向にある。「より高付加価値なビジネス」にシフトしていく方針だ。
アイ・ティ・フロンティアの竹田執行役員は、「SAPは『HANA』の登場で、いままで入り込めていなかった領域に進出している。例えば小売、SAPが日本ではまったくタッチできていなかった。これが変わってきている」と説明。「HANA」のほか、オラクル製品などの検証も進め、事業機会の創出に役立てる。
同社は「つくらない開発」を基盤とするシステム開発も推進している。ウルグアイのベンダーであるアルテッチのアプリケーション自動生成ツール「GeneXus」の活用でこれを可能にする。GeneXusの適用領域は多様で、基幹系システムでも「GeneXus」は使われている。
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