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ITホールディングス(ITHD) 荒野高志本部長 |
ITホールディングス(ITHD)で日本側カウンターパートナー役を務める荒野高志・執行役員事業推進本部長は、「グローバル化とクラウド対応は表裏一体」だと捉えている。成長国では、オリジナルの業務システムを個別に構築していては、ビジネスのスピードに追いつけない。さらにレガシーシステムの体験が限られているだけに、クラウド上に展開されているサービスを積極的に取り入れることに抵抗感が少ないのも背景にある。「従来型SIサービスだけでなく、クラウドサービスをむしろ全面に出すなど、商材の見せ方や優先順位のつけ方を、海外法人とともに変える必要がある」(荒野本部長)と指摘する。
端的な例が、ITHDグループのクオリカの取り組みである。同社が今、中国で展開しているクラウド対応生産管理システム「AToMsQube(アトムズキューブ)」や、外食産業向け営業支援システム「TastyQube(テイスティキューブ)」は、伸びが期待できる商材の一つ。中国は製造業の発展が目覚ましいが、同時に流通・サービスや小売業も勢いよく伸びている。野村総合研究所(NRI)の調べによれば、中国の小売業界では年商1兆円を超えるプレーヤーが続々と誕生している状況だ。家電量販やスーパー、百貨店などの躍進は、中国が製造業に加えて流通・サービス領域でも本格的な拡大期に入っていることを示している。
伸び盛りの中国の製造や流通・サービス業市場では、「AToMsQube」や「TastyQube」は適性がある。なおかつ稼働までのリードタイムが短く、利便性の高いクラウド/SaaS方式でシェアを獲り、「デファクトスタンダード的なポジションにまでもっていけば、この顧客ベースをもとにした新しいビジネスを創造する余地も広がる」(荒野本部長)と、成長市場のステージに合わせたアプローチを追求する。
海外法人と二人三脚で  |
コア 城戸孝吉部長 |
進出先である成長国で何が売れるのかを選定し、日本側の開発部門を動かしていくのもカウンターパートナーの重要な役割である。組み込みソフト開発に強いコアでカウンターパートナー役を務める城戸孝吉・グローバルビジネス推進部長は、「これまで培ってきた自社のノウハウを生かしながら、成長市場で売れるものを海外法人と二人三脚で考えている」と話す。コアは日系SIerで先駆けとなる1984年に北京に現地法人を設立し、2001年に上海にも法人を立ち上げた。だが、対日オフショアソフト開発や日系企業向けのITサポートは順調に拡大しているものの、地場市場をターゲットとしたビジネスが十分な勢いで成長しているとは言い切れない側面がある。
そこで取り組んだのが、海外法人自らがビジネスプランを策定し、日本側がこれを全面的に支援する体制づくりだ。「東京本社で事業計画をつくって海外法人が実行するという従来型のやり方を改め、海外法人とともに事業計画を練り上げる方式へと変えた」(城戸部長)と、ビジネスの進め方や意識改革に乗り出す。
海外法人からはコアが得意とする組み込みソフト技術を生かしたM2M(マシン・ツー・マシン)インターフェースユニットやIT資産管理システム、そして水質測定自動化システムなどが有力商材として挙がってきた。水質測定の類似ハードウェアは他社にもあるが、「ソフトウェアと連動して、統計的な分析やレポート作成までできるのは当社ならではのもの」(同)と話す。このシステムは、今、環境学で著名な上海の同済大学に評価委託を行う方向で準備が進んでいる。有力大学からの評価を受けて、さらに改善を進めていくことで環境保全に多額の投資を行っている中国地場のニーズを捉えていく方針だ。
カウンターパートナーが
クローバル化の鍵を握る
グローバルビジネスは、海外法人をつくり、ビジネスを拡大するとともに拠点数を増やし、いずれはNTTデータのような地域統括本社体制へと進化する。さらにグローバル化が進めば、より新しい経営形態が求められることになるだろう。
多くのSIerにとって、世界数拠点の地域統括本社を確立させる体制を築くステップまでには、まだかなりの道のりがあるように見受けられる。だが、例えばNRIのように戦略コンサルティング部門の中心がアジアに移りつつあるように、部門単位でビジネス領域がグローバルに拡大していくケースは、ここ数年のうちに急速に増える可能性がある。
成長市場のビジネスのスピードは急速で、売れると見込まれるシステムについては、積極的に開発やカスタマイズの拠点を海外へ移していく動きもより活発化する見込みだ。こうした一連の動きを支援する日本側カウンターパートナーは、ひいては日本の情報サービス業がグローバル化を果たせるかどうかの重要な役割を担っている。