製造や物流の現場において、IoTやAIといったテクノロジーを活用して現場を可視化、自動化し、効率性、生産性を高める動きが加速している。さらに、データを分析・活用することで新たな付加価値を生み出す「スマートファクトリー化」も活発化している。ファクトリーオートメーション(FA)とITの分野は、テクノロジーや人材の問題で分断されがちだったが、今、この二つの領域に橋を架けようとSIerや業界団体が取り組んでいる。(取材・文/山下彰子)
これまでのFA-IT連携
FAとITの間の溝
スマートファクトリーとは、ドイツ政府が提唱する「インダストリー4.0」などにより広く社会に浸透した概念だ。工場内にあるロボットや工作機械などからIoTを活用してデータを収集し、このデータを分析・活用することで新たな付加価値を生み出す工場を実現しようというもの。そのためには現場で稼働するロボットや機器などのFA領域と、IoTやAI、その上位レイヤーにあるIT領域との融合が必要不可欠だ。
2014年からインダストリー4.0という言葉が国内でも広がっているが、スマートファクトリーの実現は思うように進んでいない。その要因には、FAとITの両分野にまたがって取り組むSIer、協会団体の声を簡単にまとめると次のようなことがある。
一つが、FA領域のテクノロジーがITのテクノロジーに追いついていないことが挙げられる。技術の進歩が速いITに比べ、FA領域ではロボットや工作機械の寿命が20~30年と長く、IT機器からデータを収集するよりもFA機器からデータを収集するほうが難しいといわれる。Edgecrossコンソーシアムの森浩嗣・マーケティングマネージャーによると「IT機器はイーサネットにつなげてデータを送ることができるが、イーサネットが確立する前から稼働している機器が多いFA機器は、イーサネットに対応していないケースが多い」という。
テクノロジーだけではなく文化面でもFAはITに比べて遅れている。ずいぶん前に一括請負を止めて工程単位での分割契約の道を進んだITと異なり、FAはまだ一括請負が主流だ。プロジェクトの全工程を一括してカバーする契約になるため、開発費用が予想より大きくなったり、作業期間が延びてしまったりするリスクをベンダーは負担することになる。こうしたリスクを含むため、FAとITを組み合わせたソリューションの導入コストは高くなる。これが中堅・中小企業の導入が進まない要因だ。
ミツイワ
泉 貴史
部長
もう一つは人材だ。ミツイワの泉貴史・スマートファクトリー推進部部長は「IT担当者がFAの世界が分からないのと同様、FA担当者もITの世界が分からない。また導入を検討している企業も両方が分からない。つまり、売りたい側も買いたい側も、それぞれの領域を理解している人材が非常に少ない」と話す。
テクノロジーや文化の遅れ、人材がスマートファクトリーの推進を阻害する要因となっている。
現時点での問題と解決策
FAの領域に近づき、スマートファクトリーを推進している1社がミツイワだ。生産管理、販売・会計・人事・給与システムなどを提供するSIerで、11年下期にロボットビジネスに着手する経営判断を下し、半年の準備期間を経て12年にロボットビジネス部を立ち上げた。
FA市場では後発になるミツイワは、ロボットの導入に積極的な自動車メーカーではなく「これまでロボットを導入したことがないリネンサプライヤーや食品工場、化粧品などの業種や、中堅・中小企業を中心に取り組んだ」と泉部長は話す。
ロボット導入経験のない企業は、導入に必要な要件仕様書を作成した経験がなく、この仕様書作成から支援する必要がある。ここで生きてくるのがミツイワのSIerとしてのノウハウだ。「ITに50年以上携わり、お客様から要望を引き出す能力が長けている」と泉部長は話す。要望が固まっていない段階から顧客に寄り添えるのが強みとなっているのだ。
ミツイワは、その先のFAからITの領域までについても一括で請け負っている。ロボットなど機器の仕入れ、ロボットシステムの構築は外部に発注する形になるが、ミツイワが窓口となる。この一括請負について「当初はあまり響かなかったが、ここ1~2年は価値を認めてくれるAIベンダー、お客様が増えてきた」(泉部長)と手応えを感じている。
ミツイワにとって、スマートファクトリー事業は成長事業だ。事業の売り上げ、収益はもちろんのこと、ロボットを足掛かりに上位レイヤーである基幹システムまで提案の幅を広げていく構想を持っている。
現在はロボットビジネス部からスマートファクトリー推進部と名称を変更し、営業部と連携して提案を進めている。まだ営業案件数が少ないことが課題で、今後、営業案件を増やし、営業の経験値を上げていくことが目下の目標だという。案件数を増やし、19年度は売り上げを前年度比1.5倍まで伸ばしていきたいという。
ロボットSIerを支援する団体が発足
ロボット導入の要となるのが、ロボットを提案し、ロボットを動かすためのシステムを組むロボットSIerだ。ロボットSIerの社数、従業員数を増やすために18年7月に発足した団体が、「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」。ミツイワが幹事を務めている。
ロボット需要の高まりと同時に、ロボットSIerの不足が深刻化している。このため、全国でバラバラに活動しているロボットSIerを統括し、事業環境の向上や能力強化など、ロボット業界が抱える課題を解決することを目的としている。2月末の会員数はSIer会員が140社、協力会員が31社。会長は三明機工の久保田和雄社長、副会長はバイナスの渡辺亙社長が務める。
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