新型コロナ禍に端を発するリモートワークの拡大によってエンドポイント管理が課題となる中、ソリューションの販売戦略も多様化している。日本マイクロソフトは大手パートナーとのアライアンスによって提供価値の向上を図り、顧客の囲い込みを狙う。一方、これまでエンドポイント管理に活用されてきたIT資産管理ツールでは、エムオーテックスが製品をリブランディングし、昨年からクラウド版の提供を開始、新規顧客獲得を進めている。コロナ対策の急場しのぎであったリモートワークから、オフィスとリモートを使い分ける新たな働き方の「ハイブリッドワーク」への転換が急がれる中、製品の販売手法も大きく変容しつつある。
(取材・文/岩田晃久、藤岡 堯)

働き方の多様化で市場は拡大の一途

 ハイブリッドワークの浸透により、働く場所のバリエーションが広がれば、従業員が使うデバイスの管理は複雑さを増すことになる。資産管理やセキリュティといった要件を押さえるのはもちろん、端末のキッティング、トラブル発生時の対応など、システム担当者には広範かつ膨大な作業がのしかかる。また、デバイスを常に最新の状態に更新し続けなければ、最高のパフォーマンスは生み出せない。

 調査会社のアイ・ティ・アールが2021年9月に公表した「ユニファイド・エンドポイント市場」に関する調査結果によると、20年度の市場規模は前年比25%増の277億6000万円で、25年度には429億円まで伸びるとの見通しが示された。同社は、分散して働く従業員に適切なITサービスを届けるための基盤技術として、一定の成長が続くと分析する。日々拡大するエンドポイント管理市場を前に、各ベンダーはさまざまな戦略を展開し、市場における存在感を高めようと努めている。

日本マイクロソフト
パートナーとのアライアンスで価値向上

 日本マイクロソフトは2月、国内企業にエンドポイント管理手法の刷新を促進し、ハイブリッドワークを支援するため、幹事企業18社とともに「Microsoft Hybrid Workforce Alliance」を発足した。日本独自の施策となるこのアライアンスでは、Windows 11、Windows 365、そして「Azure Virtual Desktop(AVD)」と、クラウドサービスを利用した最新のエンドポイント管理ソリューションによる、「エンドポイントモダナイゼーション」の実現に向けた導入と展開を支援する考えだ。

 アライアンスは、ライセンス販売を主に手掛けるライセシング・ソリューション・パートナー、クラウド・ソリューション・プロバイダー、ハードウェアを含めた再販パートナー、そしてOEMパートナーの4者で構成する。既存のパートナーアライアンスを発展・拡張する形となる。
 
日本マイクロソフト 山崎善寛 本部長

 日本マイクロソフトモダンワーク&セキュリティビジネス本部の山崎善寛・本部長は「各パートナーが情報交換や情報共有をしたり、お客様に対してワンストップでソリューションを提供したりするための枠組みとして進めていく。新しいソリューションのケイパビリティ(能力)を高めてもらうほか、マーケティング施策も含めていく」と狙いを説明する。

 ハイブリッドワーク時代におけるエンドポイント管理は多様なレイヤーで成り立っている。PCやモバイル機器といったデバイスは多岐に渡り、OSも種類が分かれる上、オフィスを前提としない働き方ではキッティングを働き手自身で担う必要も生じる。クラウド利用が主体となれば、データの扱いにも留意すべきであるし、故障やトラブルの把握から復旧までも遠隔で対応しなければならない。つまり、導入から運用、保守、そしてセキュリティ対策を含め、デバイスのライフサイクル全体で新たな対応方法が求められてくることになる。

 マイクロソフトでは、Windows 11、Windows 365、AVDを通じて、どのような環境下でもWindowsを活用できる体制を整え、「Intune」「Configuration Manager」「Windows Autopilot」などの管理ツール群(最近ではこれらを統合的に運用できる「Microsoft Endpoint Manager」に注力している)も用意する。一方で「Windows 11はOEMパートナー、AVDはAzure系のパートナー、運用サービスはSIerと、それぞれ分かれていた」(山崎本部長)ことから、顧客の抱える複合的な課題により効果的にアプローチするため、アライアンスの設立に至ったという。

 目標については、23年6月までにパートナー100社、150のソリューション、150サービス、事例30件の達成を掲げる。すでにWindows 365で35のソリューション、AVDで48のソリューションをリリースしており、これから導入本格化が見込まれるWindows 11を含め、実現性は高いと見込む。クラウドビジネスに取り組んでいないパートナーや、クラウドの導入が比較的遅れている自治体や医療関係などを顧客に持つパートナーなどの参画を期待するという。

 山崎本部長は「マイクロソフトの製品をただ提供するというだけでは、新しいエンドポイント管理の実現、運用の最適化、お客様の生産性向上はできない」と強調し、多様なパートナーの強みを掛け合わせ、顧客のエンドポイント管理を底上げしていく姿勢をアピールした。