約7兆7500億円という巨費を投じて行われる、ブロードコムによるヴイエムウェアの買収。さまざまな企業を傘下に収めて収益性を急速に高めてきたブロードコムは、その手法を企業向けヴイエムウェアにも適用しようと考えているが、株式市場と技術コミュニティの間で評価は真っ二つに割れている。ヴイエムウェアは今後どのようなシナリオをたどるのか考察する。
(取材・文/日高 彰)

株式市場は巨額買収に好感

 CAテクノロジーズ、シマンテックと、ソフトウェア企業の大型買収を続けてきたブロードコムが、次に触手を伸ばすのはヴイエムウェアだ--。米通信社のブルームバーグがこう伝えたのは米国時間5月22日。4日後の26日に両社から買収取引が正式発表されると、報道前に1株95ドル前後で推移していたヴイエムウェア株は130ドル近辺まで急騰。ブロードコム株も前日比3.6%高となり、株式市場は同社のM&A戦略を歓迎した。
 

 買収金額は610億ドル(約7兆7500億円)。今年は、マイクロソフトによるゲーム会社アクティビジョン・ブリザードの買収(687億ドル)が発表されているが、ブロードコムはヴイエムウェアの純負債80億ドルを引き受けるとしており、実質的な金額は上回る。成立すれば、IT業界(通信事業者を除く)の買収では過去最大の規模となる(図参照)。

 サーバー仮想化製品のパイオニアであるヴイエムウェアは1998年設立。2004年にストレージ大手のEMCに6億2500万ドルで買収され、15年からはEMCを買収したデル(現デル・テクノロジーズ)の傘下となっていた。デルはEMCの買収に670億ドルを投じたが、EMCが持つ最大の資産がヴイエムウェアだったとされる。言わば、ヴイエムウェアを担保として資金を調達し、自社が得意とするサーバーと、EMCのストレージ事業の統合を図った格好となる。

 その後21年に、デル・テクノロジーズは自社グループからのヴイエムウェアの分離(スピンオフ)を実施。このときにヴイエムウェアが実施した特別配当を、EMC買収時に膨れ上がった負債の一部の返済に充てている。デル・テクノロジーズのマイケル・デル会長兼CEOはスピンオフ後もヴイエムウェア株の40.2%を保有し続けていたが、今回ブロードコムの買収に応じることで、ヴイエムウェアを完全に手放すことになる。ブロードコムはヴイエムウェアの株主に1株あたり142.50ドルを提示している。これは買収の話が報道される前の市場価格の1.5倍にあたり、大幅なプレミアムを乗せたかたちだ。
 
ヴイエムウェアは、Kubernetesの生みの親の一人である
ジョー・ベダ氏が率いるヘプティオを買収するなど、
オープンソースのクラウドネイティブ技術への投資を強化していた