Special Feature
「デジタル」で成長を推進 日立が見据える新たな企業像
2022/10/13 09:00
週刊BCN 2022年10月10日vol.1941掲載
日立製作所は、2022年度から「2024中期経営計画」をスタートしている。小島啓二社長兼CEOは、「(中期計画は)成長へのモードシフトであり、デジタルとグリーンで成長する企業を目指す」と宣言する。そして、「成長戦略の中心はLumadaである」とも語る。重電に位置づけられる日立の新たな成長戦略は、そのポジションのイメージとは大きく異なる「デジタル」によって推進されることになる。
(取材・文/大河原克行 編集/藤岡 堯)
中期計画では、24年度に売上収益10兆円、Adjusted EBITA(調整後EBITA)が 率で12%(1兆2000億円)、ROIC(投下資本利益率 )は10%を掲げる。前述の小島社長兼CEOの言葉通り、過去10年以上に渡る変革の取り組みをベースに、成長路線へとかじを切る内容になっている。
振り返れば日立は、08年度に国内製造業としては過去最大となる7873億円の赤字を計上。以降、経営危機からの脱却に向けた財務体質の改善やポートフォリオの入れ替え、成長基盤の構築、デジタルの積極的な活用やグローバル化の推進など、抜本的な改革を遂行してきた。
直前となる19~21年の中期計画においては、Lumada事業のグローバル拡大や、OTおよびプロダクト事業のポートフォリオ強化などを推進し、「社会イノベーション事業」でグローバルリーダーを目指す方針を明確に示した。スイスABBのパワーグリッド事業の買収や、米GlobalLogic(グローバルロジック)の買収といった大型投資が相次いだのも、この時期だ。
小島啓二 社長兼CEO
小島社長兼CEOは「構造改革は、ひとつの区切りに到達した」と、これまでを振り返りながら、「これまでの改革で作られた土台をフルに生かして、成長へとモードをチェンジするのが私の役目である」と意欲を語る。
前中期計画の最終年度となった21年度は、半導体不足や部材価格高騰、ウクライナ情勢や新型コロナウイルスの感染再拡大の影響など、厳しい事業環境ではあったが、二桁増の増収増益を達成。当期純利益は過去最高を記録する力強い内容になった。強靭な体質をもとに、今回の中期計画では成長戦略を描くことになる。
データとテクノロジーを活用して、企業と社会課題を解決する「社会イノベーション事業」そのものであり、Lumadaは、名実ともに日立の成長戦略の軸になる。
Lumada事業は「デジタルエンジニアリング」「システムインテグレーション」「コネクテッドブロダクト」「マネージドサービス」の四つで構成する。売上収益は、21年度実績の1兆4000億円から、24年度には2兆7000億円へとほぼ倍増させる計画とし、年平均成長率24%と高い伸びを見込む。Adjusted EBITAは4000億円、率では16%を目指すという意欲的な計画だ(図参照)。
小島社長兼CEOは「世の中では、DXが完全な流れになったと認識している。Lumadaのアクセルを踏む時期がきた」と意気込む。
その中でも、Lumada事業の推進役となるのが、DSSセクターだ。DSSセクターだけで従業員数は全世界で約10万人に達し、約50の国や地域で事業を展開する。21年度の売上収益は2兆1536億円、調整後営業利益は2681億円で、売上収益は日立グループ全体の20%、調整後営業利益では36%を占めている。
デジタルシステム&サービス統括本部長の徳永俊昭・執行役副社長は「Lumada事業は、新たな成長ステージに入ることになる。グローバルDX市場全体の伸びを大きく上回り、飛躍的成長を実現する。24年度までに成長性と収益性でグローバルトップクラスの事業体を目指す」と述べる。
24年度に向けた数値目標も意欲的だ。DSSセクターでの売上収益は2兆6000億円、Adjusted EBITAは4000億円、率では15%とする
さらに、重点指標として、グローバルロジックの売上収益を21年度の12億8000万ドルから、24年度には28億3000万ドルと倍増以上を狙う。DSSにおけるLumadaサービス事業比率は21年度の46%を、24年度には50%以上に拡大する。また、Lumadaの海外売上収益比率は35%から50%に拡大させる考えだ。
徳永俊昭 副社長
徳永副社長は「DSSセクターの将来のありたい姿は、社会インフラDXのグローバルリーダーになること」と強い意思をみせる。
DSSセクターでは、四つの成長戦略を掲げる。第1は「Lumada事業の進化による成長」である。
ミッションクリティカル領域で培った高信頼システム開発によるシステムインテグレーション、セキュアなデータ管理やハイブリッドクラウド対応によるマネージドサービスといったDSSセクターが持つ強みに加えて、グローバルロジックが持つコンサルティング、デザイン、デジタルエンジニアリング力を活用。さらに、他のセクターにおいてデジタル化されたプロダクトで構成するコネクテッドプロダクトを活用し、OT、IT、プロダクトと組みあわせた価値を提供する。
「あらゆる領域で、顧客の課題や社会課題の解決に取り組み、そのために、顧客とのエンゲージメントを高め、密着したDXパートナーとして継続的に顧客価値を創造する。リカーリング型事業によって、Lumada事業のサステナブルな成長を実現する」(徳永副社長)。
第2は「多様なマーケットアプローチによるLumada事業のスケール」だ。個々の顧客との協創を通じてエンゲージメントを高め、リピートオーダーを獲得する「個客DX型」、顧客との協創を通じて開発した独自サービスや、市場で実績があるソリューションを横展開し、新たな顧客を開拓する「ドメインDX型」、日立と顧客だけでは解決できない複雑な課題に対して、多数のステークホルダーと新たなエコシステムを構築する「社会インフラDX/GX型」の3方向のアプローチを行う。
第3は「Hitachi DigitalによるグローバルLumada事業のけん引」である。22年4月に、米シリコンバレーに新設したHitachi Digitalを、徳永副社長は「グローバルLumada事業の司令塔」と位置づけ、Hitachi Vantaraやグローバルロジックのほか、日立エナジーや日立レール、JRオートメーションなどのOTセクターのグループ企業と連携し、グローバルにおけるLumada事業の策定と実行の役割を担わせる。
Hitachi DigitalのCEOを務める、谷口潤執行役常務は「ビジネスの手法がサービス中心へと転換しており、グローバルロジックによるデジタルエンジニアリングの提案をきっかけに、日立が持つOTとの組み合わせや、クラウド運用をHitachi Vantaraが提供するなど、グローバル展開においても、日立グループがワンストップで対応できる体制が整いはじめている」とする。
谷口 潤 常務
そして、最後は、「成長を支えるデジタル人財(人材)の強化・拡充」である。21年度に6万人だった国内外のデジタル人材を、24年度までに9万8000人に拡充する計画を打ち出している。グローバルロジックが持つ採用および育成スキームを進化させるとともに、国内における人材獲得や育成に活用。事業成長を支えるデジタル人材の拡充によって、DX市場でのグローバルトップクラスのポジション獲得を目指すという。
グローバルロジックはデジタルエンジニアリング企業であり、エクスペリエンスデザインや高度なエンジニアリング、データに関する専門知識を組み合わせることで、顧客のデジタルトランスフォーメーションを支援する。
グローバルロジックのCEOで、22年10月1日付で取締役会長に就いたシャシャンク・サマント氏は、「かつてのグローバルロジックだけでは、運用領域をカバーできなかったが、日立グループとなったことで、バリューチェーンを完結するかたちでサービスが提供できる。幅広い業種に対する提案が可能になり、グローバルで展開できる市場も40カ国以上に拡大している。これまでは売上収益の約6割が米国であったが、今後は日立グループが強い欧州での事業拡大やインドでも事業拡大を拡大していく」と語る。
22年4月には日本法人を設立。今後、日本の顧客に向けたDXサービスの提供を行うことになる。日立が持つリソースや、日本における顧客基盤、エコシステムを活用し、事業を拡大する構えだ。
このほか、中期計画ではグリーンを成長戦略のもう一つの柱としており、これもデジタルと密接な関係を持つ。環境事業を担当するグリーンエナジー&モビリティのセクターでは、小島社長兼CEOがグリーンエナジー&モビリティ戦略企画本部長を兼務。その点でも力の入れ具合がわかる。
ソリューション事業出身の小島社長兼CEOが直接担当することで、グリーンにおける成長戦略においても、デジタルを積極活用していく考えだ。
(取材・文/大河原克行 編集/藤岡 堯)

中期計画では、24年度に売上収益10兆円、Adjusted EBITA(調整後EBITA)が 率で12%(1兆2000億円)、ROIC(投下資本利益率 )は10%を掲げる。前述の小島社長兼CEOの言葉通り、過去10年以上に渡る変革の取り組みをベースに、成長路線へとかじを切る内容になっている。
振り返れば日立は、08年度に国内製造業としては過去最大となる7873億円の赤字を計上。以降、経営危機からの脱却に向けた財務体質の改善やポートフォリオの入れ替え、成長基盤の構築、デジタルの積極的な活用やグローバル化の推進など、抜本的な改革を遂行してきた。
直前となる19~21年の中期計画においては、Lumada事業のグローバル拡大や、OTおよびプロダクト事業のポートフォリオ強化などを推進し、「社会イノベーション事業」でグローバルリーダーを目指す方針を明確に示した。スイスABBのパワーグリッド事業の買収や、米GlobalLogic(グローバルロジック)の買収といった大型投資が相次いだのも、この時期だ。
小島社長兼CEOは「構造改革は、ひとつの区切りに到達した」と、これまでを振り返りながら、「これまでの改革で作られた土台をフルに生かして、成長へとモードをチェンジするのが私の役目である」と意欲を語る。
前中期計画の最終年度となった21年度は、半導体不足や部材価格高騰、ウクライナ情勢や新型コロナウイルスの感染再拡大の影響など、厳しい事業環境ではあったが、二桁増の増収増益を達成。当期純利益は過去最高を記録する力強い内容になった。強靭な体質をもとに、今回の中期計画では成長戦略を描くことになる。
中核は「Lumada」
進行中の中期計画の中核を担うのは「Lumada」である。Lumadaは、「Illuminate(照らす、解明する、輝かせる)」と「Data(データ)」を組み合わせた造語で、顧客のデータに光を当て、輝かせることで、新たな知見を引き出し、企業や社会の経営課題の解決や、事業成長に貢献していくという意味を込めている。データとテクノロジーを活用して、企業と社会課題を解決する「社会イノベーション事業」そのものであり、Lumadaは、名実ともに日立の成長戦略の軸になる。
Lumada事業は「デジタルエンジニアリング」「システムインテグレーション」「コネクテッドブロダクト」「マネージドサービス」の四つで構成する。売上収益は、21年度実績の1兆4000億円から、24年度には2兆7000億円へとほぼ倍増させる計画とし、年平均成長率24%と高い伸びを見込む。Adjusted EBITAは4000億円、率では16%を目指すという意欲的な計画だ(図参照)。

小島社長兼CEOは「世の中では、DXが完全な流れになったと認識している。Lumadaのアクセルを踏む時期がきた」と意気込む。
DSSでグローバルリーダー目指す
日立は22年度から、事業セクターを、ITサービスやフロントビジネス、サービス&プラットフォームで構成する「デジタルシステム&サービス(DSS)」、エネルギーやパワーグリッド、鉄道、原子力で構成する「グリーンエナジー&モビリティ」、家電事業やビルシステム、インダストリルブロダクツ、産業および流通分野などを担当する「コネクティブインダストリーズ」の三つのセクターに再編し、いずれのセクターでもLumadaが関連することになる。その中でも、Lumada事業の推進役となるのが、DSSセクターだ。DSSセクターだけで従業員数は全世界で約10万人に達し、約50の国や地域で事業を展開する。21年度の売上収益は2兆1536億円、調整後営業利益は2681億円で、売上収益は日立グループ全体の20%、調整後営業利益では36%を占めている。
デジタルシステム&サービス統括本部長の徳永俊昭・執行役副社長は「Lumada事業は、新たな成長ステージに入ることになる。グローバルDX市場全体の伸びを大きく上回り、飛躍的成長を実現する。24年度までに成長性と収益性でグローバルトップクラスの事業体を目指す」と述べる。
24年度に向けた数値目標も意欲的だ。DSSセクターでの売上収益は2兆6000億円、Adjusted EBITAは4000億円、率では15%とする
さらに、重点指標として、グローバルロジックの売上収益を21年度の12億8000万ドルから、24年度には28億3000万ドルと倍増以上を狙う。DSSにおけるLumadaサービス事業比率は21年度の46%を、24年度には50%以上に拡大する。また、Lumadaの海外売上収益比率は35%から50%に拡大させる考えだ。
徳永副社長は「DSSセクターの将来のありたい姿は、社会インフラDXのグローバルリーダーになること」と強い意思をみせる。
DSSセクターでは、四つの成長戦略を掲げる。第1は「Lumada事業の進化による成長」である。
ミッションクリティカル領域で培った高信頼システム開発によるシステムインテグレーション、セキュアなデータ管理やハイブリッドクラウド対応によるマネージドサービスといったDSSセクターが持つ強みに加えて、グローバルロジックが持つコンサルティング、デザイン、デジタルエンジニアリング力を活用。さらに、他のセクターにおいてデジタル化されたプロダクトで構成するコネクテッドプロダクトを活用し、OT、IT、プロダクトと組みあわせた価値を提供する。
「あらゆる領域で、顧客の課題や社会課題の解決に取り組み、そのために、顧客とのエンゲージメントを高め、密着したDXパートナーとして継続的に顧客価値を創造する。リカーリング型事業によって、Lumada事業のサステナブルな成長を実現する」(徳永副社長)。
第2は「多様なマーケットアプローチによるLumada事業のスケール」だ。個々の顧客との協創を通じてエンゲージメントを高め、リピートオーダーを獲得する「個客DX型」、顧客との協創を通じて開発した独自サービスや、市場で実績があるソリューションを横展開し、新たな顧客を開拓する「ドメインDX型」、日立と顧客だけでは解決できない複雑な課題に対して、多数のステークホルダーと新たなエコシステムを構築する「社会インフラDX/GX型」の3方向のアプローチを行う。
第3は「Hitachi DigitalによるグローバルLumada事業のけん引」である。22年4月に、米シリコンバレーに新設したHitachi Digitalを、徳永副社長は「グローバルLumada事業の司令塔」と位置づけ、Hitachi Vantaraやグローバルロジックのほか、日立エナジーや日立レール、JRオートメーションなどのOTセクターのグループ企業と連携し、グローバルにおけるLumada事業の策定と実行の役割を担わせる。
Hitachi DigitalのCEOを務める、谷口潤執行役常務は「ビジネスの手法がサービス中心へと転換しており、グローバルロジックによるデジタルエンジニアリングの提案をきっかけに、日立が持つOTとの組み合わせや、クラウド運用をHitachi Vantaraが提供するなど、グローバル展開においても、日立グループがワンストップで対応できる体制が整いはじめている」とする。
そして、最後は、「成長を支えるデジタル人財(人材)の強化・拡充」である。21年度に6万人だった国内外のデジタル人材を、24年度までに9万8000人に拡充する計画を打ち出している。グローバルロジックが持つ採用および育成スキームを進化させるとともに、国内における人材獲得や育成に活用。事業成長を支えるデジタル人材の拡充によって、DX市場でのグローバルトップクラスのポジション獲得を目指すという。
グローバルロジックがかぎ
Lumada事業の成長のかぎを握る存在として見逃せないのが、グローバルロジックである。グローバルロジックはデジタルエンジニアリング企業であり、エクスペリエンスデザインや高度なエンジニアリング、データに関する専門知識を組み合わせることで、顧客のデジタルトランスフォーメーションを支援する。
グローバルロジックのCEOで、22年10月1日付で取締役会長に就いたシャシャンク・サマント氏は、「かつてのグローバルロジックだけでは、運用領域をカバーできなかったが、日立グループとなったことで、バリューチェーンを完結するかたちでサービスが提供できる。幅広い業種に対する提案が可能になり、グローバルで展開できる市場も40カ国以上に拡大している。これまでは売上収益の約6割が米国であったが、今後は日立グループが強い欧州での事業拡大やインドでも事業拡大を拡大していく」と語る。
22年4月には日本法人を設立。今後、日本の顧客に向けたDXサービスの提供を行うことになる。日立が持つリソースや、日本における顧客基盤、エコシステムを活用し、事業を拡大する構えだ。
このほか、中期計画ではグリーンを成長戦略のもう一つの柱としており、これもデジタルと密接な関係を持つ。環境事業を担当するグリーンエナジー&モビリティのセクターでは、小島社長兼CEOがグリーンエナジー&モビリティ戦略企画本部長を兼務。その点でも力の入れ具合がわかる。
ソリューション事業出身の小島社長兼CEOが直接担当することで、グリーンにおける成長戦略においても、デジタルを積極活用していく考えだ。
日立製作所は、2022年度から「2024中期経営計画」をスタートしている。小島啓二社長兼CEOは、「(中期計画は)成長へのモードシフトであり、デジタルとグリーンで成長する企業を目指す」と宣言する。そして、「成長戦略の中心はLumadaである」とも語る。重電に位置づけられる日立の新たな成長戦略は、そのポジションのイメージとは大きく異なる「デジタル」によって推進されることになる。
(取材・文/大河原克行 編集/藤岡 堯)
中期計画では、24年度に売上収益10兆円、Adjusted EBITA(調整後EBITA)が 率で12%(1兆2000億円)、ROIC(投下資本利益率 )は10%を掲げる。前述の小島社長兼CEOの言葉通り、過去10年以上に渡る変革の取り組みをベースに、成長路線へとかじを切る内容になっている。
振り返れば日立は、08年度に国内製造業としては過去最大となる7873億円の赤字を計上。以降、経営危機からの脱却に向けた財務体質の改善やポートフォリオの入れ替え、成長基盤の構築、デジタルの積極的な活用やグローバル化の推進など、抜本的な改革を遂行してきた。
直前となる19~21年の中期計画においては、Lumada事業のグローバル拡大や、OTおよびプロダクト事業のポートフォリオ強化などを推進し、「社会イノベーション事業」でグローバルリーダーを目指す方針を明確に示した。スイスABBのパワーグリッド事業の買収や、米GlobalLogic(グローバルロジック)の買収といった大型投資が相次いだのも、この時期だ。
小島啓二 社長兼CEO
小島社長兼CEOは「構造改革は、ひとつの区切りに到達した」と、これまでを振り返りながら、「これまでの改革で作られた土台をフルに生かして、成長へとモードをチェンジするのが私の役目である」と意欲を語る。
前中期計画の最終年度となった21年度は、半導体不足や部材価格高騰、ウクライナ情勢や新型コロナウイルスの感染再拡大の影響など、厳しい事業環境ではあったが、二桁増の増収増益を達成。当期純利益は過去最高を記録する力強い内容になった。強靭な体質をもとに、今回の中期計画では成長戦略を描くことになる。
(取材・文/大河原克行 編集/藤岡 堯)

中期計画では、24年度に売上収益10兆円、Adjusted EBITA(調整後EBITA)が 率で12%(1兆2000億円)、ROIC(投下資本利益率 )は10%を掲げる。前述の小島社長兼CEOの言葉通り、過去10年以上に渡る変革の取り組みをベースに、成長路線へとかじを切る内容になっている。
振り返れば日立は、08年度に国内製造業としては過去最大となる7873億円の赤字を計上。以降、経営危機からの脱却に向けた財務体質の改善やポートフォリオの入れ替え、成長基盤の構築、デジタルの積極的な活用やグローバル化の推進など、抜本的な改革を遂行してきた。
直前となる19~21年の中期計画においては、Lumada事業のグローバル拡大や、OTおよびプロダクト事業のポートフォリオ強化などを推進し、「社会イノベーション事業」でグローバルリーダーを目指す方針を明確に示した。スイスABBのパワーグリッド事業の買収や、米GlobalLogic(グローバルロジック)の買収といった大型投資が相次いだのも、この時期だ。
小島社長兼CEOは「構造改革は、ひとつの区切りに到達した」と、これまでを振り返りながら、「これまでの改革で作られた土台をフルに生かして、成長へとモードをチェンジするのが私の役目である」と意欲を語る。
前中期計画の最終年度となった21年度は、半導体不足や部材価格高騰、ウクライナ情勢や新型コロナウイルスの感染再拡大の影響など、厳しい事業環境ではあったが、二桁増の増収増益を達成。当期純利益は過去最高を記録する力強い内容になった。強靭な体質をもとに、今回の中期計画では成長戦略を描くことになる。
この記事の続き >>
- 中核は「Lumada」
- DSSでグローバルリーダー目指す
- グローバルロジックがかぎ
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