Special Feature
さらに拡大するローコード開発市場 一方でベンダーの淘汰も始まる
2023/07/17 09:00
週刊BCN 2023年07月17日vol.1977掲載
ローコード開発ツールは、ユーザー企業によるアプリケーション内製化の需要に加えて、経験値の高い開発エンジニアの生産性向上にも利用されている。米調査会社Gartner(ガートナー)は、ローコード開発テクノロジーに対する全世界の支出は2026年までに445億ドルまで拡大し、21年から26年までの年平均成長率は19.2%と予測する。今後も利用は進む見通しだが、ツールの誤用や過剰使用の増大、アプリケーションの無秩序な増加など、さまざまな問題点もはらんでいる。
(取材・文/谷川耕一 編集/日高 彰)
ガートナー エイドリアン・リオ アナリスト
現状のローコード開発の主流は、複雑なものよりはシンプルなアプリケーションの構築において、生産性を向上するのに向いている。これは米Microsoft(マイクロソフト)のローコードプラットフォーム「Power Apps」に代表される領域だ。一方で、「開発のプロが使うような複雑な処理をセキュアに構築するようなものの実現は、まだ難しいところがある」と言うのは、ガートナーのアプリケーション・グループに所属するバイスプレジデントのエイドリアン・リオ・アナリストだ。
ローコード開発の技術を使うユーザーの想定属性は、「市民開発者」と「プロの開発者」の二つに大別でき、さらに市民開発者は一般的な「ビジネス」と、ある程度データやビジネスプロセスを構造的に理解した「テクニカル」に、プロの開発者はJavaやC#などで業務システム開発を担う「ゼネラリスト」と、モバイルアプリやAR/VRなど特定の領域に携わる「スペシャリスト」に分けられる。最もシンプルなものを開発するビジネス領域の市民開発者は、主にマウスの操作などの画面遷移だけで実現できるようなアプリケーションを作る。この場合は開発の知識やノウハウがほとんどなくても構築できる。ツールのユーザー層としては最もボリュームが大きいところだ。
一方、プロの開発者は、これまでローコード開発ツールを使わなかったが、ガートナーのリオアナリストは「彼らは、ローコード開発ツールは仕事では使えないと思っていたが、最近、その状況が変わってきた」と指摘する。プロの開発者も使うに値する機能が実装され、利用すれば一からコードを書くよりも効率的だと分かってきたのだ。
さらに、セキュリティのチェックや頻繁に更新する際のドキュメント管理など、人手ではもはや対応しきれないニーズにも、ローコード開発のツールで容易に対応できる。それもプロの開発者に利用が広がりつつある要因だろう。そのためツールベンダーも、最近はプロの開発者向けの製品や機能に力を入れ始めている。
ガートナーは、ローコードのアプリケーションプラットフォームのプレイヤーは200を超えているとみている。この場合のプラットフォームとは、データを格納するデータベースを基にしてアプリケーションを構築できるようにしたものや、ユーザーインターフェースなどのユーザーエクスペリエンス(UX)をデザインし構築するもの、ビジネスのルールやロジックを機能として実現するもの、さらにはワークフローを簡単に構築できるものなど、多くの機能を網羅した統合環境を指す。
このローコードのアプリケションプラットフォームに加え、UXデザインだけ、ワークフロー機能だけなどシンプルな機能を提供するツールもあり、それらを加えればプレイヤー数は400を超える。ちなみに、このように多くのローコード開発ツールのベンダーがある中、有力ベンダーの市場ポジションをガートナーがまとめているレポート「マジック・クアドラント」において、22年版のローコードアプリケーションプラットフォームカテゴリーで取りあげているのは17社しかない。 中でもリーダーに位置づけているのは、ポルトガルOutSystems(アウトシステムズ)、マイクロソフト、オランダMendix(メンディックス)、米Salesforce(セールスフォース)、米ServiceNow(サービスナウ)の5社だけだ。
ガートナーが26年に445億ドルになると予測するローコードテクノロジーの市場には、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やBPA(ビジネスプロセスオートメーション)、MXDP(マルチエクスペリエンス開発プラットフォーム)、CADP(シチズンオートメーションと開発プラットフォーム)なども含まれる。これらの中で、ローコードアプリケーションプラットフォームの割合が最も大きく、「全体よりも高い23.6%の年平均成長率となっている」ともリオアナリストは言う。
数が少なくシンプルなアプリケーションであれば、作った人が自ら管理するセルフガバナンスでもなんとかなる。しかし数が多くなれば、市民開発者が開発するアプリケーションを、組織として管理するガバナンスのフレームワークが必要だ。
ほかにも、市民開発者が構築したアプリケーションの利用者数が増えることで発生する問題もある。自分用に作ったものを周辺の2~3人にシェアして使う程度では問題がなくても、部門の数十人で使う、さらには組織全体の数百人で使うとなれば新たな問題が発生する。ローコード開発ツールのライセンスがユーザー単位の場合は、階層型の費用体系になっていることも多く、10人までは安価でも、それを超えた利用では段階的に大きな費用となるケースは多い。ユーザーが増えても最適な価格体系となるかを、あらかじめ検討しておく必要がある。
また、ユーザー数が増えれば、性能の問題も発生する。さらには社内利用でも部門をまたがるような場合は、適切なアクセス制御ができているかなどセキュリティのチェックも必要だ。そのため、選択するローコードアプリケーションプラットフォームは、使い勝手や開発の生産性だけに注目するのではなく、ガバナンス管理やセキュリティチェック、パフォーマンスの監視など、利用が拡大した際に必要な機能が揃っているかも評価する必要がある。
プロの開発者の場合、当初はプログラミング作業を効率化できればいいとの基準でツールを選ぶかもしれない。しかし例えば、レガシーシステムのマイグレーションなどで利用するとなれば、既存の数千規模のアプリケーションに対するモダナイズとなり、扱うモジュールの数が元の数倍になることもあるだろう。そうなれば、複数の人が開発する数多くのアプリケーションを効率的に管理でき、ガバナンスやセキュリティの担保についても配慮できるツール製品を選ぶこととなる。
しかし、現状でAIから生成されるものは、まだまだ不具合も多くそのデバッグ作業にむしろ手間のかかるケースが多い。とはいえ「要求に対しこのクラスのライブラリを使えばいいといったことを、生成AIは分かっている。まだ正確性には欠けるが、いずれは進化するだろう」とリオアナリストは展望する。生成AIを使えば、今でも何かしらのアウトプットは得られる。しかし正確性や信頼性が担保できない。ローコード開発でこのハードルを越えるには、まだ多少時間がかかりそうだ。
英語で記述するとそれに対応するSQL文を出力する生成AIなどは、既に登場しつつある。そのようなものは、プロの開発者であれば出力されたコードの正確性やセキュリティをチェックでき、便利に使えるかもしれない。とはいえ、本番環境用に生成AIの出力を活用できるような開発者は、相当な開発スキルを持った人だろう。市民開発者には、かなり難しいものがある。
注目の生成AIが、直ちにローコード開発ツールの世界を駆逐し、市場を破壊するとはならなさそうだ。しかし生成AI技術の取り込みには、どのベンダーも高い関心を示しており、23年の後半にはベータ版的に試せるものもいくつか出てきそうだ。
今後ローコード開発のツールベンダーが生き残るには、市場でしっかりと存在感を示す必要がある。そのときに重要となるのが、ユーザー企業からの開発を請け負う、SIerなどのパートナーの存在だ。彼らが開発業務などを委託された際に、どのローコード開発ツールを使って生産性を向上させるのか。グローバルで活躍する大手のコンサルティング会社でも、既にローコード開発ツールの利用は当たり前になっている。彼らに選ばれることは、今後の戦略では重要となる。
国内では内製化の必要性が指摘されていても、現実的にはSIerなどに依存する体質は大きく変わっていない。そのためSIerが採用することが、日本のローコード開発ツールの市場で存在感を示すためにかなり重要となる。グローバルなローコード開発ツールのベンダーもSIerの重要性は認識しており、国やリージョンごとに独自のパートナー戦略を打ち立てている例は多い。
「今後ローコード開発ツールのベンダーは、SI企業とのエコシステムが作れないと生き残れないだろう」ともリオアナリストは言う。24~27年にかけ、ローコード開発ツールのベンダーはかなり収れんされるとガートナーは予測する。生き残れるのは、専門性が高く特定のニーズにフォーカスしたものだ。さらにはパートナーのエコシステムに、きっちりと組み込まれたものだろう。
一方、ユーザー側では、どのようなユースケースでローコード開発ツールを使いたいかを明確にする必要がある。その際、先に紹介したローコード開発を活用する四つのペルソナを念頭に置き、自社はどういった開発者を抱え、アプリケーションを開発していくのかをしっかりとイメージするのがよさそうだ。
(取材・文/谷川耕一 編集/日高 彰)

2桁成長続くローコード開発市場
ローコード開発には、紙ベースで行っている承認ワークフローをデジタル化するといったシンプルなものもあれば、スマートフォン向けのバンキングアプリケーションのように複雑でシビアなトランザクション処理を含むようなアプリケーションを、コードをあまり書かずに実現できるようにするツールもある。
現状のローコード開発の主流は、複雑なものよりはシンプルなアプリケーションの構築において、生産性を向上するのに向いている。これは米Microsoft(マイクロソフト)のローコードプラットフォーム「Power Apps」に代表される領域だ。一方で、「開発のプロが使うような複雑な処理をセキュアに構築するようなものの実現は、まだ難しいところがある」と言うのは、ガートナーのアプリケーション・グループに所属するバイスプレジデントのエイドリアン・リオ・アナリストだ。
ローコード開発の技術を使うユーザーの想定属性は、「市民開発者」と「プロの開発者」の二つに大別でき、さらに市民開発者は一般的な「ビジネス」と、ある程度データやビジネスプロセスを構造的に理解した「テクニカル」に、プロの開発者はJavaやC#などで業務システム開発を担う「ゼネラリスト」と、モバイルアプリやAR/VRなど特定の領域に携わる「スペシャリスト」に分けられる。最もシンプルなものを開発するビジネス領域の市民開発者は、主にマウスの操作などの画面遷移だけで実現できるようなアプリケーションを作る。この場合は開発の知識やノウハウがほとんどなくても構築できる。ツールのユーザー層としては最もボリュームが大きいところだ。
一方、プロの開発者は、これまでローコード開発ツールを使わなかったが、ガートナーのリオアナリストは「彼らは、ローコード開発ツールは仕事では使えないと思っていたが、最近、その状況が変わってきた」と指摘する。プロの開発者も使うに値する機能が実装され、利用すれば一からコードを書くよりも効率的だと分かってきたのだ。
さらに、セキュリティのチェックや頻繁に更新する際のドキュメント管理など、人手ではもはや対応しきれないニーズにも、ローコード開発のツールで容易に対応できる。それもプロの開発者に利用が広がりつつある要因だろう。そのためツールベンダーも、最近はプロの開発者向けの製品や機能に力を入れ始めている。
ガートナーは、ローコードのアプリケーションプラットフォームのプレイヤーは200を超えているとみている。この場合のプラットフォームとは、データを格納するデータベースを基にしてアプリケーションを構築できるようにしたものや、ユーザーインターフェースなどのユーザーエクスペリエンス(UX)をデザインし構築するもの、ビジネスのルールやロジックを機能として実現するもの、さらにはワークフローを簡単に構築できるものなど、多くの機能を網羅した統合環境を指す。
このローコードのアプリケションプラットフォームに加え、UXデザインだけ、ワークフロー機能だけなどシンプルな機能を提供するツールもあり、それらを加えればプレイヤー数は400を超える。ちなみに、このように多くのローコード開発ツールのベンダーがある中、有力ベンダーの市場ポジションをガートナーがまとめているレポート「マジック・クアドラント」において、22年版のローコードアプリケーションプラットフォームカテゴリーで取りあげているのは17社しかない。 中でもリーダーに位置づけているのは、ポルトガルOutSystems(アウトシステムズ)、マイクロソフト、オランダMendix(メンディックス)、米Salesforce(セールスフォース)、米ServiceNow(サービスナウ)の5社だけだ。
ガートナーが26年に445億ドルになると予測するローコードテクノロジーの市場には、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やBPA(ビジネスプロセスオートメーション)、MXDP(マルチエクスペリエンス開発プラットフォーム)、CADP(シチズンオートメーションと開発プラットフォーム)なども含まれる。これらの中で、ローコードアプリケーションプラットフォームの割合が最も大きく、「全体よりも高い23.6%の年平均成長率となっている」ともリオアナリストは言う。
アプリ数やコストの増大が課題
ローコード開発には課題もある。市民開発者を増やしたことで、アプリケーションの数が増え、ガバナンスの確保が新たな問題となっている。「従来のウォーターフォール型では、開発のフェーズごとにガバナンスの管理が可能だった。ローコードではそれがない。数週間トレーニングを受ければ、市民開発者は数カ月で数十のアプリケーションを作るようになる。しかし、作ったものの8割はその後、使われないだろう」とリオアナリストは話す。メンテナンスされないアプリが増え、それが攻撃者からのターゲットとなりセキュリティリスクになることもある。数が少なくシンプルなアプリケーションであれば、作った人が自ら管理するセルフガバナンスでもなんとかなる。しかし数が多くなれば、市民開発者が開発するアプリケーションを、組織として管理するガバナンスのフレームワークが必要だ。
ほかにも、市民開発者が構築したアプリケーションの利用者数が増えることで発生する問題もある。自分用に作ったものを周辺の2~3人にシェアして使う程度では問題がなくても、部門の数十人で使う、さらには組織全体の数百人で使うとなれば新たな問題が発生する。ローコード開発ツールのライセンスがユーザー単位の場合は、階層型の費用体系になっていることも多く、10人までは安価でも、それを超えた利用では段階的に大きな費用となるケースは多い。ユーザーが増えても最適な価格体系となるかを、あらかじめ検討しておく必要がある。
また、ユーザー数が増えれば、性能の問題も発生する。さらには社内利用でも部門をまたがるような場合は、適切なアクセス制御ができているかなどセキュリティのチェックも必要だ。そのため、選択するローコードアプリケーションプラットフォームは、使い勝手や開発の生産性だけに注目するのではなく、ガバナンス管理やセキュリティチェック、パフォーマンスの監視など、利用が拡大した際に必要な機能が揃っているかも評価する必要がある。
プロの開発者の場合、当初はプログラミング作業を効率化できればいいとの基準でツールを選ぶかもしれない。しかし例えば、レガシーシステムのマイグレーションなどで利用するとなれば、既存の数千規模のアプリケーションに対するモダナイズとなり、扱うモジュールの数が元の数倍になることもあるだろう。そうなれば、複数の人が開発する数多くのアプリケーションを効率的に管理でき、ガバナンスやセキュリティの担保についても配慮できるツール製品を選ぶこととなる。
期待される生成AIの活用はまだこれから
ところで、昨今生成AIが大きく注目されており、既存のさまざまなソフトウェア製品にその技術が取り込まれつつある。ローコード開発のツールに、生成AIはどのようなインパクトを与えるのか。リオアナリストは「生成AIがインパクトを与えるには、まだ数年かかるとみている」と言う。現状のローコード開発ツールの多くが、ソフトウェア部品を組み合わせることでコードを書かずにアプリケーションを構築できるようにしている。生成AIが洗練されてくれば、プロンプト(指示や質問の文)で作りたいものをツールに伝え、自動で部品を組み合わせて求める機能を実現できるかもしれない。しかし、現状でAIから生成されるものは、まだまだ不具合も多くそのデバッグ作業にむしろ手間のかかるケースが多い。とはいえ「要求に対しこのクラスのライブラリを使えばいいといったことを、生成AIは分かっている。まだ正確性には欠けるが、いずれは進化するだろう」とリオアナリストは展望する。生成AIを使えば、今でも何かしらのアウトプットは得られる。しかし正確性や信頼性が担保できない。ローコード開発でこのハードルを越えるには、まだ多少時間がかかりそうだ。
英語で記述するとそれに対応するSQL文を出力する生成AIなどは、既に登場しつつある。そのようなものは、プロの開発者であれば出力されたコードの正確性やセキュリティをチェックでき、便利に使えるかもしれない。とはいえ、本番環境用に生成AIの出力を活用できるような開発者は、相当な開発スキルを持った人だろう。市民開発者には、かなり難しいものがある。
注目の生成AIが、直ちにローコード開発ツールの世界を駆逐し、市場を破壊するとはならなさそうだ。しかし生成AI技術の取り込みには、どのベンダーも高い関心を示しており、23年の後半にはベータ版的に試せるものもいくつか出てきそうだ。
小規模ベンダーが飲み込まれる動きも
話題を集め拡大するローコード開発の市場だが、既に一部のプレイヤーでは淘汰も始まっているとリオアナリストは指摘する。市民開発向けのシンプルなアプリケーションを構築するような領域は、プレイヤーも多く競争が激しい。今後は大手が小規模のスタートアップのプレイヤーを吸収する、あるいはソフトウェアベンダーが、カスタマイズなどの機能を強化するためにローコードツールを買収するといった動きが活発化する可能性は高い。今後ローコード開発のツールベンダーが生き残るには、市場でしっかりと存在感を示す必要がある。そのときに重要となるのが、ユーザー企業からの開発を請け負う、SIerなどのパートナーの存在だ。彼らが開発業務などを委託された際に、どのローコード開発ツールを使って生産性を向上させるのか。グローバルで活躍する大手のコンサルティング会社でも、既にローコード開発ツールの利用は当たり前になっている。彼らに選ばれることは、今後の戦略では重要となる。
国内では内製化の必要性が指摘されていても、現実的にはSIerなどに依存する体質は大きく変わっていない。そのためSIerが採用することが、日本のローコード開発ツールの市場で存在感を示すためにかなり重要となる。グローバルなローコード開発ツールのベンダーもSIerの重要性は認識しており、国やリージョンごとに独自のパートナー戦略を打ち立てている例は多い。
「今後ローコード開発ツールのベンダーは、SI企業とのエコシステムが作れないと生き残れないだろう」ともリオアナリストは言う。24~27年にかけ、ローコード開発ツールのベンダーはかなり収れんされるとガートナーは予測する。生き残れるのは、専門性が高く特定のニーズにフォーカスしたものだ。さらにはパートナーのエコシステムに、きっちりと組み込まれたものだろう。
一方、ユーザー側では、どのようなユースケースでローコード開発ツールを使いたいかを明確にする必要がある。その際、先に紹介したローコード開発を活用する四つのペルソナを念頭に置き、自社はどういった開発者を抱え、アプリケーションを開発していくのかをしっかりとイメージするのがよさそうだ。
ローコード開発ツールは、ユーザー企業によるアプリケーション内製化の需要に加えて、経験値の高い開発エンジニアの生産性向上にも利用されている。米調査会社Gartner(ガートナー)は、ローコード開発テクノロジーに対する全世界の支出は2026年までに445億ドルまで拡大し、21年から26年までの年平均成長率は19.2%と予測する。今後も利用は進む見通しだが、ツールの誤用や過剰使用の増大、アプリケーションの無秩序な増加など、さまざまな問題点もはらんでいる。
(取材・文/谷川耕一 編集/日高 彰)
ガートナー エイドリアン・リオ アナリスト
現状のローコード開発の主流は、複雑なものよりはシンプルなアプリケーションの構築において、生産性を向上するのに向いている。これは米Microsoft(マイクロソフト)のローコードプラットフォーム「Power Apps」に代表される領域だ。一方で、「開発のプロが使うような複雑な処理をセキュアに構築するようなものの実現は、まだ難しいところがある」と言うのは、ガートナーのアプリケーション・グループに所属するバイスプレジデントのエイドリアン・リオ・アナリストだ。
ローコード開発の技術を使うユーザーの想定属性は、「市民開発者」と「プロの開発者」の二つに大別でき、さらに市民開発者は一般的な「ビジネス」と、ある程度データやビジネスプロセスを構造的に理解した「テクニカル」に、プロの開発者はJavaやC#などで業務システム開発を担う「ゼネラリスト」と、モバイルアプリやAR/VRなど特定の領域に携わる「スペシャリスト」に分けられる。最もシンプルなものを開発するビジネス領域の市民開発者は、主にマウスの操作などの画面遷移だけで実現できるようなアプリケーションを作る。この場合は開発の知識やノウハウがほとんどなくても構築できる。ツールのユーザー層としては最もボリュームが大きいところだ。
一方、プロの開発者は、これまでローコード開発ツールを使わなかったが、ガートナーのリオアナリストは「彼らは、ローコード開発ツールは仕事では使えないと思っていたが、最近、その状況が変わってきた」と指摘する。プロの開発者も使うに値する機能が実装され、利用すれば一からコードを書くよりも効率的だと分かってきたのだ。
さらに、セキュリティのチェックや頻繁に更新する際のドキュメント管理など、人手ではもはや対応しきれないニーズにも、ローコード開発のツールで容易に対応できる。それもプロの開発者に利用が広がりつつある要因だろう。そのためツールベンダーも、最近はプロの開発者向けの製品や機能に力を入れ始めている。
ガートナーは、ローコードのアプリケーションプラットフォームのプレイヤーは200を超えているとみている。この場合のプラットフォームとは、データを格納するデータベースを基にしてアプリケーションを構築できるようにしたものや、ユーザーインターフェースなどのユーザーエクスペリエンス(UX)をデザインし構築するもの、ビジネスのルールやロジックを機能として実現するもの、さらにはワークフローを簡単に構築できるものなど、多くの機能を網羅した統合環境を指す。
このローコードのアプリケションプラットフォームに加え、UXデザインだけ、ワークフロー機能だけなどシンプルな機能を提供するツールもあり、それらを加えればプレイヤー数は400を超える。ちなみに、このように多くのローコード開発ツールのベンダーがある中、有力ベンダーの市場ポジションをガートナーがまとめているレポート「マジック・クアドラント」において、22年版のローコードアプリケーションプラットフォームカテゴリーで取りあげているのは17社しかない。 中でもリーダーに位置づけているのは、ポルトガルOutSystems(アウトシステムズ)、マイクロソフト、オランダMendix(メンディックス)、米Salesforce(セールスフォース)、米ServiceNow(サービスナウ)の5社だけだ。
ガートナーが26年に445億ドルになると予測するローコードテクノロジーの市場には、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やBPA(ビジネスプロセスオートメーション)、MXDP(マルチエクスペリエンス開発プラットフォーム)、CADP(シチズンオートメーションと開発プラットフォーム)なども含まれる。これらの中で、ローコードアプリケーションプラットフォームの割合が最も大きく、「全体よりも高い23.6%の年平均成長率となっている」ともリオアナリストは言う。
(取材・文/谷川耕一 編集/日高 彰)

2桁成長続くローコード開発市場
ローコード開発には、紙ベースで行っている承認ワークフローをデジタル化するといったシンプルなものもあれば、スマートフォン向けのバンキングアプリケーションのように複雑でシビアなトランザクション処理を含むようなアプリケーションを、コードをあまり書かずに実現できるようにするツールもある。
現状のローコード開発の主流は、複雑なものよりはシンプルなアプリケーションの構築において、生産性を向上するのに向いている。これは米Microsoft(マイクロソフト)のローコードプラットフォーム「Power Apps」に代表される領域だ。一方で、「開発のプロが使うような複雑な処理をセキュアに構築するようなものの実現は、まだ難しいところがある」と言うのは、ガートナーのアプリケーション・グループに所属するバイスプレジデントのエイドリアン・リオ・アナリストだ。
ローコード開発の技術を使うユーザーの想定属性は、「市民開発者」と「プロの開発者」の二つに大別でき、さらに市民開発者は一般的な「ビジネス」と、ある程度データやビジネスプロセスを構造的に理解した「テクニカル」に、プロの開発者はJavaやC#などで業務システム開発を担う「ゼネラリスト」と、モバイルアプリやAR/VRなど特定の領域に携わる「スペシャリスト」に分けられる。最もシンプルなものを開発するビジネス領域の市民開発者は、主にマウスの操作などの画面遷移だけで実現できるようなアプリケーションを作る。この場合は開発の知識やノウハウがほとんどなくても構築できる。ツールのユーザー層としては最もボリュームが大きいところだ。
一方、プロの開発者は、これまでローコード開発ツールを使わなかったが、ガートナーのリオアナリストは「彼らは、ローコード開発ツールは仕事では使えないと思っていたが、最近、その状況が変わってきた」と指摘する。プロの開発者も使うに値する機能が実装され、利用すれば一からコードを書くよりも効率的だと分かってきたのだ。
さらに、セキュリティのチェックや頻繁に更新する際のドキュメント管理など、人手ではもはや対応しきれないニーズにも、ローコード開発のツールで容易に対応できる。それもプロの開発者に利用が広がりつつある要因だろう。そのためツールベンダーも、最近はプロの開発者向けの製品や機能に力を入れ始めている。
ガートナーは、ローコードのアプリケーションプラットフォームのプレイヤーは200を超えているとみている。この場合のプラットフォームとは、データを格納するデータベースを基にしてアプリケーションを構築できるようにしたものや、ユーザーインターフェースなどのユーザーエクスペリエンス(UX)をデザインし構築するもの、ビジネスのルールやロジックを機能として実現するもの、さらにはワークフローを簡単に構築できるものなど、多くの機能を網羅した統合環境を指す。
このローコードのアプリケションプラットフォームに加え、UXデザインだけ、ワークフロー機能だけなどシンプルな機能を提供するツールもあり、それらを加えればプレイヤー数は400を超える。ちなみに、このように多くのローコード開発ツールのベンダーがある中、有力ベンダーの市場ポジションをガートナーがまとめているレポート「マジック・クアドラント」において、22年版のローコードアプリケーションプラットフォームカテゴリーで取りあげているのは17社しかない。 中でもリーダーに位置づけているのは、ポルトガルOutSystems(アウトシステムズ)、マイクロソフト、オランダMendix(メンディックス)、米Salesforce(セールスフォース)、米ServiceNow(サービスナウ)の5社だけだ。
ガートナーが26年に445億ドルになると予測するローコードテクノロジーの市場には、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やBPA(ビジネスプロセスオートメーション)、MXDP(マルチエクスペリエンス開発プラットフォーム)、CADP(シチズンオートメーションと開発プラットフォーム)なども含まれる。これらの中で、ローコードアプリケーションプラットフォームの割合が最も大きく、「全体よりも高い23.6%の年平均成長率となっている」ともリオアナリストは言う。
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