──2024年はTISインテックグループにとってどのような年だったか。
金融分野の大型案件の収束による反動減で、24年度上期(24年4~9月)の期初計画は減益だったが、産業分野や自社ソリューションを軸としたオファリング分野などほかの事業部門の努力によって増収増益で着地できた。金融分野も大型商談が進行中で、26年度までの3カ年中期経営計画の売上高目標6200億円、営業利益率13.1%に向けてまずまずのスタートが切れた。
岡本安史
代表取締役社長
──今後、伸びが期待できる事業領域はどこか。
生成AIの活用や世界規模のサプライチェーン構築、キャッシュレス化の一層の進展など、最先端のデジタル技術を駆使する場面は確実に増える。当社は先端デジタル分野の需要を積極的につかんでいくのはもちろん、既存の基幹システムを刷新する需要も重要視している。
基幹システムにおいては、脱ホスト、COBOL言語からJavaへ変換、クラウド移行、AIなど外部システムと連携するAPIの新設など継続的な手直しを行わなければ、先端デジタルをうまく活用できない。先端デジタルの活用が進めば進むほど基幹システム刷新需要は大きくなり、おそらく30年頃まで右肩上がりで伸びるとみている。
開拓者精神を育てていく
──25年をキーワードで表すと何か。
「開拓者になる」をキーワードとしたい。前中計まで重点事業の一つとして掲げていた「フロンティア市場創造ビジネス」は非常にハードルが高く、ある程度予想はしていたものの、このままでは立ち行かない状況だった。今中計では「社会課題へのアプローチ強化」と「共創型ビジネスの促進」の二つに分け、より具体的にテーマを絞った上でフロンティア市場の開拓を継続していくことにした。
当社はクレジットカードなどの決済分野に強みを持つため、例えば社会課題の解決ではスマートシティ構想の決済部分で役割を果たしたり、共創型ビジネスでは顧客企業などとの業際的な枠組みの中で新しい価値創造に努めたりすることを想定している。テーマを絞りつつも、新しい市場の開拓者になるという精神を大切に育てていく。
──既存事業だけでは十分な成長は期待できないと。
そうだ。鉄道や旅客機、家電などあらゆる製品やサービスは特別なものではなくなり、一般化してきた歴史がある。ITはコモディティー化の速度が非常に速く、今は特別視されている生成AIもあっという間に当たり前の存在になる。そうした中で勝ち残っていくにはフロンティア精神を発揮し、常に新しい価値創造に努めていくことが欠かせない。