PHRに特化した事業者のみならず、大手SIerがPHRに取り組む例も出ている。PHR領域において活用されている製品の一つが、BIPROGYの分散型パーソナルデータ連携基盤「Dot to Dot」だ。元々Dot to DotはBIPROGYが三井不動産との共同開発により、20年に柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)において、生活者が所有するパーソナルデータを本人の意思に基づき、業種・業界を横断して安全に流通させることを可能とするプラットフォームとして提供を開始した。ヘルスケアに限らず、さまざまな領域に対して提案活動を行ってきたが、PHRとの親和性が高いことから、PHR関連の領域で活用されているという経緯がある。
現在まさにPHR領域でDot to Dotが活用されている事例として、25年4月から10月まで開催されている「大阪・関西万博」が挙げられる。「大阪ヘルスケアパビリオン」においてDot to Dotを現物協賛として提供しており、来館者のデータとヘルスケアパビリオンに協賛する各企業のデータやサービスを連携させ、大阪ヘルスケアパビリオンにおける体験型コンテンツの提供を可能にしている。
体験型コンテンツでは、JR西日本が開発した「カラダ測定ポッド」で脈拍や血管年齢などを測定し、来館者のPHRを取得する。その後来館者にPHRをフィードバックする際には、25年後の自分の姿がアバターとして表示されるほか、さまざまな観点から細かくランク付けされたPHRの測定結果を確認できる。フィードバック後には、取得したPHRを基に、企業ブースで提供されるケア体験のレコメンドを受けることができる。このようにPHR取得からフィードバック、ケア体験の提供までの一連のデータ連携をDot to Dotが担っている。
PHR領域におけるDot to Dotの活用は万博会期中のみにとどまらず、サービスモデル全体を万博終了後にも引き継ぎ、社会実装を進める。万博での体験型コンテンツの提供は10月に終了するが、BIPROGY、JR西日本、博報堂の3社からなるPHRコネクト共同企業体が、「ミライのヘルスケア活動サポート事業」を実施する。この事業においては、カラダ測定ポッドを鉄道の駅に設置し、生活者がデータを継続的に計測できるようにする。現在すでに大阪駅や新大阪駅、天王寺駅などに数台が置かれており、今後も設置場所は拡大する予定で、駅以外の場所への設置も検討するという。
また、25年夏からは、BIPROGYのほか、ウェルクル、Arteryex、三井不動産、UDCKタウンマネジメントが共同で、PHRに基づいた健康アドバイスを提供する生活者向けのサービスを展開する予定。具体的には、Arteryexの健康管理アプリ「パシャっとカルテ」を用いて、スマートフォンで健康診断の書類などを撮影しアップロードすることで、ウェルクルのPHR解析システム「W(ダブリュー)」が分析した判定結果や健康アドバイスを、パシャっとカルテ上で確認できる。BIPROGYのDot to Dotは、パシャっとカルテとW間のデータ連携基盤としてサービスを下支えする。