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<NEC事例特集> ジョブ管理市場を活性化させる3社の協業 NEC、中央システム、日本ヒューレット・パッカードの取り組みとは

2007/11/28 15:49

週刊BCN 2007年11月26日vol.1213掲載

 『WebSAM JobCenter』は、WebSAMシリーズのジョブ管理製品で、金融、キャリア系など大規模ミッションクリティカルシステムへの豊富な導入実績を持つ。昨今、操作性の高さや内部統制といった観点からもSMB市場で注目され、シェアを伸長させている。『JobCenter』の強みと、SMB市場を狙った拡販施策について、NECと中央システム、日本ヒューレット・パッカードの3社に聞いた。


■操作性が高く、柔軟なジョブ定義が魅力

 NECでは、複数のサーバに分散された業務を顧客環境にあわせ、柔軟に自動制御する『WebSAM JobCenter』を提供している。定型業務をフロー図で示すことで、業務処理の流れを視覚的に把握でき、業務の進行状況が色別に表示されるため、業務の進行に支障となる障害の発生も迅速に発見できる。さらに、複雑なジョブの流れを画面上で簡単に設定でき、突発的なジョブの保留やスキップなどの処理にも対応できる。ジョブ運用の自動化を行うことにより、人的なミスを削減すると同時に、大幅に運用コストを低減することにも成功している。「『JobCenter』は、スモール、ミッドレンジといったシステムから超大規模なシステムまで、幅広くお使いいただいているツールです。中小規模では主にバックアップのほか、帳票印刷をスケジューリングし自動実行するといった用途で使われています」と、NECの第一システムソフトウェア事業部(運用管理グループ)・主任の垣内宏文氏は語る。

■企業規模を問わず活用できるジョブ管理ツール

 『JobCenter』は、日本ヒューレット・パッカードにも相手先ブランドによる生産(OEM)供給されており、「HP Software」のジョブ管理ソリューションとしても提供されている。

 「2004年から『JobCenter』をNECよりOEM供給を受け『HP JobCenter software』の名称で販売しております。これまで、当社のラインアップにジョブ管理ツールはありませんでしたが、『JobCenter』を扱うことで、これまで以上に多くのお客様のニーズに応えられるようになりました。また、当社の提供しているソリューションと組み合わせると、これまで別々に管理していたサーバやネットワークとジョブを一元的に管理できるようになります」と、日本ヒューレット・パッカードのソフトウェア事業本部・マーケティング部の横井浩二氏。

 『JobCenter』は、Windows、UNIX、Linuxなどが混在するマルチプラットフォーム環境のジョブの一元管理や業務の停止が許されないクラスタ環境においてもジョブを自動運用できるため、顧客の業務内容やシステム環境を問わず、最適なインフラ構築が可能になる。実際に、中堅・中小規模企業から大企業に至るまでの導入実績がある。

 また、大規模システムで活用されている「HP Integrity NonStop サーバ」でも『JobCenter』が活用されており、ミッションクリティカルな環境でのジョブ管理にも対応している。

 日本ヒューレット・パッカードにとって『HP JobCenter software』は、HP Softwareとの親和性の高さと、ミッションクリティカルな用途で使われる「HP Integrity NonStop サーバ」で実行できることが、『WebSAM JobCenter』との大きな差別化ポイントとなっている。

 日本ヒューレット・パッカードでは、メインフレームから移行する際に、『JobCenter』をジョブ管理の標準的なツールとして訴求し、導入事例拡大をめざしている。「従来、メインフレームでジョブ管理をしていた企業が、オープン系システムに移行するときに必要なツールとして提案しています。オープンシステム移行後のジョブ管理環境を担うという観点でも、『JobCenter』への期待は大きいですね」(横井氏)。

■ジョブ管理を行うためのプラットフォームの構築を支援

 中央システムは、高品質・高信頼性、安定したシステムの提供と、IT環境を適切に保つことをミッションとして、企業活動に必要な情報基盤のシステム設計・開発を柱に展開している。1996年には運用管理部門を立ち上げ、「運用管理」をキーワードにSI事業を展開している。

 「サービスとしては、ITILベースでお客様のIT環境を診断し、改善のお手伝いをするサービスに加え、 “HP Software”、“PATROL”といったさまざまな運用管理ツールの導入支援サービスなど、幅広く扱っており、定型業務や業務アプリケーションを自動運用する『JobCenter』についても、豊富な導入経験を持っています」と、中央システムの第一営業本部・運用管理ソリューション営業部・テクニカルコンサルタントの永島二郎氏は語る。

 「当社は、お客様が『JobCenter』を使い、ジョブ管理を行うためのプラットフォームを構築する部分でお手伝いさせていただいています。インストールからテストジョブの登録・実行確認など、初期設定まで行い実行環境のベースを作るほか、もともとの開発系の強みを生かし、周辺ツールの開発も行っています」(永島氏)。

 中央システムでは、今回の協業により、NECのパートナー制度「WebSAM WORKS」に加盟し、従来の『HP JobCenter Software』としての導入支援に加えて、『WebSAM JobCenter』としても導入支援を始める。さらに、新たな取り組みとして、ほかのジョブ管理ツールから『JobCenter』への移行を支援する『移行サービス』を提供していく。ジョブ管理ツールで一度環境を構築してしまうと、ほかのツールに移行することは非常に難しい。複雑なジョブからなる業務がどういった動作をしているのかがわからないまま運用している顧客企業も少なくないからだ。

 そのため、作り直しを行おうとすると、その工数は膨大になり、実際の稼働までの期間が非常に長くなる。また、旧来のジョブ管理ツールと新しいジョブ管理ツールを熟知しなければ、移行作業に入ることも難しいという課題もある。さらに、ジョブ管理ツールの移行に伴い、「機能の差分」といった課題や人手による作業ではどうしても「ミス」が起きてしまい、システムに障害が起きる可能性も無視できない。

 「当社が提供しようとしているサービスは、これまでのジョブをツールで変換し、短い期間で“もれ”のない移行を支援します。ジョブ管理ツールの実績も多数あり、ノウハウも蓄積していますので、移行作業をアウトソースすることで、工数低減が図れて、お客様の負担も軽くなります」(永島氏)。

 

中央システム


システムインテグレーション&ITサービス
マネージメントカンパニーを目指す

 中央システムは1981年に設立された企業で、06年度末決算で42億9000万円の売上高を記録している。同社は、「Availability Centric Computing」をミッションとし、高品質・高信頼な安定したInformation Lifelineを確保する仕組みを提供している。同社は、20年にわたる半導体システム経験を積み、その他、製造業向けシステム開発、Web系システム開発、運用監視ソリューションサービスの提供などを行っている。「HP Softwareサービス」については、基本インストールやカスタムインストールのほか、導入設計支援、導入実装支援、各種システム構築支援などを行っている。生産管理、流通、物流、通信、販売、会計、金融、人事システムなど業種や業務を問わず品質の高いシステムが提供できる開発体制も確立している。

■アウトソースを利用し「移行」も容易に

 中央システムは、現状のジョブ管理ツールに何らかの不満や課題を抱えている顧客に対し、『JobCenter』へ「移行」する仕組みを提供する。「ほかのツールを使っているお客様が、新しいツールのトレーニングを受け、検証などを行いながら、1つ1つのジョブを移行していく、というステップをアウトソースできるメリットは大きいと思います。特に、SIにリソースを確保できない場合には、非常に魅力的なサービスとなるでしょう」と永島氏。

 『JobCenter』が注目されているのは、ジョブ管理の運用効果だけではない。内部統制の整備といった観点からも有用なツールとして訴求力を増しているのである。

 現在、日本版SOX法への対応が急務となっているが、売り上げ集計をはじめとする財務報告データの作成処理において「業務プロセスの信頼性の確保」「監査対応としてのプロセス変更記録の保存」が求められている。

photo 『JobCenter』は、これらの処理を実行させるジョブやスケジュールなどにおける、「作成/削除/実行、パラメータの修正」などの各操作について「いつ」「だれが」「どういった操作をしたのか」を自動記録し、ジョブ変更に関する証跡管理も行う。垣内氏は、「かつては、1つのユーザーアカウントを複数の作業者が共有するケースが多かったと思いますが、内部統制の観点からはこういったことは許されません。『JobCenter』では、構築や運用といった各フェーズで利用者ごとにユーザーやユーザーの権限を管理し、それにひも付いた行動証跡を残すことができます」と語った。

■新規市場としてSMB市場に注目

 「市場を広げるという観点から、SMB市場にも広く使っていただこうという思いがあります。今回のNEC様、中央システム様との協業で、SMB市場にテコ入れが図れたらと考えています」と、横井氏。

 またSMB市場について、垣内氏は「バックアップと業務系の夜間バッチが主軸になると思います。もちろん、バックアップソフトにもスケジュール管理は用意されていますが、業務全体を見る形でジョブ監視するようには作られていません。単なるバックアップだけではなく、関連業務の動きにあわせたスケジュールや自動実行ができるので、柔軟性という意味で『JobCenter』が選択されています」という。

 信頼性の高さも、無視できない。日本ヒューレット・パッカードでは、大手通信系企業の料金計算などに使うシステムで『JobCenter』が導入されていている。

 つまり、「ミスが許されない、ミッションクリティカルな業務で」(横井氏)使われているのだ。

 さらに中央システムでは、「本社と拠点間のファイル連携、いわゆるレプリケーションを取るときに利用されているお客様もいらっしゃいます。日次の営業データの集約などにも利用されているようです。こういったシステムでは、どこまで送信でき、どのファイルが送信できていないのかが明確になります」(永島氏)とのことだ。

 SMB市場では、システムが小規模となるため、人事システムや経理システムなどもパッケージソフトを使っているケースが多い。そのような小さなシステムの連携のためにツールを開発するのは、なかなか難しいというのが実情だ。しかし、『JobCenter』を活用すれば、容易にデータを連携させることができ、運用も容易となる。「SMB市場に対して、ジョブを実行する基盤となる環境を構築支援するサービスとして提案していきます。このサービスは、NEC様、日本ヒューレット・パッカード様と共同で提供していきます。お客様は、ジョブ管理を行いたいのであって、その環境構築に手間を取りたくないというのが本音です。確実に構築し、その部分をお手伝いいたします」(永島氏)。

 SMB市場は、人の入れ替わりも激しく、担当者が変わっても比較的わかりやすいツールが求められている。そういった市場に対しても『JobCenter』の果たす役割は大きい。

 今後、「WebSAM WORKS」の枠組みを活用し、さらなる相乗効果も期待できる。今まさに、NEC、中央システム、日本ヒューレット・パッカードという3社のパイオニアによって、SMBにおけるジョブ管理市場が創出されようとしているのだ。今後の展開に注目したい。(週刊BCN 2007年11月26日号掲載)
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