Special Issue

<特別企画 期待される企業像2008> 2008年はJ-SOX法の施行、Windows server 2008のリリースにより業界内問わず多大な変革の1年となる

2008/01/24 19:56

週刊BCN 2008年01月21日vol.1219掲載

Acer Inc. 時代の流れに応じてコアビジネスのイノベーションを推進

挑戦と創造による大いなる躍進 個性的な戦略展開が「Acer」の原動力

 1976年の創立以来、PC業界の発展に大きく貢献してきたAcer Inc.(以下、Acer)。時代の変化に伴い大きな転換を図った2000年以降、製造メーカーから世界が認めるコンピュータブランドへ、その進化が一段と加速した。世界ではHPやデルに次ぐトップメーカーとして君臨し、上位を脅かす存在にまで成長しているAcerだが、日本における認知はまだ発展途上。2008年に向けて、飛躍を目指す“知られざる企業”に迫ってみた。

■活躍の場は「台湾」から「世界」へ 2002年の事業改革を機に急成長

 世界の「Acerブランド」を確立してきたAcerは、1976年に台湾で創立、以来30年以上にわたって、台湾の情報産業の礎としてコンピュータ業界をリードしてきた。

 今日までの歴史を紐解くと、1982年に台湾初のパソコン「MicroProfessor-II」を発表。1987年にはブランド名を「Acer」に変更し、その名は世界へと浸透していくことになる。ブランディングと併せて、シングルチップCPU交換によるアップグレードを実現する「Chip Up Technology」など、世界初を生みだす高い技術力と戦略的なグローバル化により、Acerは世界で8番目のPCブランドへと成長を遂げていった。

 その後も、2000年から2002年におけるイノベーションでは、企業買収や資産売却によりポートフォリオを変更し、多製品から単一製品にコアビジネスを絞り込むことで、時代を先行して「選択と集中」のイノベーションを実現した。そして、Acerにとって2002年、大きなターニングポイントが訪れる。

 Acerは、人々のライフスタイルを強化するテクノロジーの提供を目指して新しい企業戦略を打ち出したのだ。製造部門を分離し、製造メーカーから世界に通用するIT製品とサービスを市場に提供する企業へとさらなる進化を遂げた。2002年以降は、独創的な製品戦略とコンセプトを掲げ、各社からOEM供給を受けることで、世界市場で急成長を遂げている。

 「台湾生まれ、欧州育ち」と形容される、台湾から世界を舞台に活躍の場を広げたAcer。その後の快進撃の始まりである。

■人と技術の融合に向けて「使いやすい未来」を発信

 Acerの成長には、緻密な戦略が隠されている。コンシューマを中心とした100%の「インダイレクト・セールス」がその一つだ。

 各社がダイレクトセールスという奔流に身を寄せる中、Acerでは6、7年前から販売店や販売会社を通じて間接的にユーザーに販売する「インダイレクト・セールス」を一貫してきた。他社とは一線を画したインダイレクト・セールスは、メーカー、販売店、ユーザーの3者に、価格、パフォーマンスのアドバンテージをもたらすビジネスモデルとして、Acerの優位性を確保している。

 また、PCメーカーは技術オリエンテッドが基盤となるが、Acerでは、次世代PC管理プラットフォーム「Empowering Technology」、さらにその先にある人と技術の間の障壁を取り除く「Empowering People」をコンセプトに掲げ、テクノロジーをいかに使いやすくするかに取り組んでいる。

 そのひとつの現れとして、使いやすさを考慮したデザインのPCやモニターがAcerから続々と誕生。7年連続Reader's Digest雑誌が選ぶアジアのコンピュータブランドの金賞をはじめ、英国やドイツ、アメリカ、日本などの雑誌で数々の賞を獲得している。

 現在の滑らかなカーブと優雅さを兼ね備えたノート型PCも、「使いやすい未来」を提案する、Acerからのメッセージといえるだろう。

■市場優位性を活かした「グローバル戦略」を展開

 Acerの活躍の場は、次のステップに移っている。

 2007年10月には、総額7億1000万ドルで米ゲートウェイ社を買収。さらに、米ゲートウェイ社がパッカード・ベル社の優先交渉権を行使したことで、パッカード・ベル社もAcerの傘下に入った。

 米国内で高い人気を誇る米ゲートウェイ社と欧州で個人向けパソコン事業を展開するパッカード・ベル社の買収、合併は、欧米といった強大な市場におけるAcerブランドの向上の強力な援軍となる。

 これまで、グローバル戦略を掲げてきたAcerは、世界第3位のPCメーカーの地位を盤石にし、文字通り、世界を舞台にした活動に一層拍車をかける。

■環境への配慮で社会に貢献 オリンピック・スポンサーに参加

 またAcerは、人にも環境にもやさしい企業であるため、低消費電力や使用する素材などにも配慮している。そうした取り組みは、第三者機関のレポートなどでも実証されており、今後も積極的に展開していく方針だ。

 また、2009年から2012年(2010年バンクーバー冬季、2012年ロンドン夏季)までオリンピックのワールドワイド公式スポンサー企業として、スポーツの発展を支援していく。現在、ITは企業のみならず、多方面で必要不可欠な基盤となっている。Acerはこうした社会に貢献した活動にも積極的に参加している。

 このように、個性的な戦略展開のもと、挑戦と創造による成長を遂げてきたAcer。今後の活躍に期待は高まるばかりだ。

Acer Inc. =http://www.acer.co.jp/corp/bcn/


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