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<ストレージ特集> 実績と信頼のある「テープ」に注目が集まる ストレージ市場にも「グリーンIT」の波

2008/02/07 19:56

週刊BCN 2008年02月04日vol.1221掲載

 IT投資が進み、基幹システムから業務システムまで多くのIT機器が導入されている。そのため、企業システムの停止は、ビジネスの停止に直結するようになった。多くの企業では、事業継続という観点からバックアップを必須とし、信頼性が高く、管理・運用しやすいソリューションが求められている。また、IT機器が消費する電力の増大も問題視されており、「グリーンIT」をキーワードとした市場も立ち上がりつつある。そのような市況において「テープ」が注目され始めている。

■IT投資が進み、扱う情報量も増大傾向

 経済産業省が2007年11月13日に公表した「平成18年情報処理実態調査結果報告書」によると、05年度末時点で、企業が保有する1社平均の情報処理関係資産は8.3億円となり、前年度比23.9%増となっている。内訳を見ると、ハードウェア資産が1.7億円(前年度比6.3%増)、ソフトウェア資産が6.6億円(前年度比29.4%増)となっており、ソフトウェア資産の伸長が著しい。

 基幹システムに加え、各種業務アプリケーションの導入など、企業のIT投資が進んでいる。これらの企業システムにより、業務効率の改善や生産性の向上が図られているが、扱うデータ量も増加している。経済産業省による試算では、社会の本格的なIT化に伴い、25年には121Tbps(テラビット/秒)と、06年に比べておよそ200倍という情報流通量になると予測されている。

■事業継続は最重要経営課題に

 現在、企業システムを流れている情報はビジネスの要となっている。何らかの障害により、企業システムの停止が余儀なくされれば、企業活動も停止してしまう。自社の信用失墜だけではとどまらず、顧客企業への損害や社会的な問題に発展する危険も考えられる。

 「事業継続計画策定ガイドライン」(経済産業省)、「事業継続ガイドライン第一版 ―わが国企業の減災と災害対応の向上のために―」(内閣府中央防災会議)などのガイドラインも相次いで発表され、事業継続管理(BCM:business continuity management)や事業継続計画(BCP:business continuity plan)への関心の高さがうかがえる。災害対策や事業継続といった観点から、それらの情報をいかに保護し、万が一の事態に備えることは、自社だけの問題ではなくなりつつある。

 もはや、バックアップやデータレプリケーションといったソリューションの導入は必須になっている。あらゆる手段で情報を適切に保存し、必要に応じて取り出せるような仕組み作りが求められている。さらに「個人情報保護法」や「金融商品取引法」などにより、情報に対するセキュリティの強化や信頼性の確保も必要となっており、法的側面からもデータ保護の必要性が生じているのだ。

 データレプリケーションを謳ったソリューションは、エンタープライズ市場を中心に導入されてきた。現在では、データの損失を最小限に抑えられるというメリットが認知され、中堅・中小規模企業でも導入する企業が増えている。

photo また、増え続けるIT機器は、消費電力の増大という新しい課題にも直面している。地球環境保全という側面から、消費電力を抑えつつ効率的なITを活用するための運動が盛んに行われている。

 そこで注目されているのが「テープ」である。「テープ」の歴史は古く、53年に世界初のコンピュータテープが開発されて以来、進化を続けている。その歴史からもわかるように多数の実績もある。信頼性の高さから、バックアップの最終的な保存場所として、活用されていることが多い。

 テープは、ほかのストレージと比べて、保管している時には電力を消費しないという特長がある。そのため、ディスクを用いたストレージと比べて、環境負荷を軽減できる。「グリーンIT」という観点からも注目され始めているのである。

 しかし、情報量の増加に伴い、テープの巻数も増加している。テープには、企業の機密情報が保管されており、紛失すると情報漏えい事故に直結し、適切な管理が必須となっている。その管理工数が大幅に増加しており、管理・運用コストの増大という新たな課題を生んでいる。メディアのライフサイクルを考慮した包括的なソリューションを提案する企業も出始めており、管理・運用を容易とし、管理工数・コストを削減しながら、地球環境に配慮したバックアップソリューションを構築することも可能となりつつある。

 先を見越したストレージソリューションが求められるなか、「テープ」というストレージに対し、新たなニーズが高まっているのは間違いない。
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イメーション メディアのライフサイクルを考慮したソリューション提案
サービス・サポートを付加価値に市場での訴求力を強化

 地球の温暖化が世界中で問題視されている。企業で導入が進むIT機器も膨大な電力を消費しており、地球環境保全という立場から、消費電力の削減が求められている。ストレージ市場においても同様で、低消費電力の「テープ」が注目されつつある。しかし、扱いが難しいといったイメージが強く、市場のすそ野を広げるまでには至っていない。イメーションは「テープ」を扱ううえで、顧客企業の課題を解決するソリューションを用意し、展開している。

■グリーンITの観点から省エネのテープに注目

 2007年8月、米イメーションがTDKブランド記録メディアの販売事業取得を完了したというニュースが流れた。国内においては、TDKマーケティングとイメーションが統合し、新たな一歩を踏み出した。そのイメーションが注力しているのは、テープを中心とするソリューション展開である。「現在、バックアップ市場では、“ハードディスク”と“テープ”という技術を核にしたソリューションのせめぎ合いが行われています。ハードディスクを用いたDisk To Diskのバックアップソリューションなども拡充されており、市場を大きく伸ばしています」と語るのは、コマーシャル製品・マーケティング部の西田博光部長だ。

 ハードディスクを核とした市場が伸長している一方、テープ市場はLTO(Linear Tape-Open)以外は縮小傾向にある。テープという可搬性の高いメディアのため、その管理や保管を適切に行わなければ、情報漏えいなどを引き起こす要因となりうる。情報漏えい対策、内部統制の強化が求められるなか、管理・運用しやすいハードディスクを活用したソリューションが選ばれているのである。しかし、ハードディスクを活用したソリューションにも課題がある。消費電力の問題だ。現在、地球環境の保全を目的とした、さまざまな活動が官民問わず行われている。ITにおいても「グリーンIT」をキーワードとする市場も立ち上がりつつある。

 経済産業省の「グリーンITイニシアティブ」によると、本格的なIT化に伴い、各種ITサービスが普及し、25年にはインターネット内の情報流通量が約200倍、消費電力は約5倍増大するとしている。実際、IT機器による消費電力が問題視され始めているデータセンターも多く、運用コストの低減を実現させようとする動きが顕著になっている。

 「テープの場合、データを保存するために電力を消費することはありません。環境にやさしいメディアとして再注目されています。ハードディスクを用いたソリューションと比べても、わずかな消費電力でデータを保管できます。グリーンITという視点から見ると、非常に優れたソリューションといえるでしょう。D2Dを使いながらも、最終的なデータの保管はテープで行うという使い方が、今後広がっていくことが予想されます」(西田部長)。

■顧客課題を解決するイメーションの提案

 グリーンITを推進するうえで、テープは欠かせない存在となる。しかしテープは、「不正持ち出し」「在庫目録」「入出庫管理」「搬送によるキズ」など、管理・運用面での課題が多い。イメーションでは、これらの課題に応えるべく、「テープ」を管理・運用するソリューションを拡充し、市場のすそ野を広げる活動を続けている。メディアの導入・運用・世代交代・データ廃棄などのフェーズでは、「Media-Life Cycle Management」として顧客企業の課題を解決するソリューションを提供しているが、これはその流れに沿ったものだ。その1つが、セキュリティタグサービスである。企業の情報漏えい対策が進んでいるなか、セキュリティタグを使ってテープメディアの持ち出しを監視し、「不正持ち出し」を禁止したいというニーズが顕著となっている。

 「そこで当社では、セキュリティゲートと組み合わせてテープメディアの持ち出しを監視するセキュリティタグサービスを行っています」(西田部長)。CMTについては、後からセキュリティタグを付けることが可能だが、LTOやDLTなどのテープメディアではカートリッジを開けてセキュリティタグを封入する必要がある。イメーションでは、メディア購入時にセキュリティタグを装着して納入するため、顧客企業の手間もかからない。さらに「持ち出されたテープが帰ってこない」「持ち出したログが追えない」という顧客企業の声に応え「在庫目録」「入出庫管理」の切り口から 「RFIDメディアシステム」を提供している。

 「バーコードによる管理では、1つ1つチェックする必要から、テープの巻数が増えるにともなって工数も増大していました。しかしRFIDを活用すれば、複数巻のテープを一挙に管理できるため、運用工数の大幅な削減が可能となります。実際、バーコード管理の時では2人で20日かかっていた作業が、RFIDを活用したら1人で1日しかかからなかったというお客様もいらっしゃいます」(西田部長)。

■顧客の悩みを可能な限り解決に導く

 イメーションでは、RFIDの読み取りアンテナや管理用端末など、RFIDによるテープの管理・運用に必要な装置一式を搭載した「RFIDワゴン装置システム」や、RFID付きのバーコードラベルを貼り付けるサービスを提供している。

 テープの搬送に使われている金属ケースだが、テープの周辺はクッション材で囲われ、テープの出し入れでチリ・ゴミが発生し、テープの記録面に付着してエラーが起きることが懸念されている。それらの声に応えるべく、テープカートリッジの保管・搬送用ケース「Data Guard」を開発・提供している。

 「“Data Guard”は、軍事用にも使われている技術を転用しています。耐衝撃性が高く、テープメディアにダメージを与えるゴミも出ません。また、水に浮くので水害などからも情報を守ることができます」(西田部長)とのことだ。ユーザーニーズに応え、サポート・サービスを充実させているイメーション。西田部長の「メディアに関する相談であれば、どんな小さなことでもご相談ください」という言葉通り、今後もユーザーの声に応えたソリューションを拡充していく。(週刊BCN 2008年2月4日号掲載)

イメーション=http://www.imation.co.jp/
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