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<オフィスプリンタ&スキャナ特集> 省スペース・低価格モデルの拡充で、小規模市場が活性化 セキュリティからデジタルペンまでソリューションが注目

2008/02/20 19:56

週刊BCN 2008年02月18日vol.1223掲載

 モノクロページプリンタからカラーページプリンタへの置き換えが進んでいる。これまで、モノクロで十分だと認識していた企業も、時にはカラーで印刷したいというニーズはあった。導入コストを抑え、そのニーズに応える製品が登場し、市場も一気に拡大したようだ。また、次のニーズを先取りすべく、新しいソリューションも登場し始めている。活性化するカラーページプリンタ市場の現状を追った。

■活用シーンを提案し、カラーニーズを掘り起こし

 カラーでの印刷物は、モノクロに比べると表現力が増し、訴求力が高まる。そのため、会議資料や客先への提案資料などのほか、販売店店頭のPOPなどでも活用されている。しかし、印刷コストの問題から、カラー印刷を制限している企業や基幹システムの出力用のプリンタではモノクロが根強く活用されているなどの理由から、オフィスプリンタにおいてカラー化が遅々として進んでこなかった。

 普段はモノクロプリンタとして活用しながら、用途に応じてはカラーで印刷するといった提案を行うことで、オフィスのカラー需要を喚起し、オフィスプリンタのカラー化を推進しているベンダーも登場したが、順調に売上げを伸ばしている。オフィスプリンタのカラー化は、新しいトレンドとして認知され始めているようだ。

 従来、オフィスには高速な複合機をセンターに配置し、運用してきた。これは、情報の入出力を1か所に集約することで、管理性を高めるという狙いがあったからだ。しかし、出力が集中した場合、印刷されるまでの待ち時間がかかるうえ、センターまで取りに行くまでの時間や手間も無視できない。また、重要な書類がほかの印刷物に混じってしまったり、置き忘れてしまった場合の情報漏えいリスクという課題もある。

 そのため、小型のプリンタや複合機を分散配置して生産効率を向上させようという動きが活発化している。この市場ニーズに応え、小規模で利用することを前提とした低価格プリンタが数多く投入されている。設置環境性の高い製品がトレンドとなっており、特に設置面積が少なく、本体が軽いタイプが注目されている。

 カラープリンタは、トナーだけ考えてもシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色が必要で、その構造上モノクロプリンタよりも大きくなりがちだ。しかし、モノクロプリンタのカラー化を推進するためには、これまでモノクロプリンタを設置していた場所にカラープリンタを設置するというケースを考慮しなければならない。そこで、技術の粋を集め、小型化を進めていく中で、モノクロプリンタ並の大きさのカラープリンタが各社から提供されるようになった。設置面積が少なくてすむため、窓口業務や店舗のバックヤードなどにも配置できるようになり、活用シーンを広げている。これらの提案が市場ニーズとマッチし、顕著な伸びを示しているのだろう。

 また、ビジネスインクジェットプリンタやジェルジェットプリンタといった新しい訴求も行われ始めた。これらは、オフィスで活用されることを前提に開発されているため、耐久性なども高く、サポート・サービスも充実している。また、低消費電力や省スペースを武器に新たな市場を開拓している。コンシューマ向けの製品とは一線を画しており、小規模の市場では、新たな選択肢として認知されている。

■ドキュメントソリューションでニーズを先取りした提案も

 05年に施行された「通則法:民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信技術の利用に関する法律」「整備法:民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」など、通称「e-文書法」により、従来では紙での保存が義務化されている文書・帳票の原本を、電子データで保存することができるようになった。

 これまで「紙」でしか保管していなかった情報を、電子文書・電子化文書として保管することにより、企業内の情報共有が容易で、ドキュメントを有効活用できる。さらに、文書・帳票などの印字・保存にかかるコストを大幅に削減でき、企業の生産性向上にもつながるため、スキャナのニーズが急速に高まっている。スキャニングした電子化データについては、解像度、階調、フルカラー、文書の大きさなど、一定の要件を満たす必要がある。そのため「e-文書法」に対応できる製品を利用する必要がある。既存のスキャナなどのリプレースも期待できるため、新たなビジネスチャンスとして注目されている。

 また、スキャナについてもプリンタ同様に、ニーズに合わせた最適な配置を求める声が高くなっており、小規模から大規模まで多くのラインアップが拡充されている。

 民間非営利団体である日本ネットワークセキュリティ協会の「2006年度 情報セキュリティインシデントに関する調査報告書 Ver.2.00」によると、情報漏えいの経路の43.8%が「紙媒体」となっている。情報漏えいリスクが一番高いのは「紙」なのである。

 もちろん、プリンタベンダー各社は、このような問題もすでに解決している。これまでプリンタで印刷するために特別な作業は必要なかった。しかし、最近では非接触ICカードによる認証が主流となっている。PCの認証ソリューションと連携し、さらに利便性を向上させる提案も行われている。このようにプリンタやスキャナというハードウェア単体だけではなく、ソリューションとして提供することで、新しい市場をつくり出しているのである。

 ドキュメントソリューションは、セキュリティだけにとどまらない。業種・業態に合わせたソリューションが拡充されている。例えば、基幹システムと複合機をダイレクトに連携させたシステムなども登場している。また、特殊な印刷を施した専用紙とデジタルペンを活用した、新しいソリューションの礎も構築され始めている。オフィスの出力を受け持つプリンタと入力を受け持つスキャナ。これらを組み合わせたソリューションは、まだまだ広がりを見せていくことだろう。
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NEC 新しいニーズを生み出す提案力
小型・軽量という「マルチライタ 5700C」の付加価値を生かす

■モノクロときどきカラー 活用シーンを広げる提案

 2007年10-12月期において、NECのカラーページプリンタは、前年同期比170%近い伸長率となった。「モノクロをカラーに置き換えていくこれまでの営業活動が実を結び、まとまった需要が増えてきたことが伸長の要因です。“マルチライタ2900C”が牽引しましたね」と、ディスプレイ・ドキュメント事業部・ドキュメント営業支援グループの木原真一郎グループマネージャーは語る。NECは、企業システムに導入されているモノクロ機の買い換えを推進した「モノクロときどきカラー」というキャッチコピーで、新しいプリンタスタイルをユーザーに訴求してきた。Webサイト「8番街」で業種別の活用提案を行い、新規市場の開拓にも余念がない。通常業務のシステム出力用としてはモノクロで十分だが、それ以外のカラー出力に対するニーズも顕著となり、高い伸長率を実現している。

 NECは、さらなるカラー化を推し進めるべく、A4エントリーモデルとして「マルチライタ5700C」を投入。非常にコンパクトで設置場所を選ばず、戦略的な価格ということもあり、ユーザーや販売店からの評価も高い。これまでA4モノクロ機が導入されている市場に対しても「2900C」同様の提案で市場を広げていく。

 「07年12月にビッグサイトで開催された“iEXPO 2007”でも、注目を集めました。多くの方々が、設置面積の少なさに驚かれているようでした」(木原氏)とのことだ。

 「5700C」は、幅400mm×奥行き439mm×高さ390mmという本体サイズに加え、ハイブリッドフレームを採用し、本体重量を17kgと軽量化している。これまでのプリンタと異なり、1人でも十分持ち運べる重さだ。小型・軽量のため、窓口業務やデスクサイドに置くことはもとより、移動させることが楽なため、会議室やレンタルスペースでの利用や倉庫・工場などの現場脇で現品を確認し、その場で帳票を出力・貼付作業も可能となる。

 「導入しやすい価格帯ということもありますが、軽量という部分も訴求することで、これまで以上に活用シーンを広げることができると考えています。業務効率が向上する新しいワークスタイルの提案も“5700C”で行っていきます」(木原氏)とのことだ。

 「5700C」により、提案の幅が一気に広がる。「5700C」を活用することで、これまでNECが得意としてきた領域だけではなく、新しいニーズの掘り起こしも可能となる。新しいビジネスチャンスを生むカラープリンタといえるだろう。

■カラーを加速させる新たな試みにも挑戦

 また「2900C」は、新たな価値として、アノトパターン印刷適合プリンタの認定を取得した。手書きの文字や絵などを迅速にデジタル化できるため、文教市場における答案用紙の採点や医療現場での電子カルテとの連携、クレジットの申し込みなど、現在、様々な市場でデジタルペンを活用したソリューションの提案も考えている。

 アノト機能とは、特殊なドットパターン(アノトパターン)が印刷された専用紙にデジタルペンで書くと、その位置情報を読み込み、PCやサーバーに転送してデジタル化するというもの。このアノトパターンに重ねて、帳票のワクをプリンタで印刷し、ミドルウェアと組み合わせることで業務効率の改善を実現するなど、ソリューションでの活用範囲は広い。

 アノトパターン印刷には安定かつ高精度な印刷が求められるが、「2900C」はこの規準を満たし、レーザープリンタで普通紙への印刷が可能となった。今後、手書き入力をデジタル化するソリューションが増えていくのは必至だ。多くのソリューションを持つNECの総合力を生かした提案も可能となるだろう。カラー化をより加速させるNECの活動に、市場からの期待も大きい。

NEC=http://nec8.com/mw/
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リコー ローエンドカラープリンタ市場の開拓を目指し開発体制を強化
市場競争力の高い新製品「IPSiO SP C220」を投入

■ユーザーニーズに応えるべくラインアップを強化

 「市場全体を見ると“ソリューション”と“コモディティ”という二極化が進んでいると感じています」と、販売事業本部・ソリューションマーケティングセンター・プリンタ販売計画室の宮崎章二副室長は語る。リコーでは、これまで「ソリューション」に軸足を置き、商品ラインアップを拡充してきた。MFP、プリンタともに抜けのないラインアップを揃えることで、プリンタの最適配置を提案し、多くの顧客企業に支持されてきた。また、業種展開にも力を入れており、医療、自治体、流通、金融などでも成果が出始めている。

 一方、「コモディティ」に関しては「“安かろう”では、お客様のニーズに応えることができません。導入しやすく高品質な製品が求められていると思います」(宮崎副室長)とのことだ。リコーでは、近年急速に拡大しているエントリーカラープリンタ市場に向けて開発体制を強化するため「大阪開発センター」を新設。同センターでは、ユーザーのすそ野を広げるべく、新製品の開発に余念がない。また、ディストリビューターとの関係強化にも注力している。その第1弾として、満を持して投入されたのが新製品「IPSiO SP C220」である。

 「IPSiO SP C220」の特徴は、そのデザイン性の高さにある。本体寸法は400mm×450mm×320mmという、モノクロレーザープリンタ並みのサイズを実現。さらに丸みを帯びたフォルムを採用したほか、煩雑に見えるコネクタ・ケーブル類をまとめ、すっきりした背面デザインになっている。オフィスのデスクサイドはもちろん、店舗窓口やバックヤードなど、利用シーンを選ばないデザインだ。

 「背面に鉄板が見えていたり、煩雑にあるケーブルを嫌うお客様も多いようですので、全面をカバーで覆い、ネジも表に出ないようにしています。また、フルフロントオペレーションで操作できますので、利便性も高くなっています」と、販売事業本部・ソリューションマーケティングセンター・プリンタ販売計画室・プリンタ商品計画グループの佐藤大輔氏は語る。

■技術力の高さと実績のあるサポート&サービス

 連続プリント速度は、カラー/モノクロともに毎分16枚。中間転写方式を採用しており、用紙搬送経路を短縮したことで、ファーストプリントタイムは14秒以下を実現している。また、用紙搬送経路がシンプルなため、用紙詰まりなどのトラブルも起きにくく、扱いやすいプリンタとなっている。エントリーモデルだが、リコーの技術の粋を集めたプリンタであることは疑いようがない。

 「ターゲットとしている市場では、競合力のある製品になっていると思います。モノクロレーザープリンタの置き換えはもちろん、コンシューマ向けのインクジェットプリンタをお使いになっているお客様に対しても、訴求力のある製品です。お客様によっては、これまでのプリンタを“IPSiO SP C220”に集約することもできます」(佐藤氏)。

 「IPSiO SP C220」は、オープン価格となっているが、市場推定価格は6万円ほどという戦略的な価格設定になっている。

 「市場を広げるという意気込みで“IPSiO SP C220”を投入しています。エントリー市場は、まだ拡大する余地があると思いますので、今後もこの市場に注力していきます」(宮崎副室長)とのことだ。

 サポート力も同社の強みとなっている。リコーでは、全国にサポート網が張り巡らされており、万が一の障害にも迅速に対応できる体制が整っている。エントリー市場を攻めるリコーの展開から目が離せない。

リコー=http://www.ricoh.co.jp/

(週刊BCN 2008年2月18日号掲載)
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