Special Issue

<ネットワーク特集> 「地球環境保全」を考慮した省エネ対応が拡充 信頼性・安定性を向上させながら、多くの課題を解決へ

2008/02/21 19:56

週刊BCN 2008年02月18日vol.1223掲載

 ネットワークは多くの企業で利用され、インフラとなっている。しかしネットワークに対する課題もある。セキュリティや管理・運用上の問題が顕著となり始めているのだ。また、消費電力の増加も地球環境の将来にかかわる問題になり始めている。ネットワークのトレンドから最新のソリューションまで、ネットワークにかかわる市場動向を追った。

■浮き彫りとなる、セキュリティと管理運用上の課題

 総務省情報通信政策局が2007年3月に公表した「平成18年通信利用動向調査報告書 企業編」によると、従業員数100名以上のうち企業通信網を構築している割合は、(1)企業内と企業間の両方構築=58.0%、(2)企業内のみ構築=27.7%、(3)企業間のみ構築=2.4%、(4)企業通信網をいずれも構築していない=6.9%、(5)無回答=5.0%となっている。つまり、88.1%の企業が企業内通信網、もしくは企業間通信網を構築していることになる。

 このことから、非常に多くの企業が情報通信ネットワークを活用していることがうかがえる。しかし同報告書によると、情報通信ネットワーク利用上の問題点も浮き彫りとなっている。「情報通信ネットワーク利用上の問題点」として、(1)セキュリティ対策の確立が困難=70.0%、(2)ウイルス感染に不安=66.1%、(3)従業員のセキュリティ意識が低い=48.3%と、セキュリティ関連の項目が並ぶ。(4)運用・管理の人材が不足=41.4%、(5)運用・管理の費用が増大=34.9%、(6)障害時の復旧作業が困難=25.0%となり、運用管理上の問題を課題にしていることも明確だ。

■中堅・中小企業において、負荷分散装置のニーズが高まる

 企業の情報通信ネットワークにおいて、セキュリティと管理・運用が大きな課題として横たわっている。ビジネスのインフラでは、安定性・信頼性が何よりも求められる。ネットワークは、サーバーとクライアントPCをつなぐ大動脈だ。データがよどみなく流れ、適切に処理されなければ障害を引き起こし、システムダウンも余儀なくされる。

 最近では、業務アプリケーションもWeb化したり、ネットワークを活用した業務生産性の向上を実現する企業も増えており、ロードバランサーに対するニーズが顕著になっている。

 これまでロードバランサーは、大規模ネットワークを中心に展開されており、中堅・中小規模向けの製品はほとんど提供されてこなかった。ロードバランサーメーカーの寡占化が進み、より大規模向けのソリューションが提供されるにとどまっていた。

 しかし、ネットワークがインフラとなり、企業規模を問わず活用している現在、中堅・中小企業においても、ロードバランサーを求める声が高まっている。ロードバランサーを活用することで、システムの信頼性と可用性を向上させると同時に、管理・運用コストの低減を実現しようという狙いがあるからだ。こうした声に応えて、低コストで導入できるロードバランサーも登場している。この市場は、今、中堅・中小規模企業の成長に牽引される形で急速に成長しているのだ。

 また、グリーンITという観点からもネットワーク機器が注目されている。利便性や生産性の向上を追求した結果、ネットワーク上を流れる情報は日増しに増えている。サーバーやクライアントPCは、より多くの情報を処理するためパフォーマンスの向上を続けてきた。その結果、IT機器で消費される電力量が増大している。また、多くのサーバーやネットワーク機器を扱うデータセンターの場合には、それらを安定稼働させるための空調などの電力量も課題となっている。地球環境に配慮することはもちろん、運用コストの削減を実現するグリーンITをキーワードにしたソリューションが注目されるのも、消費電力が現実の問題として表面化しているためだ。

■グリーンITが新たなキーワードに

 グリーンITとは、業務効率化による資源・エネルギーの効率化を実現し、温室効果ガスの削減をもたらすというプラスの効果を高め、システムに利用しようというものだ。全世界的なプロジェクトも動き始めており、新しいビジネスチャンスととらえ、ベンダーの動きも活発になっている。

 地球環境保護というと大きな問題になってしまうが、企業において、無駄な電力消費を削減することは、運用コストの低減にも直結するので、企業単位で見ても、これは意義のある動きだといえる。

 ネットワーク機器を考えても、24時間365日稼働が前提となり、信頼性が求められてきた。しかし、ネットワークを利用していないときも、ネットワーク機器は電力を消費し続けている。生産性を維持しながら、ネットワークの信頼性を高めるようなソリューションも登場している。例えば、もっとも数多く導入されているネットワーク機器、ネットワークスイッチの省エネ対応である。これを導入すれば、使っていないときにポートの電源を切るだけでも、消費電力を大きく下げることができる。既存のスイッチをこういった省エネ対応の製品に入れ替えるだけでも、その効果は大きい。

 また、仮想化にも期待が寄せられている。仮想化は、サーバー統合を実現するための手段で、機器の運用・管理コストの削減に加え、サーバー集約による管理性の向上、耐障害性、発熱対策、消費電力削減といった効果も高い。これまでは、導入コストの課題から、大規模企業を中心に拡充されていたが、オープンソースなども台頭し始め、中堅・中小規模企業でも利用しやすい価格帯のソリューションが登場し始めている。ネットワークソリューションは、グリーンITをキーワードに、新たな局面に入りつつあるのだ。

無駄を省き運用コストの低減も

 ネットワークスイッチは企業のみならず家庭でも導入され始めている。ネットワーク機器を接続するための重要な機器として、数多く導入されている。実は、スイッチはネットワークを使っている、いないにかかわらず、常に電力を消費している。例えば、だれもネットワークを活用していない深夜でも、常にスタンバイという状態にある。コレガが提供するエコピタスイッチシリーズは、ネットワークに接続されているPCの電源がOFFでは、ポートの電源をOFFにし、消費電力を低減させることに成功している。同社の試算によれば、24ポートの製品1台で、法人ユースで年間1260円の削減が可能という。多くのスイッチを入れている企業であれば、まとまった金額になることは想像に難くない。導入コストを考えても、エコピタスイッチへの切り替えは、メリットが大きいといえよう。


[次のページ]