Special Issue

Windows Server 2008特集(上)

2008/04/28 19:56

週刊BCN 2008年04月28日vol.1233掲載

日本AMD
グリーンITを積極的に推奨
マイクロソフトとともに市場を創出し、ユーザーに新しい提案を行う

 x86環境を語るうえで、CPU(ハード)とOS(ソフト)はいうまでもなくいずれも欠かすことのできない最も重要なテクノロジー要素である。ハード/ソフト双方のプラットフォームを組み合わせて初めてソリューションとして成り立つからだ。ハード/ソフトベンダー双方の関係は密でなければ、ユーザーにとって最適なソリューションの提供は難しい。AMDとマイクロソフトの強力なアライアンスは、当然の結果ともいえるだろう。両社の協業により、64ビット環境の普及が促進された。また今回のWindows Server 2008の出荷によりさまざまなアイデアや新たなソリューションが生まれてくるだろう。日本AMDのマーケティング本部・エンタープライズプロダクトマーケティング部・部長の山野洋幸氏に話を聞いた。

タイトなアライアンスを実現したプラットフォームベンダー2社

 1999年、AMDはx86アーキテクチャを拡張した64ビット命令セット上でサーバ用プロセッサ開発を開始し、2003年には「AMD64」ベースのサーバ用プロセッサAMD Opteronプロセッサを市場投入した。CPUベンダーのなかには、既存のCPUと互換性のない命令セットを提唱し、64ビット化を推進していたケースもあったが、現在、市場で流通しているCPUのほとんどは、従来の32ビットCPUと極めて互換性の高い64ビットCPUが主流となっている。つまり、ユーザーは互換性の高さを選んだのである。これまでの環境を捨てることなく、次のステップに移行できるため、AMD64という提案は、ユーザーから、また市場全体から支持され普及した。

 ハードウェアとソフトウェアを組み合わせなければソリューションとして成り立たないことから、64ビット化の過程でも、ハードベンダーとソフトベンダーが協業することにより新たな市場を創出してきた。AMDとマイクロソフトとの関係は、64ビットをきっかけとして、この頃からかなり親密になってきたという。今では当たり前のように活用されている64ビット環境だが、両社の強力なアライアンスによって構築されてきたといっても過言ではない。

 「Windows Server 2008は、既存の32ビット互換64ビットのアーキテクチャも踏襲しながら、カーネルを1から作り直した新しいサーバプラットフォームです。多くのお客様の要望に応えているサーバOSだと感じています」と、マーケティング本部・エンタープライズプロダクトマーケティング部・部長の山野洋幸氏は語る。

 Windows Server 2008は、仮想化、セキュリティ、管理・運用など、多くの企業の課題に対して真っ向から応えるサーバOSとなっている。例えば、ビジネスのキーワードとなっている「グリーンIT」に関しても、AMDとマイクロソフトによるソリューションは応えることができる。

 AMDの最新サーバ向けCPU、クアッドコア AMD Opteronプロセッサは、パフォーマンスを向上させつつ、これまで通りの熱設計枠に収まる設計となっており、ワット性能を飛躍的に向上させている。

 日本においては、サーバの管理は情報システム部門だが、電源などマシンルーム設備の管理は総務というように、管理・管轄する部門がそれぞれ別という場合もある。電力問題は、企業にとって大きな課題だが、最新のCPUを搭載したサーバの導入にあたって、既存の環境と同様の消費電力・熱設計枠に収まる設計であれば、必要な総電力が容易に算出できるため、上記のような部門を横断したプロジェクトの場合にも、スムーズなシステム導入を実現できるというメリットもある。「当社もグリーンITには積極的にかかわっています。データセンターのエネルギー効率改善に取り組むIT業界の非営利団体“グリーン・グリッド”の設立会員ですし、その成果は、経済産業省などからも高く評価されています。CPUにおける電力消費を押さえることはもちろん、地球環境への配慮の観点で貢献するための活動も積極的に行っています」(山野氏)。

「グリーンIT」を推進 仮想化がキーワードに

 クアッドコア AMD Opteronプロセッサには、仮想化支援機能である「AMD Virtualization」も実装され、Windows Server 2008で搭載される「Hyper-V」は、このハードウェアレベルでの仮想化支援機能に完全対応している。また、メモリ・コントローラをダイ上に統合することによってデータ通信のボトルネックを解消し、仮想化の鍵である性能向上を実現したAMD独自のダイレクトコネクト・アーキテクチャも強みだ。ダイレクトコネクト・アーキテクチャにより、CPUとメモリ、CPUとI/O、およびCPU同士の直接接続を可能にするため、サーバの仮想化が効率的になる。つまり、同等レベルの他のサーバ向けプロセッサより多くのメモリ・バンド幅とI/O、CPUリソースを仮想化に割り当てることができるのだ。さらに、新たにクアッドコアAMD Opteronから実装されたRVI(Rapid Virtualization Indexing)により、仮想マシンのメモリをCPUが直接管理可能となるため、仮想化されたアプリケーションの性能向上も期待できる。さらに、大幅な運用コストの低減も実現可能だ。「ベンチマークでもRVIを設定することによって10-20%ほどパフォーマンスが向上しています。Hyper-Vによって仮想化を推進しているマイクロソフト様からも、大きく期待されている新機能です」(山野氏)。

 Windows Server 2008上で動作するアプリケーションには、Exchange Serverを始め、64ビット環境のみをサポートするというケースも出始めている。これまで、AMDとマイクロソフトが共同で開拓してきた64ビット環境は、もはやメインストリームとなっているのだ。「タッチダウンプログラムでは、現在実機の貸し出しを行っていますが、仮想化してネットワーク越しに検証環境を貸し出すということも可能かもしれません。管理側の体制を整えたり、ネットワークインフラをどうするのかという課題もありますが、不可能ではないと考えています。そうすることで、より広範なISV様にも同プログラムを活用いただけるのではないでしょうか」(山野氏)。確かに、検討事項はまだあるものの、仮想化を活用した一例としては魅力的といえるだろう。各ISVは資産を保有することなく効率よく動作検証を行うことが可能となり、より多くのISVがプログラムに参加することによって、さらなるWindows市場の活性化が期待できる。

 そして、企業としてグリーンITを提唱していき、これまで以上に積極的に推進していく。「AMDは消費電力の低減に以前から取り組んできており、03年から本格的に訴求をしてきましたが、当時はお客様からの反応は弱かったですね。ここにきて、やっとマーケットから賛同を獲得し始めています。今年は、グリーンITが実現する年だと考えています。仮想化環境も、試行ではなく本番環境で普通に活用され始めると思います。Windows Server 2008が大きなターニングポイントとなることは、間違いないでしょう」(山野氏)。

 仮想化は、業界全体が大きく期待しているソリューションの1つ。サーバ統合が進むことで、ボリュームが減少するのではないかという疑問に対しては、「当社は、マーケットではチャレンジャーです。当社のCPUを活用しサーバが統合されていくことで、我々のビジネスチャンスは大きく広がると考えています」(山野氏)。グリーンITをキーワードにアクセルを踏むAMD。同社の展開にマーケットの期待も大きい。


日本AMD=http://www.amd.co.jp/

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