▼2009年の戦略
エコとコスト削減が共通テーマ


 ──09年は、プリンタ業界にとって「環境」「コスト削減」「セキュリティ」などがキーワードになりそうです。こうした中で各社は、どのような製品・販売戦略を展開するのかお聞かせください。

 岡田(NEC)
 09年は「エコ」がキーワードになります。NECは昨年4月に「NECグループビジョン2017」を打ち出し「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」であることを宣言。プリンタだけでなく、PC・サーバーなどを含めトータルで「エコ提案」や「エコ・ソリューション」を展開することを意味しています。

 また経済環境が厳しい中でコスト削減がキーワードになっています。エコで消費電力量や用紙の使用量を減らすことが求められ、これを実現するとコスト削減にもつながることを訴えます。さらに最近は大手企業から取引関係にある中堅・中小企業に対し内部統制強化に対する要請が強くなっています。そのため、当社ではドキュメント・セキュリティを切り口にした展開をしています。当社ではICカード利用による認証印刷を積極的に提案しようとしていますが、これによってプリント枚数を抑制することでコスト削減になります。09年はエコとコスト削減を打ち出した戦略展開をいたします。

 長期的には「SaaS・クラウドコンピューティング時代」を見据え、シンクライアント化の流れに対応する必要があるでしょう。シンクライアントになると、通常のプリントアウトだけではなく、例えば、帯域制限を考慮し、ネットワーク環境を考えた印刷出力の提案が必要になります。そうなると、実際の印刷評価や、きめ細かいレイアウト指定などの検証を経ないとうまく出力できないケースが出てきます。そのため、先々のネットワーク環境でのプリンティング・システムを考慮した展開を09年から進めたいと考えています。

 宮西(エプソン販売) 「環境」や「コスト削減」は関心が高いキーワードだと考えています。「環境」については、消費電力やCO2排出量を重視するお客様に対してはレーザープリンタなどの電子写真方式に比べて環境性能に優れているビジネスインクジェットプリンタを使用状況に応じて複合提案しています。自社調べですが、ページプリンタに比べて弊社のビジネスインクジェットは3年間で約75%のCO2を削減できます。また、ページプリンタ・複合機を使用しているお客様に対しても、消耗品についてトナー代だけお客様にご負担をいただき使用済みカートリッジは返却いただく「環境推進トナー」をご用意しました。お客様が重視する環境側面にあわせて、提案・プロモーションを強化していきます。

 「コスト削減」については、これまで以上に最適な提案が重要になってくると考えています。導入コストが低価格で基本性能に優れた商品を提供していくことはもちろんのことですが、「印刷管理ソフトウェア」や「割付印刷」・「両面印刷」などのプリンタドライバ機能による無駄な印刷の削減、また、先にお話した「環境推進トナー」によるランニングコストの削減などを提案していきたいと考えています。

 松永(キヤノンMJ) 09年に関しても引き続き「A3カラー機」に注力します。現行3機種を展開していますが、さらにラインアップの拡充を図ります。富士ゼロックスさんから出ていたTEC値(消費電力量)や環境、TCO削減を前面に掲げた展開も積極化します。当社のプリンタ本体は以前のモデルから「オンデマンド定着方式」を採用し、低消費電力であることを訴求しています。また、業界に先駆けて1990年から消耗品のトナーカートリッジのリサイクルを自主的に推進してきました。現在では「埋め立て廃棄ゼロ」「100%再資源化」も推進しています。「クローズ・ループ・リサイクル(製品部材を同じ製品へ再利用)」のフローをワールドワイドで展開しており、これらを含め環境訴求を積極展開します。

 また、業種という切り口では、昨年同様に自治体、医療、金融の3領域へ展開することを掲げました。このうち、医療領域では今年1月、FMSがキヤノンITソリューションズの医療ソリューション事業を承継し、「キヤノンITSメディカル」が誕生しましたので、ここを通じ多く採用されたお客様に対し、ページプリンタやMFP、プロジェクタ、監視ツール、アプリケーションツールなど、医療の各シーンに応じキヤノン製品を積極的に販売します。

 金融向けは、以前から得意としていた領域ですが、「地銀向け」を今年のテーマに掲げました。地銀に対しシステム提供するSIerと連携しページプリンタとスキャナのインプット・アウトプット両面のデバイスを定番化していただこうと考えています。

 さらに当社サイトでは、「CDCT(Canon Driver Configuration Tool)」というキヤノン製プリンタドライバの初期値を変更してカスタマイズするツールを提供しています。プリンタ本体だけでなく、こうした形で簡単にコスト削減できる提案をします。

 天野(富士ゼロックス) 各社と同様に09年のキーワードは「環境」ととらえています。今年2月に当社は、経済産業省主催の「省エネ大賞」を10年連続で受賞するという業界初の快挙を達成しました。環境への取り組みは、最近になって実施してきたわけでなく、10年前のプロダクトからの評価ですので、これからも地道に取り組んでいきます。

 環境をキーワードにすると業種業態を問いません。トナーに関してもカラーオンデマンドパブリッシング機に採用済みのEA-Ecoトナーをオフィスプリンタにも投入していきます。これを将来的にプリンタにも採用することで、いままでより低温で紙にトナー定着でき、消費電力をさらに低減することが可能になります。

 最近当社では「Your Partner Anytime」を宣言し、コーポレートロゴも一新しました。お客様のドキュメント周り以外でも「ソリューション・パートナー」になることを提唱しています。プリンタで言えば、「ICカード」でセキュリティ出力できる製品のラインアップを増やしました。これまで以上に、プリンタのセキュリティ出力に関する提案が具体化してくるでしょう。

 大澤(ブラザー販売) 09年は製品面では「ジャスティオ」のコンセプトに従って、ラインアップを継続して拡充していきます。現在好評いただいているA3機に関しては、09年2月に1機種を追加しましたが、A3インクジェット機のラインアップを拡充し、販売台数増をけん引するプロダクトに育てたいと考えています。

 モノクロ機に関しては、このような経済環境にあっても堅調に推移していますので、こちらもラインアップを拡充します。その上でキーワードになるのがコスト削減や環境になるでしょう。さまざまなソリューションを提供するにも、当社は大規模なドキュメント管理システムを展開するメーカーなどと真っ向勝負できません。このため、「簡単で分かりやすいソリューション」を提供するために、少しずつ独自のソリューション群をそろえてアピールしていきたいと考えています。

 宮崎(リコー) 09年度も08年度同様に、着実に主力のA3機を販売し、A4機をONしていきたいと考えています。その際のキーワードは、こういう時代だからこそ「TCO削減」と「環境」になります。コスト削減策としてはプリンタ台数の集約化や両面印刷の推奨、トナーセーブなどに加え、管理負荷低減などを含めた「TCO削減」に関するトータルな提案をしていきます。

 例えば、当社ではダウンタイムを低減するため、24時間365日のメンテナンスやリモート管理サービスを提供しています。プリンタ不具合への迅速な対応はもちろん、トナーを自動配送するサービスもありますので、お客様の管理や在庫コストを減らすなど、トータル提案をして新規顧客を獲得する考えです。

ブラザー販売

大澤敏明氏
情報機器事業部 マーケティング推進部 商品企画G 担当部長


自社の家庭用ファクシミリ「マイミーオ」とビジネス向けプリンタ「ジャスティオ」などの商品企画を担当する。

 ブラザー販売は、ブラザー工業が開発・生産するプリンタなどの販売会社。07年秋には、ブラザー工業初の自社開発機であるカラー複合機・プリンタ「ジャスティオ」ブランドを立ち上げた。省スペースなきょう体を売りにし、主に「SOHO」や流通・小売りの狭小スペース向けをターゲットとし、8割程度を家電量販店経由で販売している。「BCN AWARD 2009」では「ページプリンタ部門」のNo.1に輝いている。主力機種としては、A3カラーインクジェット複合機「MFC-6490CN」とA4小型のモノクロレーザープリンタ「HL-5350DN」などをそろえている。最近まではA4機だけの販売展開だったが、A3機をラインアップしたことで市場領域が拡大した。店頭に加えチャネル販売にも力を入れる方針だ。




▼特定用途
業種・業務に応じ製品展開


 ──現在、一般オフィスへ単体としてプリンタを導入するには厳しい状況にあります。これまで各社にご指摘いただいたように「環境」「コスト削減」は1つの訴求項目でしょう。それに加え、業種・業態・業務に応じた「特定用途」へ向けた提案を各社で積極化しています。ここへの施策をお聞かせください。

 岡田(NEC)
 一般オフィス向けでは「集約化」と「最適化」を同時に進める提案をする必要があるでしょう。これに加えて、どう「新たなプリント機会」を提案するかが重要です。先ほど、カラー機の説明をするなかで流通・小売業界の店舗向けの展開を指摘しましたが、これも1つの用途提案になります。例えば、一般オフィス向けとして当社ではプロジェクタを扱っており、会議室内に小型プリンタを置き、プロジェクタで投影した内容を必要に応じて出力し、配布するという仕組みの提案で「新たなプリントニーズ」がつくり出せると考えています。

 宮西(エプソン販売) 一般オフィスや業種・業態におけるお客様の利用状況を把握して、ページプリンタ・複合機、業務用小型プリンタや大判プリンタなど、豊富なラインアップから最適な製品を提案してまいります。これを実行するための社内スローガンとして、「知って、知らせて、使っていただく」を提唱し、販売代理店と連携して、このサイクルを回す活動を展開していきます。

 また、中期的に需要が見込める業種として、流通・小売や医療などに対しての取り組みを強化しています。医療業界では、検体ラベルなどの用途向けに、カラーラベルプリンタを投入しますが、プレマーケティングでは、おかげさまで高評価をいただいています。

 松永(キヤノンMJ) 当社では業種のターゲットとして自治体、医療、金融を挙げています。例えば、自治体においてページプリンタを導入していただくために、システム構築をするSIerと連携して拡販します。自治体の業務の中では、単にアウトプットするだけでなく実際に出力したドキュメントをインプットして「電子化」する業務が増えています。

 また「電子化」するだけでなく、各ドキュメントにバーコードを付与して管理するニーズが出ています。当社のドキュメント・スキャナは、ドライバ上にバーコードを解析するツールが付いています。こうしたツールや機能をSIerに知っていただくとともに、例えばバーコード付きのドキュメントを読み込むための方法などプリンタの活用方法を情報提供していきたいと考えています。

 天野(富士ゼロックス) 一般オフィスにプリンタ関連のセキュリティがどの程度普及しているかは未知数です。09年以降には、先行していた業界以外にもセキュリティを強化する動きが活発化すると考えています。単純な地紋印刷は以前から存在しますが、複製制限コードが埋め込めるソフトも提供しています。複製制限コードが埋め込まれているドキュメントを当社のデジタル複合機でコピーやスキャンをしようとしても、ボタンが押せずに作業ができません。これにより、情報漏えいの原因である紙ドキュメントのセキュリティを確保できます。プリンタメーカーでは目新しさがなくなった感はありますが、セキュリティに関してはパートナーもお客様も、まだまだそこまでできていない状況です。当社プリンタには対応製品が増えていますので、セキュリティに関連した用途提案を積極化します。

 大澤(ブラザー販売) 当社にはページプリンタに加え、「MPRINT(エムプリント)」というサーマル・モバイルプリンタと、昨年HOYAから譲り受けたモバイルA4感熱紙プリンタがあります。モバイル・プリンタはダイレクトにお客様へ用途提案できます。また、最近は、複合機を前面に押し出し拡販していますが、例えば、多店舗で導入する際に「スキャンtoFTP」や「スキャンtoファイル」など、スキャン機能関連でシステム構築するケースもでてきており、こうした用途に関する要望を受けて販売に結びつけようとしています。

 宮崎(リコー) 当社では「Operius(オペリウス)」というソリューション展開をしています。最近では、「ICカード認証」などセキュリティ関連の要望を多くいただいています。ここでもMFP/LP共通に使えることが当社の強みになっています。また、業種展開としては、医療、流通、自治体向けに、用紙対応力にこだわった提案をしています。圧着紙や特殊紙なども出力できる製品を拡充しており、SIerのシステムとうまく連携できるようにしています。また当社では特殊紙での出力をきちんと検証できる体制を整えておりSIerの方にも安心して販売いただけるようにしています。

リコー

宮崎章二氏
販売事業本部 ソリューションマーケティングセンター プリンタ販売計画室 室長


国内プリンタ販売を担当し、ミッドレンジからローエンドまでのレーザープリンタ、ジェルジェット、A4デジタル複合機(MFP)などを担当。

 リコーは一般オフィス向けにデジタル複合機(MFP)を中心に、レーザープリンタやジェルジェット(ビジネスインクジェット)プリンタ、プロダクションプリンタまでの豊富なラインアップを提供している。今年度は、中核的な存在であるカラーレーザープリンタを一新した。A3機では、最上位機種のカラー毎分50枚機「IPSiO SP C821」とデスクトップ型の「IPSiO SP C721」が主力モデルとなる。さらに、2月には、A4機のシングル機「IPSiO SP C310」とA4MFP「IPSiO SP C301SF」を発売し、A4機のラインアップ拡充を図っている。09年のキーワードとして「環境(エコ)」と管理負荷低減を含めた「フロアーTCO削減」を掲げ、企業にシステム提供するSIerなどパートナーとの連携を深める。




▼パートナー施策
各社がSIerとの連携強化


 ──これまでの議論で提携先として挙がっていた各社のプリンタ製品などをパートナーが「売る」ために、メーカーとしてどんな支援策を講じていくのかお聞かせください。

 宮崎(リコー)
 お客様へのトータルな提案をパートナーの皆様ができるようにMFPやジェルジェット(インクジェット)プリンタ、プロダクションプリンタなども組み合わせたソリューションを提供します。また、医療、流通など業種向けにシステム提案できる体制をさらに強化します。パートナー向けのサポートプログラムとして、機器の検証や貸出機の提供を行うほか、機器の導入前にオプションの装着や設定を行っておくことで、お客様先ではそのまま設置してすぐ使えるような支援もするなど、面倒なことは全てリコーに任せてもらえる体制を強化していきます。

 大澤(ブラザー販売) 当社では販売ルートの改革として、販社を含めてプロジェクトを立ち上げ、どうやって多くの案件を獲得するかについて検討を始めています。業種別では飲食店など店舗で生きる製品特性もあり、そこそこ導入実績を上げています。これにA3機がラインアップに加わったことで、官公庁・自治体などにエリアを広げるため、社内の営業部と商品企画部内にプロジェクトを立ち上げ、どういったルート特性やどんなスペックが求められるかなどを議論しています。これが少しずつ身になっていきますので、事務機ディーラーやSIerに対し、一緒に展開できるよう提案をしている最中です。

 天野(富士ゼロックス) セキュリティやTCOの観点で、シンクライアント環境が広まってくると考えています。プリンタもその環境に対応していかなければなりません。シンクライアント環境やSaaSを展開するSIerなどとの連携をここ1年で積極的に行っています。

 08年には「基幹業務プリンティングソリューション営業部」を中心に、いままでお付き合いをしていなかったパートナーとも、これからのシンクライアントなど新しい環境へ向けた展開をスタディしてきました。09年はこうした分野の新たなパートナーが広がる年になると考えています。

 松永(キヤノンMJ) 先ほど申し上げた通り、TEC値(消費電力量)の打ち出しを活発化します。しかし、まだまだ「売り手」にそうした打ち出しが浸透していません。CO2(二酸化炭素)の排出量や年間の総電力量などをお客様に説明する際、TEC値の考え方を理解していれば、より明確に提案できますので、キヤノン製プリンタにリプレースすることで、どれ程のコスト削減につながるか、より具体的な数値をパートナーと共有することで拡販につながればと考えています。

 また、MFP販売を第一のミッションにしているグループ直系会社に対し、もう一度、既存のお客様へ最適なオフィス環境をつくるなかで、ページプリンタがどう活きるかを明確に説明できるよう徹底いたします。SIerが自社で抱えるプロダクトのうち、プリンタの優先順位は低い状況にあります。「プリンタがストック」になることを訴え、新たな市場開拓を一緒に行っていきます。

 宮西(エプソン販売) 官需の中で文教については、地域の入札業者が当社の販売代理店になっているケースも多く、ここを介した販売を強化します。また、官庁・自治体に関しては大手メーカーやSIerが深く入り込んでいますので、これらの会社と積極的に連携を強化いたします。民需に関しては、販売代理店経由の商談がほとんどですので、事務機ディーラーや家電量販店、Web通販などを通じてお客様に直接当社製品をプロモーションすることで、商談を確実に獲得できる活動を展開していきたいと考えています。

 民間の業種展開では、SIerなどと協業しながらシステムに当社製品を組み込んでいただくアダプテーションを推進していきます。ちなみに、08年はSIerやシステム開発者向けの開発・導入支援サイトとして「エプソンパートナーズネット」を開設しました。このサイトにおいても、水平展開できる導入事例やパートナーとの協業事例を増やしていきたいと考えています。09年度についても、豊富なプリンタラインアップの中から、お客様にとって最適な商品を提供するために、販売代理店と一体となって提案活動を行っていきます。

 岡田(NEC) 当社はPC・サーバーが知られていますが、プリンタの認知度はそれほどではありません。しかし、カラーレーザープリンタの「顧客満足度No.1」の称号を得たことを切り口に、再度パートナーやお客様へプリンタ事業を展開していることを再認識していただき、安心して活用いただく活動を積極化します。

 NECは総合メーカーですので、ワンストップで製品提供できる強みをもっています。ご相談をいただければ、さまざまな製品に対応します。さらにNECフィールディングで全国保守網を抱えています。当社システムを導入すればワンストップで保守対応できます。パートナーに対しては、製品面でドットインパクトプリンタとラベルプリンタも医療向けなどに販売していますので、業種業態に応じた製品提供ができることを訴求していきます。

 私の部門ではもう1つ、ディスプレイやプロジェクタなど、目に見える部分を担当しています。この部分で共通的に提案できるモノがありますので、パートナーと一緒に提案方法を考えていきます。


2008年の販売動向・傾向