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日本マイクロソフト 大塚商会 「Surface Book」が推進する 建設業のワークスタイル変革 高度な画像処理でも快適に動作

2016/06/23 19:55

週刊BCN 2016年06月20日vol.1633掲載

 高度な画像処理が求められる3次元CADなどの世界では、ワークステーションと呼ばれる画像処理に強い端末が活用されている。ワークステーションには、ノート型のモバイルワークステーションも提供されているが、モバイルとはいい難いほどの重さが問題だった。大塚商会の飯田千恵氏も、その重さに悩まされていた一人で、マイクロソフト製端末「Microsoft Surface」シリーズの「Surface Book」に切り替えたときの第一印象は、圧倒的な“軽さ”だったという。Surface Bookをもっと有効活用したいとの要望を受け、日本マイクロソフトの小黒信介氏が、Surface Bookの機能を紹介。二人の対談を通じて、Surface Bookの魅力に迫る。

BIMにモバイルの衝撃


小黒 今、担当されているビジネス領域と注力分野について教えていただけますか。

飯田 私が所属しているのはPLMソリューション営業部といいまして、首都圏を中心にBIM※(Building Information Modeling)の普及と、それに対応したツールの運用サポートを行っています。製造業では3次元CADの活用などが進んでいますが、建設業ではようやく盛り上がってきたという状況です。2次元で図面を書いていたのが、3次元でモデルをつくって図面を作成する、そして今はそのモデルデータの活用の幅を拡げるという段階になっています。

小黒 3次元になったことで、どのようなところが一番変わりましたか。

飯田 わかりやすいのは「可視化」です。建築の現場では、社内だけでなく、協力会社も含め、多くの人がかかわります。2次元の図面では完成のイメージがしにくいため、誤解などでミスが生じることが考えられます。可視化できることにより、バーチャル建物によりいろいろな事前検証を行い、手戻りをなくすことができます。また、モデルデータの活用としては、建物の影響による風の流れ、熱のこもり方などを解析することも可能です。今までなら、大型コンピュータでしかできなかった処理が、パソコンでもできるようになったため、BIMは幅広く使われるようになりました。ビルのなかの点検業務でも、BIMのモデルデータを活用するなど、業務ごとに最適な使い方をご提案しています。

オートデスクのBIMソフトウェア「Revit」のサンプル画面

小黒 BIMをパソコン上で利用するということですが、どのような端末をお使いですか。

飯田 BIMでは、グラフィックの処理が重要となりますから、画像処理の性能がとても大切です。私はお客様のところでBIMの製品説明などをする必要がありますから、これまでモバイルワークステーションを使っていました。ところが、とにかく重いんです。3kgを超えるほど。しかも、ACアダプタが大きくて重い。業務では紙の資料も持っていきますので、毎日8kgくらいの荷物を持ち歩いていました。

小黒 もはや、モバイルという感じではないですね。

飯田 そのモバイルワークステーションをSurface Book に切り替えたのですが、まずACアダプタが小さいことに感動しました。日中は外出が多いので、ACアダプタの携帯は必須です。しかも、Surface Bookは重さが1.5kgなので、これまでの半分以下です。

小黒 BIMはどのような製品を扱っておられるのですか。

飯田 私が担当しているのは、オートデスクのBIMソフトウェア「Revit」、グラフィソフトジャパンのBIM/建築3D CADソリューション「ARCHICAD」です。ほかにも解析のツールなどを扱っていますので、ハードディスクやメモリの容量も重要になってきます。

小黒 Surface BookでのBIMの動作は、どうですか。

飯田 (画面をみせて)Revitのサンプルデータですが、このように快適に動いています。Surface Bookでは、この環境を持ち運べる所がいいですね。先ほども申しあげましたが、いままでのモバイルワークステーションは重くて、モバイルじゃないですよね。あまりにも大きくて置いて使う感じです。ようやくモバイルで活用できるPCが出てきたと思っています。

小黒 Surface BookでBIMのモバイル環境を実現することは、お客様にとってもメリットになりますか。

飯田 とても大きなメリットになると思います。先ほど申し上げた通り、建築の現場では、多くの人がかかわります。Surface Bookはモバイル端末ですから、BIMのデータを持ち運ぶことで、会議のあり方も変わると思います。また、設計の作業についても、場所を選ばずにできることになります。データをクラウドで共有できるようにすれば、事務所にこもって設計作業をする必要がありません。ワークスタイルにあわせて、設計作業ができることになります。建設業界を大きく変えるかもしれません。

設計現場を変える“ペン”

小黒 Surfaceの役割は、新しいOSと、それに付随する新しい働き方を発信することにあります。既存のノートPCの市場を取るのではなく、新たな市場の創造を意識しています。そうしたなかで、エンジニアリングや設計に携わる方にまで広げていきたいとの思いが、Surface Bookに込められています。初めてGPUを組み込んだモデルを用意したのも、そのためです。ペンにも対応しています。グラフィックデザインではSurface Bookのディスプレイ部分を裏返してキーボード部分に着装し、ペンで書き込みをします。

大塚商会
飯田千恵
PLMソリューション
営業部
首都圏PLMサポート
2課専任課長
飯田 それは知りませんでした。設計初期段階や打合わせ時では、マウスよりペンを望む声もありますから、いいですね。強弱は認識するのですか。

小黒 ペン側で筆圧の強弱を認識しますので、太い線から細い線まで自在に表現できます。

飯田 図面を書くときは、強弱が大事なんです。何を強調するかなどは、線の強弱で示さないと関係者に気持ちが伝わりませんから。現在でも、設計者で手書きにこだわる人はたくさんいます。画面上で手書き感覚で使用できるのであれば、デジタル化が進むと期待できます。これまでは設計者が書いた紙の図面を別の人がデジタル化するといった作業をしていましたから、設計現場のワークスタイルが大きく変わりそうです。

小黒 ペン先を変えることもできて、それぞれ書き心地が違うんですよ。

日本マイクロソフト
小黒信介
Windows&デバイス本部
シニアプロダクト
マネージャー
飯田 すばらしいですね。強弱だけでもうれしいのに、ペン先まで変えられるなんて。画面で書けるのであれば、いろいろな使い方ができそうです。小黒 Surface Bookは画面に手を置いても大丈夫なんですよ。一般的には手を置くと反応してしまいますが、Surface Bookでは「パームブロックテクノロジ」という機能で、手を認識してブロックします。字を書くときは手を置くのが一般的ですよね。Surface Bookでは、その感覚で手を置いたままの自然なかたちでペンを使えるのです。

飯田 まだ新しい機能は使いきれていないので、ますます期待してしまいます。

小黒 もう一つ、どうしてもご紹介したいのが「Windows Hello」。顔認証機能です。Windows 10は生体認証に標準対応していて、Surface Bookでは画面側に赤外線カメラを搭載しています。赤外線カメラは、単なる絵としてではなく、深さも認識できるのが特徴で、認証の精度を高めています。顔認証はすぐに設定できます。

飯田 ぜひ、使ってみたいです。パスワードは定期的に変えるので忘れがちですし、キーボードで入力するところはあまりみせたくないものです。商談で画面を開いたときも、パスワードの入力で慌てがちですが、それがなくなりますね。お客様を待たせることなく、すぐにプレゼンを始めることができそうです。ログインも速い。起動も速いし、すべてにおいて速いですね。

働き方を変える活用を目指す

小黒 Surface Bookに対する要望はありますか。

飯田 もうちょっとUSBの端子があるといいですね。画面側にも。最近はネット認証のソフトが増えましたが、USBに「プロテクト」という端子を挿さないと動かないソフトがあるのです。

小黒 確かにディスプレイ側にはUSB端子がないです。ただ、キーボード側にGPUが入っていますので、BIMなどをお使いになられるときには、一緒に使っていただければと思います。

飯田 あとは、あえて挙げるなら価格ですね。

小黒 確かにお安くはないです。Surface Bookは単なるノートパソコンとして使うよりも、新しい使い方ができて価格に見合った価値を実感していただけると考えています。そのためにも、価値を最大化するような用途を提案していきます。

飯田 そういった意味では、先ほどのペンは新しい価値を生むと期待できそうです。

小黒 スマートフォンの普及もあって、画面へのタッチも自然に使われるようになってきています。マウスよりも、すぐれた使い方があると思いますので、ぜひ、使いこなしてほしいです。

飯田 そうですね。単にパソコンが変わったというだけではつまらないので、新しい活用方法を追求していこうと思います。

小黒 最後に今後のビジョン、取り組んでいきたい分野などについて教えてください。

飯田 とにかく、建設業界では人材が不足しています。そのため、Surface Bookのような新しいものを使って、働き方を変えていく必要があるのです。ポイントは、いかに生産性を上げていくか。これは業界自体の重要なテーマですので、お客様の意見を聞きながら、使い方を模索していきたいですね。Surface Bookはツールとしてのインパクトが大きいですから、働き方が変わるような活用方法がユーザー側からも出てくると思います。期待したいですね。

小黒 今日はありがとうございました。

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 今後はマイクロソフトとともにユーザーの声を掲載するような取り組みも予定しているという。


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外部リンク

日本マイクロソフト=https://www.microsoft.com/ja-jp/

大塚商会=http://www.otsuka-shokai.co.jp/