変化する環境をビジネスにつなげる

 冒頭では、サイバー大学IT総合学部の勝眞一郎教授が登壇し、「デジタルトランスフォーメーションの現在と未来―デジタルは、わたしたちのビジネスをどう変えるのか―」をテーマに基調講演を行った。今後、デジタルトランスフォーメーション(DX)がどうビジネスにインパクトを与えていくのかを紹介しながら、ITベンダーがどのような製品・サービスを提供すべきかを解説。変化する環境をビジネスにつなげる必要性を説いた。

サナギがチョウになるほど
変わる

 勝教授はまず、トランスフォーメーションについて「サナギがチョウになるように、生物の正常な生育過程において形態を変えること」と表現。見た目は変わるが同じ生命体で本質的には変わらない。つまり、トランスフォーメーションとは、デジタルやインターネットの情報が加わることによってビジネスの本質を改めて考えなければならないということだ。
 

勝 眞一郎
IT総合学部教授

 具体的には、ビジネスの連絡手段がメール(プル型)からメッセージングサービス/プロジェクト管理ツール(プッシュ型)に移行している。マーケットリサーチの手段も、SNSで容易になった。組織活動も、クラウドサービスによる情報共有で複数部門にまたがる業務が容易になる一方、ルーチンワークのアウトソースが進んでいる。

 勝教授は、「勝ち残るのは、高度な知識集約型の組織」と説明したうえで、「本質的な機能“だけ”に絞り込むと解がみえてくる。例えば、会計ソフトを導入したかったのではなく正確な記帳を実現したかったということで、企業活動の把握や納税につなげたいということが本質だ。組織も、人事部長などが必要というわけではなく、配置戦略や採用、育成の機能が必要という、本質を考えていかなければならない」と訴えた。

産業分野別の
DXが進む

 また、デジタルトランスフォーメーションは産業分野別でさまざまな形で普及していくという。

 農業では、農作物にタグがついてセンサとロボットによって農作業の自働化が進むほか、生産計画も最適化される。製造業では、材料や仕掛品、商品にタグがついて、品質管理や販売管理、生産管理などの最適化を実現するだけでなく、マーケティングやアフターマーケットの強化にもつながる。サービス業は、商品タグと顧客IDによって個別のニーズに対応することが可能になるという。

 さらに、インターネットの普及で都市部と山村部という二極分化が進む一方、中途半端な都市が埋没すると説明。その一例として、勝教授は「フリーランスが最も働きやすい島化計画」に取り組んでいる奄美市を挙げて、「奄美市には、IT関連のフリーランスが多く集結している。どのフリーランスも、東京でお客様を獲得しており、技術の人脈があって2か月に1回は東京に出張している。ライフスタイルを重視しながら仕事の腕を高く評価されているからこそ、なせる業」とアピールした。

 分野別のデジタルトランスフォーメーションという観点から、働き方改革についても言及。働き方改革によって、裁量労働制をはじめとしてテレワークやクラウドソーシング、ウェブ会議などが進む一方、「アウトプットの明確化、存在でなく成果で評価、働き方や生活スタイルが変わる」とし、その環境に対応できなければ働き方改革は実現しないことを指摘した。

人の業務は
本質的な部分に絞り込む

 一般的に企業は、オフィスのなかで知的成果物を生み出す際、まず現象を認識できる最も基礎的なことをデータ化し、そのデータを意味のある情報(インフォメーション)にしていき、その情報を体系化して知識(ナレッジ)へ、知識を妥当性・信頼性高く使用できる知恵へと昇華させていく。この一連の工程にデジタルを導入すると、現象をデータに引き上げるところにIoTが入り、蓄積したデータをAIで分析して知識、知恵になっていく。

 勝教授は、「この工程すべてが、最終的にロボットに置き換わっていくだろう。われわれは一連の工程にデジタルを導入するということを加速させ、新しい現象を生み出すことに携わることになる」としている。

 ルーチンワークの業務をIT化で自動化するというわけだが、では、人の業務はどのようなものになるのか。

 「本質的な部分だけに絞り込むこと」と勝教授は解説。これを踏まえたうえで、「ユーザー企業は、IT化にかける予算の総額を極端に変えることはできないが、自動化できるものに投資していって業務プロセスを変えることには関心が高い。一方で、不安を抱く可能性があるため、DXで変化する顧客環境をどのようにビジネスにつなげていくかを考えることが重要になってくる」と、ITベンダーがそのような製品・サービスを提供することの必要性を示唆して講演を締めくくった。