Special Issue

ニュータニックス マルチクラウド時代のベストHCIはニュータニックスの「Enterprise Cloud OS」で

2018/07/19 09:00

 ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)というジャンルを世界で初めてつくり出したニュータニックス。国内ではアプライアンス中心のビジネスを展開してきたが、今後はソフトウェアライセンスの販売にも力を入れていく。その最初のステップとして今年2月、国内主要パートナーとサブ・ライセンス権許諾契約を結んだ。さらに、共同検証の場となるソフトウェアテクノロジーセンターを東京・大手町に開設。パートナーを支援する基盤の整備を進めている。

純然たるソフトウェア企業として、ライセンス販売に注力

HCIという分野を創始

 
町田栄作
コーポレートマネージング
ディレクター
兼 社長
 「ニュータニックスは純然たるソフトウェアの会社。特定のプラットフォーム、プロセッサ、ハイパーバイザー、クラウドに依存しないニュートラルなHCIの先を行く『Enterprise Cloud OS』を提供している」

 ニュータニックス・ジャパンの町田栄作・コーポレートマネージングディレクター兼社長は、このように強調する。HCIとは、コンピューティング、サーバー仮想化、ストレージ、ネットワーク、管理の5機能を備えた垂直統合型基盤またはアプライアンスのことを指す。このジャンルを世界で初めてつくり出したのが、2009年に米シリコンバレーで創業したニュータニックスなのである。

 現在のニュータニックスは、世界145か国に9690社以上(18年4月現在)の顧客を有するまでに成長した。米ガートナーが18年2月に発表したレポート「マジック・クアドラント」では、HCI分野でビジョンの完全性と実行能力の両方で最も高いリーダーの位置づけと評価されている。※国内のユーザー数もすでに550社を超えており、町田社長は「自治体を含め、さまざまな業種・規模の企業・団体のお客様にお使いいただいている」と胸を張る。

 3階層システムと比較した場合のHCIの強みは、総保有コスト(TCO)が低く、投資対効果(ROI)が高いことにある。コンピュート能力やストレージ容量をいつでも自由自在に拡張できるため、数年先を見越した過大投資をしなくても済むからだ。

 また、パブリッククラウドの利用料金には、運用管理のコストが含まれるので割高になりがちであるのに対し、簡素化された運用管理を社内で行うHCIでは、費用をぎりぎりまで圧縮することが可能。「一般には全体の75~80%といわれる“予測可能なワークロード”をHCIで処理し、残り20~25%の“予測しにくいワークロード”をパブリッククラウドに回すのがいいだろう」と町田社長は説明する。

複数クラウドを統合的に管理

 ニュータニックスのHCIは、HCIとしての全ての機能をソフトウェアによって実現している点に特徴がある。アーキテクチャとしては、ベースとなる物理インフラストラクチャ(サーバーやIaaS)に限定はない。その上で、マルチハイパーバイザー、分散ストレージファブリック、自動化とオーケストレーションの3種類の基本機能を稼働させる構成だ(図1)。
 

 このマルチハイパーバイザーとは、複数の方式に対応できるハイバーバイザー(サーバー仮想化ソフトウェア)のこと。ニュータニックスでは、自社の「Nutanix Acropolis Hypervisor(AHV)」のほか、「VMware ESXi」「Microsoft Hyper-V」「Citrix XenServer」の各ハイパーバイザーを同時に稼働させることができる。

 また、分散ストレージファブリックは、拡張性が高いソフトウェア定義ストレージ(SDS)を実現するためのソフトウェア。「一般ファイル用のファイルシステムとしてだけでなく、データベースのブロックアクセスにも使える」(町田社長)ので、使用するアプリケーションを選ばない。

 このような構成になっているニュータニックスのHCIは、オンプレミスのサーバーやプライベートクラウドとして活用できる。「パブリッククラウド並みの拡張自在なシステム環境を社内に設置できる」(町田社長)ことが、ユーザーにとって最大のメリットだ。

 さらに一歩進んで、最近ではニュータニックスのHCIを他のサーバーやクラウドと連携させることで、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドを構築する企業・団体が増えている。ただ、この段階に到達すると情報システムとしての複雑さが増した結果として、ITコストがかえって膨張してしまうこともある。サーバーとクラウド、クラウドとクラウド間のデータの移動はそれだけ難しくなるし、運用管理にも高度で複雑な方法が求められるようになるからだ。

 そこで同社が打ち出したのが、「Enterprise Cloud OS」というコンセプトである(図2)。「Enterprise Cloud OSは、企業・団体が利用する情報システムの全体を支える単一の基盤として、全てのクラウドを一つのOSとして、1クリックで管理できる」と町田社長。例えば、パブリッククラウド、プライベートクラウド、リモートオフィス/支店・営業所向けの分散クラウドを統合的かつスケーラブルに管理できるようになるのである。
 

 このコンセプトを端的に表しているのが、「選択の自由(freedom of choice)」というキーワード。「お客様に選択肢を提供することが、ベンダーニュートラルを標榜する当社の務めだ。特定のインフラに依存することがないように、あらゆるワークロード、クラウド、プラットフォーム、ハイパーバイザー、プロセッサへの対応を目指している」と町田社長は説明する。

 例えば、プロセッサでは、Intelの「x86」に加えて、IBMの「Powerチップ」にもネイティブで対応。パブリッククラウドについては「Amazon Web Services(AWS)」「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform(GCP)」をサポートしている。また、ハイパーバイザーは前述した4種類を利用でき、とくにニュータニックスが追加コスト無しで提供しているAHVについては、「国内全体のNutanixユーザーのうち、およそ3分の1がAHVを使っている」(町田社長)。名古屋以西では、AHVの採用率は50%を超えているという。

運用管理を支援するソフトウェア

 Enterprise Cloud OSでは、マルチクラウド/ハイブリッドクラウドの運用管理を効率化するためのソフトウェアの提供にも力を注いでいる。

 その一つが、統合運用管理ツールの「Nutanix Prism」だ。「スマートフォンと同様シンプルで直感的な使い方ができ、経験が浅い人に作業を任せても問題がない」と町田社長は語る。オペレーションを1クリックで実行できるので、運用管理の手間と工数を減らす効果も高い。

 また、業務アプリケーションをオンプレミスと複数のクラウドにまたがって配備・運用する際には、アプリケーションライフサイクル管理(ALM)と呼ばれる運用管理ツールが威力を発揮する。現場の求めに応じてアプリケーションを企業内部で開発したり、外部マーケットプレイスから調達したりして適切な場所(オンプレミス/クラウド)に配備し、使用頻度やデータ量などの状況変化に応じて配備先の場所を変更する――。このような作業をシステム管理者が1クリックで行えるのが、クラウド対応のALM「Nutanix Calm」だ。

 ニュータニックスが提供するツールは、今後も、年2回のメジャーアップデートやニュータニックス主催の大規模イベントの際に継続的に追加・増強していく予定だ。例えば、18年5月に米ニューオーリンズで開催されたイベント「.NEXT Conference 2018」では、マルチクラウドのコスト最適化とコンプライアンスを担当するガバナンス管理ツール「Nutanix Beam」が登場。データベース管理サービス「Nutanix Era」や、ネットワーク管理ツール「Nutanix Flow」にも機能拡張が施された(図3)。
 

 機能面では、セキュリティ対策の強化も重要なテーマとなっている。「AHVは従来、米国防総省が策定したセキュリティ基準をクリアした状態で出荷してきた」と町田社長。Nutanix Flowでは、ネットワークレイヤー間のNorth-South通信だけでなく、ネットワークレイヤー内のEast-West通信についても1クリックでセキュリティ設定ができるようになっている。

9社のパートナーと協業

 こうした特徴をもつEnterprise Cloud OSは現在、アプライアンスの「Nutanix NX」シリーズ、OEM製のアプライアンス(Dell EMC、レノボ、IBM)、ソフトウェアライセンス販売の3形態で提供されている。

 このうち、ニュータニックスが現在力を入れ始めているのは、パートナー企業によるソフトウェアライセンスの販売だ。具体的には、ニュータニックスが公開しているハードウェア互換性リスト(HCL)を参考に、エンドユーザーやSIerがサーバー、ストレージ、ネットワークを自ら調達し、そのハードウェア環境の上でEnterprise Cloud OSを動作させるという使い方である。すでに、シスコシステムズの「Cisco UCS」と、ヒューレット・パッカード・エンタープライズの「HP ProLiant DLシリーズ」の2製品については、ニュータニックス自らがハードウェアの互換性を検証済み。その他の製品についても、ベンダーや同社のパートナー企業が検証結果を発表していく見通しだ。

 国内でEnterprise Cloud OSのサブ・ライセンス権を取得したのは、伊藤忠テクノソリューションズ、NECフィールディング、兼松エレクトロニクス、ソフトバンク コマース&サービス、TIS、東京エレクトロンデバイス、日商エレクトロニクス、ネットワールド、日立システムズの9社(18年2月27日発表)。あわせて互換性検証と確認のための国内向けパートナープログラム「Nutanix Elevate Program」も開始し、共同検証の場となるソフトウェアテクノロジーセンターを東京・大手町のニュータニックス・ジャパン本社内に開設した。

 また、Enterprise Cloud OSの普及を目指すマーケティング活動として、AHV Deep DiveセミナーやAHV Bootcamp(ハンズオンセミナー)を開催中。.NEXT Conference 2018で発表された内容についても、9月から開催する同社イベント(東京・大阪・名古屋・福岡)で、そのエッセンスが紹介される予定だ。

 このほか、Nutanixのお試し版として、オンライン版の「Test Drive」(2時間まで)とダウンロード版の「Community Edition」もニュータニックス・ジャパンのウェブサイトで公開されている。製品の導入を考えている企業・団体は、機能や使い勝手を事前に確かめるために活用するとよいだろう。


※出典:ガートナー社「Magic Quadrant for Hyperconverged Infrastructure」、John McArthur et al, 2018年2月6日
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外部リンク

ニュータニックス=https://www.nutanix.jp/