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日本AMD 第2世代サーバーCPU 「AMD EPYC 7002 Series」の魅力 仮想化パフォーマンスを向上しTCO削減にも大きな効果

2019/12/26 09:00

週刊BCN 2019年12月23日vol.1806掲載

 AMDのサーバー向けCPU「第2世代 AMD EPYC 7002シリーズ」が2019年8月の発表以来、大きな注目を集めている。CPU自体の性能はもちろん、コア密度、I/O性能、価格性能比など、多くのメリットが高く評価されているためだ。特に、仮想化環境については、コア密度の高さがパフォーマンス向上とコストの双方にメリットとなり、VMwareのようなソケットライセンスの場合、1ソケットサーバーによるソフトウェアライランスを含めたTCOの削減が可能になる。

最大64コア/128スレッドの
第2世代サーバーCPU

 「AMDは元々、テクノロジーリーダーであり、64ビットx86プロセッサーをはじめ、デュアル/クアッドコアプロセッサー、CPUとGPUの1チップ化など、多くの世界初の技術を製品化してきた。今回の第2世代のEPYCにも、最新技術がふんだんに投入されている」と林田裕代表取締役はアピールする。
 
林田 裕代表取締役

 「AMD EPYC 7002シリーズ」は、コード名「Rome(ローマ)」で開発されてきたサーバー向けCPU。2017年にリリースした第1世代のEPYC 7001「開発コード名:Naples(ナポリ)」と比べ、パッケージ内部のアーキテクチャーが大きく改良されている。ポイントとなるのは、コア数倍増による並列処理性能の向上、高速なインメモリ性能、データアクセスを高速化する強大なI/O性能だ。

 第1世代のEPYCが製造プロセス14nmを採用していたのに対して、サーバー用で世界初となる7nmの「Zen 2」を採用。チップレットとしてモジュラー化された8個のCPUダイにより、1ソケット最大64コア/128スレッドを実現した。また、1サイクル当たりの命令数の向上や、20%高速化したメモリ、PCIe 4.0サポートによるI/Oの高速化などにより、総合的に大幅なパフォーマンス向上を実現している。

 実際、64コアのEPYC 7742を搭載した1ソケットのPowerEdgeサーバーが、32コア搭載の前世代モデルより2.8倍高い仮想化DB性能を出しているベンチマークが公開されている。
 

 「1ソケットの第2世代EPYCは、2ソケットのインテル第2世代Xeonの最上位製品と同等のパフォーマンスを発揮できる。また、プロセッサー当たりのコストでも安価だ」と林田代表取締役は説明する。

 基本性能が大幅に向上したことで、適応できるワークロードの幅も拡大した。

 EPYC 7002シリーズは、製品発表時点ですでに80のベンチマークで世界記録を達成し、現在(11月時点)では140を大きく超える記録を更新しているという。しかも、HPC、エンタープライズ、ビッグデータ、クラウド、仮想化といったさまざまな分野で、ユーザー企業などによって実施されたベンチマークであることから、広い用途での利用が見込まれている。

仮想化環境において
パフォーマンス向上とTCO削減

 特に、仮想化環境におけるメリットは大きい。1ソケットで2ソケット分の性能や機能を実現していることで、TCO削減にも大きなメリットをもたらす。

 「例えば、VMwareの場合は課金単位がCPUソケット単位になっているため、2ソケットの性能や機能を1ソケットで実現できることによってコスト面に大きなメリットとなる。ほかにも、エンタープライズ系のソフトウェアの課金単位はソケット数に依るものが多く存在しているため、ライセンスコストを含めたTCOの削減が可能だ」(林田代表取締役)と強調する。

 EPYC 7002シリーズはセキュリティも強化されており、CPUには「AMD Secure Processor(ASP)」を内蔵する。ASPは、暗号化鍵の管理機能を備え、メモリの暗号化と仮想マシンの暗号化が可能となるため、仮想マシン環境全体の安全性を高めることができる。

 EPYC 7002シリーズを採用するサーバー製品については、Dell EMCの「PowerEdge」やHPEの「ProLiant」、Ciscoの「UCS」、 Lenovoの「ThinkSystem」、GIGABYTE Technology、 TYAN、Supermicroなどのほか、スーパーコンピューターのCray、ホワイトボックスベンダーによる採用も続いているという。国内初となる富士通からもEPYC 7002シリーズを採用するサーバー製品が発表された。

 また、国立大学を中心として製品の検証が進んでおり、ハイパフォーマンスを求めるユーザーの期待の大きさをうかがわせている。

 販売戦略については、「サーバーベンダーの方々と共に、まずは『EPYC』の認知度を拡大していきたい」との方針を示す。その一環として、ディストリビューターの販売サイトへの広告出稿なども行っている。

 最後に、林田代表取締役は、「AMDはサーバー市場にEPYCブランドを投入し、確実にスケジュールをコミットして、Naplesに続きRomaをローンチした。今後についても、Zen 3ベースの次世代EPYC『Milan(ミラノ)』について、すでに設計が終了している。さらに、Zen 4となる『Genoa(ジェノバ)』が設計段階に入っており、長期的にもしっかりとコミットメントしている。SIerの方々にとっても(インテル系サーバーとの)差別化が明確にできるので、安心してユーザーに提案をしてほしい」と訴える。
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外部リンク

日本AMD=https://www.amd.com/ja