初日の基調講演に、これまで複数の日本のデジタルプラットフォーム立ち上げに携わってきたIT批評家の尾原和啓氏が登場。「変わる日本のIT環境、いま企業が取り組むべきDXとは ~すぐに始められるデジタル変革と、ITベンダーに求められること~」とのテーマでITベンダーが進むべき道筋を示唆した。

IT批評家 尾原和啓氏

 尾原氏は、国内のDXやデジタルビジネスが世界に後れをとる中で「実は日本のITベンダーは、これから始まるDX2回戦に関しては有利なポジションにある。今後はイノベーションよりも、日本のITベンダーが持っている力の方が強みになる」との見方を示す。

 まずDXには、「業務DX」「事業DX」「価値DX」と3種類あるという。価値DXは単なる技術論やデジタライゼーションではなく、デジタルやイノベーションがつながり、その結果「顧客に提供できる価値が全く違ったものに変質化していく」と尾原氏は説明する。

 例えば、DXが加速する中で交通機関を複合的に利用するMaaSが進んだ世界で、利用者が便利になるとともにドライバーの人生も変わっていく。テクノロジーの進化でドライバーの運転状況が可視化されて優秀であることが証明されると、低利息で融資を受けられハイクラスの車に買い替えることができて収益性が高まるというのが価値DXの具体例である。
 DX2回戦については「今までのDXは、ネットの中をネットでつながって変革していく空中戦だったが、今後はサイバー空間をリアルが上書きするように進む地上戦になる」と説明。1回戦勝者のGAFAが創出している価値はGDPで見ると7%に過ぎず、リアルの中にアセットがある状況ではリアルが整備されている日本にアドバンテージがあるという。

 企業はまず業務DXで自動化し、事業DXで事業を拡張し、最終的に価値DXとしてユーザーにどう寄り添うのかを決めていく。価値DXの実現のために、サービスの価値が製品から体験へと移動する中で顧客の体験データを吸い上げ、AIに分析させてサービスに反映させ、強みをループさせる「Harvesting Loop」の仕組みを取り入れて競争優位性を維持。「勝ちを続けていく構造を企業に取り入れることが重要になる」という。

 「DXの2回戦では、ITベンダーが自らイノベーションを考える必要はない。リアルの不便の戦いの中で徹底的な業務DXや事業DXによって他者から選ばれる存在になっていく」。これがITベンダーの勝ち方である。