日本情報通信(NI+C)は、クラウドコンピューティングやEDI(電子データ交換)、BI(ビジネスインテリジェンス)を重点事業に位置づける。ユーザー企業のコスト削減ニーズが強まるなか、ITを効率的に活用できるクラウドやSaaS、アウトソーシングなどのサービスビジネスは伸びる余地が大きい。業務の効率化を促すEDIや、経営の透明性を高めるBIも引き合いが強い。厳しい経済環境で勝ち残るためのITシステムを積極的に提案。ユーザーニーズを掴み、ビジネスを伸ばす方針だ。
安藤章司●取材/文 ミワタダシ●写真
サービス・SI事業を拡大
──クラウドコンピューティングを重点事業の一つに掲げておられます。そう簡単に実現できるものなのでしょうか。
野村 やれる要素は十分にある。当社はNTTと日本IBMの合弁会社で、NTTはブロードバンドネットワークの技術を持ち、IBMは世界に先駆けてオンデマンドコンピューティングを推進してきた会社です。わたし自身、NTTコミュニケーションズでSaaSやクラウドビジネスを推進してきた経験上、手応えは感じている。技術的、ビジネス的に十分なバックグラウンドがあります。
──御社はハードウェアやミドルウェアなど基盤製品の販売に強い印象があります。クラウドとなるとシステム構築のノウハウがより求められそうです。
野村 直近の構成比を見ると、ハードウェアやOS、ミドルウェアなどの製品販売が売上高の約65%を占めています。日本IBMの製品をビジネスパートナーに卸販売する付加価値ディストリビューション(VAD)事業が含まれていますので、SIerとしては製品販売比率が比較的高い。日本IBMの商流変更の追い風もあり、VAD事業は好調に売り上げを伸ばしています。
技術的、ビジネス的なバックグラウンドがあると言ったのは、このあたりに深く関係します。IBMのハードウェアとソフトウェア製品を最も広範囲に扱え、IBMのすべてのサーバー製品に対応可能な高いシステム基盤技術を備えている。かつ、VADを通じて、全国約200社のビジネスパートナーの販売チャネルを持つ──。こうしたポジションを考えると、さまざまな可能性が見いだせます。
──具体的には何でしょうか。
野村 まず、基盤系に強いという点から、ユーザー企業の情報システムをクラウド化するSI案件の獲得に力を入れます。Googleやセールスフォース・ドットコムのように、非常に多くの企業向けに汎用的なサービスを今すぐやるというのは正直難しい。しかし、例えば、ある企業グループ内で業務システムをクラウドやSaaS方式で利用するというケースは十分対応できます。グループ会社が同じような業務システムを個別に持つのは非効率です。ならば、システムを仮想化し、一か所に集めて皆で共有する。管理や運用にかかるコストの大幅な削減につながりますので、ユーザー企業にとってメリットは多い。
あるいは、当社がクラウドの基盤を用意し、ここにさまざまなソフト開発ベンダーの業務アプリケーションを乗せてサービス化する。このサービスを、例えば、VADパートナーが販売するモデルも考えられます。VADではIBMのミドルウェア製品だけでなく、このミドルウェアに対応した業務アプリケーションも卸販売しています。この製品販売のモデルに、クラウド型のサービス販売を加えればビジネスの可能性は大いに広がる。IBMプラットフォーム向けに業務アプリケーションを開発しているISVの方々とも積極的に組んでいきます。
──クラウドやSaaSを切り口として、SI事業を拡大するという考えですか。
野村 現状では、売上高構成比で製品販売を除いた約35%がSI・サービスになります。製品販売はトップラインを伸ばすのに効果的ですが、一方、収益力の向上を考えるとSI・サービスの拡大は非常に重要な課題です。これを向こう3年で製品販売とSI・サービスの比率を半々までにもっていこうと考えており、その原動力の一つがSaaS・クラウド型のビジネスだと捉えています。
NTTコミュニケーションズでは、ネットワークをベースにSIやサービスを展開してきましたが、NI+Cではサーバーをベースにネットワークやサービスを構築しています。立ち位置は少し違いますが、目指す方向は同じ。サービス事業のインフラとなる通信ネットワークやデータセンター(DC)の領域など、NTTグループとの連携を推し進めることで、相乗効果が見込めます。
向こう3年の間に製品販売とSI・サービスの比率を半々にまでもっていこうと考えており、その原動力の一つがSaaS・クラウド型のビジネスだと捉えています。
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