IT資産管理ツールのクオリティソフトは、2011年12月、トップの交替を行った。創業社長が守り続けたトップの椅子。新たに座ったのは、情報セキュリティ業界で間接販売ビジネスに長く携わってきた久保統義氏である。絶好調のクラウド事業では、ユーザー層を広げてさらに伸ばし、オンプレミス型システム向けソフトはライセンス管理機能を武器に拡販。今年度(2012年9月期)全体の売り上げ目標を前年度比30%増に設定するなど、強気に打って出る。
クラウド好調の波に乗り、3万社獲得へ
――創業社長からバトンを受けてのトップ就任。重圧があると思いますが、クオリティソフトをどのように変えていきますか。
久保 質問の答えになっていないことを話していいですか(笑)。クオリティソフトの社長は私ですが、創業者の浦(聖治氏)は、親会社であるクオリティの社長を引き続き務めますし、私が社長に就任した後もクオリティソフトのCEOであり、代表取締役会長です。私は社長兼COOの立場。企業の体制と経営手法ががらりと変わることはありません。
――しつこいようですが、そのことを前提にしたうえで、変えることは何ですか。
久保 スピードですね。クオリティグループには、クオリティソフト以外にも複数の企業があります。ソフト開発・販売事業とは異なる飲食店の経営といった業態の企業もあれば、和歌山県のほかに中国、韓国、米国などの海外にも子会社があり、地域もさまざま。前社長はこれまで、それらをほとんど一人で統括していました。
今回、私がクオリティソフトという一つの子会社の社長に就いたことで、これまで以上に権限をもって、迅速な判断ができるようになりました。入札案件などは、数時間、場合によっては数十分で大きな経営判断をしなければならないケースもあります。そんな時の対応力は格段に高まりました。
――クオリティに籍を移しておよそ2年。この間に久保さんが手がけてこられたことを教えてください。とくに、IT資産管理・セキュリティ対策機能のクラウド「ISM CloudOne」は、ユーザー企業・団体数が1万7000社に到達し、この2年で広がった印象があります。
久保 私が何か新しいことをやったわけではありません。伸びる要素はすでに私が入社する前からありました。
――その要素とは何でしょうか。
久保 ソフトメーカーにとって、クラウドのビジネスとオンプレミス型システムの事業は、別の戦略が必要です。クラウドを販売パートナーを通じて拡販するためには、パートナーがソフトメーカーのクラウドに独自の価値を加えられるようにすることが大切です。多くのSIerは、当然ですが、売り上げを伸ばすことを常に考えています。その点、オンプレミス型システム向けのソリューション販売に比べてクラウドは単価が安いので、SIerの営業担当者にしてみれば、クラウドを売るモチベーションが上がりにくいでしょう。でも、自社(SIer)のサービスや他社のクラウドとセットにした、パートナー独自のクラウドになれば単価が上がり、自社ブランドですから売る気持ちは自ずと高まります。それをクオリティソフトは、私が入社する前から基本戦略に置いていたのです。パートナーが儲かる、売りやすいクラウドを提供しよう、と。
「ISM CloudOne」を売るパートナーは14社ですが、すべてわれわれがOEM提供していると考えてもらっていいです。パートナーがサービス内容もサービス名も、独自に企画して販売しています。それがパートナーに高く評価され、拡販していただけることにつながっている。
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