営業担当者を世界的に大幅増員
──次は、いかに反転攻勢するかですね。
平本 その通りです。現在はタイ工場は全盛期の2倍程度の生産を行っていますし、深センも増強すれば増産できます。生産体制を2倍にしなければ、バックオーダーだけで余分に時間を費やしてしまう。早く生産を立ち上げ、バックオーダーを短期間で処理し、12年度の「攻め」にもっていきます。
──その次の「攻め」は、どんな戦略ですか。
平本 昨年11月には、世界最小設置面積で業界初の「メンテナンス品5年間無償提供」を実現したA3カラーLEDプリンタを発売したのに続いて、今年4月には、販売台数を稼ぎ出す「拡販モデル」となる低価格機のA4カラーLEDプリンタ4機種と複合機2機種を出しました。12年度は、製品ラインアップとしては、非常にいい時期にあたります。生産体制が復活して製品が充実したので「あとは売るしかない」ということです。
──OKIデータの場合、販売は世界展開ですが。
平本 世界のプリンタ市場が収縮するなかで、今度は国内の「COREFIDO」で成功した「5年間無償保証」に近い考え方を海外に展開することを考えています。LEDの信頼性、保守性などを訴求する。初めに申し上げた通り、不景気こそLEDに“追い風”と捉えていますから。
──天災や世界景気に翻弄されましたが、積み上げてきたことを着実に実行するということですね。
平本 12年度の販売台数目標は、前年度比で40%増です。11年度は落ち込んでいますので、大幅増収は当たり前でしょうが、10年度に比べても、20%増になります。洪水の影響がなかったと想定すれば、年率10%の成長ですので、そんなに無理な数値目標ではない。
──この目標数値を実行するための販売体制をどのように敷いていきますか。
平本 基本的に当社のメイン市場は中堅・中小企業(SMB)ですので、ディストリビュータを通じた販売体制をもう一度構築する。過去には、SMBを主力にしながら、それに向けた製品を提供できなかったために、2次店から取り残されたことがあります。そのあたりの立て直しをするために、拡販版の製品を出しました。また、昨年の事態を受けて、12年度は久しぶりに営業・販売に投資をしました。営業にかなりの金額を投資し、南米・北米を含めて世界的にセールス要員を大幅増員します。また、今年10月には、10年ぶりに2次店やソフトウェア会社、システムインテグレータ(SIer)を対象にした4500人規模のイベントを開催します。
・お気に入りのビジネスツール 米ミード社製の「ケンブリッジ」というA6判のノート。米国に勤務していた頃から愛用している。常にスーツのポケットに入れて携行し、「アイデアが浮かんだら、英語で書き込む」。罫線の幅やノートサイズが気に入り、03年頃からメモ用紙として使っているという。1年1冊のペースで使っている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
初対面の前にイメージしていた平本隆夫社長像は、気骨があり、決断力のある人物だった。前社長や前々社長と異なり、堅物で取材に苦労する人と勝手に想像していた。だが、本題に入る前の雑談で一瞬にして事前のイメージはかき消された。
物腰が柔らかく、世間話も面白い。すぐに打ち解ける方だった。昨年のタイの洪水で平本社長は、浸水したタイのプリンタ工場で滞る生産体制を見渡し、即断即決で指示を出した。失敗すれば、同社の根幹を揺るがす。誰しも決断をためらう。そんな危機的状況にあってリーダーシップを発揮し、周囲を説得したと聞く。芯のあるトップとみて間違いない。
ただ、同社が直面している課題は少なくない。生産体制は洪水前の2倍程度に引き上げたが、出荷を待ち続けた顧客を確実に獲得できるか。欧州市場に強い同社が欧州危機を乗り越えられるか。課題は枚挙にいとまがないが、「反転攻勢」の体制は着々と整えられつつあるようだ。(吾)
プロフィール
平本 隆夫
平本 隆夫(ひらもと たかお)
1952年7月、神奈川県生まれ、59歳。75年3月、早稲田大学理工学部機械工学科を卒業後、同年4月にコンピュータ機器販売の日本電子機器に入社。2年後にはソニーに転職し、2006年6月、ソニーファシリティマネジメントの代表取締役社長に就任。沖電気工業(OKI)に移ったのは、07年9月。プリンタやATM(現金自動預け払い機)などの事業で要職に就き、11年4月にOKIデータの取締役副社長、12年1月から代表取締役社長。
会社紹介
OKIデータは、OKI(沖電気工業)グループのプリンタ事業を手がける子会社として1994年10月1日に設立された。独自のLED(発光ダイオード)技術を搭載したカラーLEDプリンタやドットインパクトプリンタを中心に世界約120か国で販売活動を展開。各地域の売上比率は、欧州が最も高く、米国がそれに続く。日本市場の比率は、全体の15%程度。国内ではページプリンタ市場で10%シェアを目指している。