ほとんどの都道府県には、それぞれのIT産業団体が存在する。それらの各地方IT団体をつなげて、地方IT産業の活性化を全国レベルで担っているのが、一般社団法人の全国地域情報産業団体連合会(ANIA)だ。新会長に就いた長谷川亘氏は、教育関連の団体の幹部も務める人材育成のプロ。「今後のIT産業の活性化には教育戦略の見直しが欠かせない」と断言する。「地方の声を中央に届ける」と、高い志でANIAをリードしていく。
地方には地方のIT人材が不可欠
──全国地域情報産業団体連合会(ANIA)は、各都道府県、とくに地方に存在するIT産業団体をつなぐ「ハブ」のような団体です。全国の中小IT企業の実態をよくご存じかと思います。 長谷川 ANIAには、北海道から沖縄まで全国のIT団体が参加していますが、地方といっても、事情は各都道府県によって異なります。経済環境が異なりますし、地方自治体などの公共団体、商工会議所などの経済団体との結びつきの強さも違うので、一概に「地方」で状況をくくってお話しするのは難しい。
ですが、強く言っておきたいのは、「東京一極集中がますます進んでいる」ということ。地方にITの需要がないわけではないし、(IT投資を)新たに創出する、ユーザー企業・団体に提案しなければならない部分もある。それにもかかわらず、仕事が東京に集中する傾向が依然続いています。
──東京に集中しているのは、仕事だけですか。 長谷川 いや、人材もそうです。経済環境が異なれば、求められる人材も違うというのが、私の持論です。例えば、東京の大手IT企業が求める最先端システムには、高い技術力をもつスーパーSEが必要でしょう。でも、地方の八百屋さんが欲するシンプルな機能のシステムをつくるために、そのレベルのSEが必要かといわれれば、そうではないかもしれない。「東京には東京、地方には地方の人材が必要だ」と思っています。
それにもかかわらず、人材育成戦略を描く中央官庁や東京のIT関連団体は、東京のことだけを考えて、スーパースターをつくる政策ばかり手がける。ひと握りのスターを生む政策は大事ですが、それと同じように、地方に多く存在する中堅・中小規模のユーザー企業(SMB)のITリテラシーを上げたり、地方のSMBに向けてビジネス展開するITベンダーのスキルを上げたり、意識を変えたりする施策も大事だと感じています。
[次のページ]