バックアップやデータ復旧ソフトを開発するAOSテクノロジーズグループは、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)の流通を促進する「APIbank(エーピーアイバンク)」を立ち上げる。FinTechを巡って銀行のAPIの公開が進み、AWSをはじめとする大手クラウドベンダーもAPIの開放に積極的だ。APIを使ってAIなどのすぐれた機能を採り入れれば、それだけソフト開発の工数が削減でき、アイデアを早く商用サービスにつなげられる。「APIbank」はAPI取引を活性化することで、ソフト開発のあり方を抜本的に変えていくという。佐々木隆仁社長に話を聞いた。
APIバンクの立ち上げで流通網を構築へ
──「API」の流通を促進させる取り組みを始めておられます。どういった狙いがあるのでしょう。
まず、当社グループは1995年の創業以来、パッケージソフトをつくってきました。データの復元や移行、入れ替え、抹消などのパッケージソフトが主力です。データ復元の「ファイナルデータ」は、BCN AWARD 2018のシステムメンテナンスソフト部門で、9年連続9回目の最優秀賞を受賞しています。他にもデータ移行の「ファイナルパソコンデータ引越し」は、国内累計販売本数1000万本を突破するヒット商品です。個人顧客だけでなく、法人顧客にも幅広くご活用いただいています。
ただ、ソフト開発ベンダーとして、このままパッケージソフトだけをつくり続けていてよいのだろうかと、疑問に思っているのです。つまり、これからのソフト開発はネット上に公開されているAPIを利用することで、もっと短期間に、顧客のニーズに合ったソフト開発が可能になる。
とはいえ、Googleマップのような有名なAPIならともかく、ごく普通のAPIってなかなか普及しないんですね。当社グループでもいくつかAPIを公開していますが、既存のパッケージソフトほどの知名度はない。だったら、自分たちでAPIを流通させる仕組みをつくろうと考えたわけです。その名もずばり「APIbank」です。
──1980年代にパッケージソフトの流通事業を始めたソフトバンクみたいですね。
私たちパッケージソフトベンダーは、全国津々浦々のパソコン販売店に自社のパッケージソフトを届けてくれる流通の大切さを身にしみてわかっています。今のAPIは流通網の仕組みが整備されておらず、ソフトバンクが登場する以前のパソコン用パッケージソフトのような状態です。APIbankでは、ソフト開発ベンダーやユーザー企業がもつAPIをできる限り多く登録してもらい、APIを使いたいと考えているソフト開発者に利用してもらう取引所として機能させていきます。
──APIを活用したソフト開発とは、具体的にはどのようなものでしょうか。
例えば、新しく改正された銀行法では銀行にAPIを開放するよう促しています。これはFinTech産業を育成するためで、軌道に乗れば銀行のAPIを使ったさまざまな金融サービスが登場する見込みです。xTechと呼ばれる既存産業とITを連携させて新しいサービスを創出する分野は、API連携が欠かせません。これらAPIでつながった経済圏はAPIエコノミーと呼ばれており、米IBMの試算ですと世界のAPIエコノミーは、今年2兆2000億ドル(約235兆円)規模に拡大するそうです。
バックアップのデータを死蔵させない
──AOSテクノロジーズのソフト開発でも、すでに外部のAPIは活用されているのでしょうか。
当社グループの主力サービスの一つであるクラウドバックアップ「AOSBOX」で、バックアップ先のAWS(Amazon Web Services)のAPIの活用を進めています。AOSBOXのユーザー数は30万人を超えており、AWSでのバックアップ容量は4.5ペタバイト規模。AOSBOXは一部無料で使えますが、パソコンやスマートデバイスのフルバックアップが可能な有料サービスが全体の8割余りを占めているのが特徴です。一つのサービスでこれだけの容量を使っているのは、日本のAWSのなかでも上位に入ると聞いています。
AOSBOXのサービスラインアップの一つに、アマゾンのAPIから引っ張ってきたAI(人工知能)を使い、高性能な検索をしたり、多言語対応のOCR機能で画像に書かれた文字をテキストに変換。画像や動画を認識して、例えば飛行機が写ってる映像があったら、その動画ファイルに「飛行機」のタグをつけて検索を容易にすることなどを実現しています。これらの機能を自前で開発していてはコストがかかるし、時間もかかってしまう。顧客のニーズに合った機能をすばやく実装できるのがAPIの最大の魅力です。
──バックアップは万が一のためにするもので、平時はただデータを死蔵していることが多い。ならば、そのデータをAPIを駆使して活用してしまおうという発想ですね。本番データを加工するわけではないので、心理的な抵抗も少ない。
そうです。クラウドバックアップを巡っては今年2月、医療システム開発に強いファインデックスと提携して、クラウドバックアップサービスを始めています。ここでも、ただデータを保存するだけでなく、医療分野の専門技術をもつ会社とAPIで連携して、画像やドキュメントの分析といったAI活用を実現できればと考えています。
当社は30万人余りのデータを安全に保管する技術と実績があります。セキュリティをしっかり担保しつつ、同時にアイデア次第でいろいろなデータを活用したサービスが、APIを使えば安く、速く開発することが可能になるのです。企業向けでも、個人向けでも、ビジネスの領域は問いません。
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