KeyPerson

海外経験を生かしビジネスモデルを柔軟に変える

セイコーエプソン 代表取締役社長

吉田潤吉

取材・文/安藤章司 撮影/大星直輝

2025/05/05 09:00

吉田潤吉

週刊BCN 2025年05月05日vol.2058掲載

 セイコーエプソンのトップに4月1日付で就任した吉田潤吉社長は、米国とシンガポールに計12年にわたって駐在し、海外ビジネスの知見を蓄積してきた人物だ。シンガポール駐在時に大容量インクの将来性にいち早く気づき、帰国してすぐ「エコタンク」搭載プリンターの開発に参画して製品化に尽力。世界販売台数1億台を突破するヒット商品につなげた。今は複合機や家庭用プリンターをサブスクリプション方式で利用できるサービスの普及に力を入れる。外部環境の変化に素早く対応し、ビジネスモデルを柔軟に変えて成長を目指す。
(取材/安藤章司  写真/大星直輝)

ASEANで大容量インク需要を知る

――今般の米国の通商政策の変更は、グローバル市場で事業を展開するエプソングループにとってどのような影響がありますか。アジア地域は対米黒字の国が多いこともあって高い関税がかかる可能性があると懸念されています。

 トランプ政権による関税の変更については、まだ流動的な面が多く冷静に対応しなければなりません。どれほどの影響が出るのか未知数ではあるものの、全世界のサプライチェーンに影響が及ぶのは間違いなく、当社が持つグローバルネットワークを最大限活用して、リスクを最小限に抑えられるよう努めます。外部環境が激変するのはグローバルビジネスにつきものですし、環境に適応した企業が勝ち残ってきた歴史を踏まえれば、あまり悲観的にならず、かといって楽観的にもならず対応していきます。

――吉田社長は海外勤務が長く、海外の事業環境の変化への対応では経験豊富だとお聞きします。

 米国とシンガポールに都合12年駐在していました。最初の駐在は1994年からの米ロサンゼルスで、ビジネスパーソンとしてはまだ駆け出しの30歳のときでした。2回目の駐在は2005年からのシンガポールで、ASEANとインド方面のビジネスに従事しました。

――北米ではどんなビジネスを担当されたのですか。

 デジカメとプロジェクター、スキャナーの3製品を北米市場で立ち上げる仕事に携わりました。90年代はインターネット黎明期で、各家庭にPCが本格的に普及し始めたのに伴い、PCとつなげて使うデジカメやプロジェクター、スキャナーの市場が急速に立ち上がり始めた時代です。印象に残っているのはプロジェクターで、北米で認知度ゼロの状態から数百億円規模に一気に拡大できたことを今でもよく覚えています。

 デジカメはカメラ付き携帯電話やスマートフォンの登場で市場が縮小してしまいましたが、スキャナーについてはフラットベッド型はプリンターと統合して複合機へと進化したり、文書の高速読み取りに特化したドキュメントスキャナーとして発展したりして、今につながっています。

――シンガポールでの駐在期間はどのような仕事をされましたか。

 駐在先はシンガポールでしたが、担当地域としてはASEAN全域とインドを中心とした南アジア地域を受け持っていました。このとき家庭用プリンターの交換インクについて、純正品ではないサードパーティー製のインクが多く使われている実態を知りました。規格や品質が異なる非純正品の使用は、インクヘッドの目詰まりなど不具合の原因になるため、メーカーとしては推奨できません。そうしたこともあって、シンガポールから帰国してすぐに大容量のインクを搭載できる「エコタンク」のプロジェクトに参画しました。
この記事の続き >>
  • エコタンク販売は累計1億台を突破
  • プリンターのサブスク利用を推進

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外部リンク

セイコーエプソン=http://www.epson.jp/